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―夜更けの廃屋―
……のう、ンガムラさん。
ネギヤさん、それ、ほんまに……。
ンガムラさん?
聞こえとらんのか?
[ンガムラに声>>1をかけられて]
ん、おお。よう知っとるよ。
姉ちゃんとは、なんせ生まれたときからのつきあいじゃ。何度殴られたやらわからん。
……?
何言うとるんじゃ、ンガムラさん。
ワシ別に、どこにも行っとらんぞ。
ンガムラさん、何じゃその歌……
[名を連呼しながら歩き回る姿>>7に、自分の額を手で押さえ]
……?
な、これ、
[その手を離し、じっと見つめる]
手、透けとる……?
ンガムラさん、ンガムラさん!
ワシ、ここにおる!ここに……!
なあ、そうじゃろ!?
ヌイ!
[差し出された手>>14を掴もうとする。つい先ほど触れた筈の手指が、するりと通り抜けた]
「仏さん」……?
……っひ、
[喉の奥から、叫びにすらならない*軋んだ音*]
……あれ。
ここ、どこだろ……おかしいな、
山にいたはず……だよね?
夢でも見てるのかなあ……お兄ちゃんを探さないといけないのに。なのに。
[突然変わった寂れた光景はどこかの室内だろうか。
辺りを見回すとこの部屋には人影はないようで]
なんだろうここ……。
だれか、いませんかー?ネギヤお兄ちゃんー?
[部屋の外に出てふらふらと*彷徨う*]
……っは、ふ。
[ようやく声を取り戻し、顔の周りを飛ぶ蜂>>25を視線で追う]
こいつには、ワシが見えよるんじゃな。
顔にぶつからんように、飛びよる。
ぶつかっても、通り抜けるんじゃろうが……。
[ヌイの言葉に、ゆっくりと首を振り]
……わけわからん。
心配すんなちゅうても、無理じゃ。
ワシ、死んだのとは違うんか?
けど、
こうなったんが姉ちゃんでのうて、良かった。
[ぽつりと呟く]
ヌイ。
ほんまに心配要らんのなら、うちにそう伝えてくれんか。
でないと、姉ちゃんがどこ探しに行きよるか、危なくてしゃあない。
それから、
その辺にワシの持ってきた袋、落ちとるじゃろ。
母ちゃんから預かってきた、ンガムラさんとヌイにお礼じゃ。
親戚から送ってきた、林檎。
重いが、適当に分けて食ってくれや。
それから……
細かいことじゃが、セイジは。
嫌な事が「起こる」でのうて、「起こってる」て言うとった。
[先ほど答えそこねた>>2:110へ返す]
今になったら、同じことじゃの。
[乾いた*声*]
―廃屋―
おお、キクコ、
[知人の声>>8のする方向へ、声を掛けようとしてやめる]
そうか、聞こえんのじゃな。
[ぽつり呟いて、ヌイに連れられてゆく姿>>33を見送った。ヌイが口にするアンの名に、ぴくりと肩を震わせて]
アン……。
[カウンターの裏。先ほどまでネギヤの体があった場所を、みつめる]
[林檎の袋を、ヌイがンガムラへ渡してくれる>>43のへ頭を下げ]
ありがとうな、ヌイ。
ンガムラさんも。姉ちゃん連れて帰ってくれたじゃろ。
羽織も貸してくれたて、聞いた。
親切にしてもろうたのに、姉ちゃんがまた殴って、すまんのう。
……今も。
そうやって、ワシのこと探してくれとるんじゃな。
心配かけて、すまん。
[林檎を囓りながら階段を上るンガムラへ、聞こえない言葉をかけた]
じゃが、ンガムラさんには悪いが……ワシがここにおっても、どうもならん。
ンガムラさんには、ワシのこと見えんしのう。
…………。
うち、どうなっとるじゃろ。
姉ちゃんが、ヌイのことまで殴っとらにゃええが。
外、出られるんじゃろか、ワシ。
[試しに壁際へ歩み寄り、手を伸ばす。肘から先が、壁の中へ消えた]
うわ。気色悪いのう。これ、全部、通れるっちゅうことじゃよな。
[目をつぶって、壁を通り抜ける]
……地面を蹴れんのに、歩けとるし。わけわからん。
[振り返って、外から廃屋を見上げる。ベランダに立つンガムラ>>38が見えた]
誰かー!いませんかー?
[廊下を彷徨う中で、どこからか聞こえる軽トラックのエンジン音。]
音…?誰かいるの……?
[ベランダへ出て外を見るが、軽トラックは走り去った後で]
……なんだったんだろ。
それにしても、ここ……
潰れちゃったお店のあたりだよね……おかしいなぁ。裏山にいたはずなのに、どうしてこんなところにいるんだろ私。
[この不可思議な中でなんとなく蘇る現実感。いつかの「信じろ」と言ったセイジの言葉がふと頭をよぎる。無意識に安堵の息をつくと]
ンガムラさんもいたんですね。ンガムラさんも蛍みたいだと思う?あの外の明かり。なんだか、とっても不思議な感じがするよね。ンガムラさんはどうしてここに?あ、お兄ちゃんを探しにきたとか……
[しかし、反応はなく。くるりと背を向けて階段を下っていくンガムラに>>40]
ちょっと……ンガムラさん、話聞いてるの?
ねえ、無視はひどいよ…!
[去っていくンガムラに向かって文句を言うが、反応は返ってこない。]
……ひどいなぁ……まるで全く聞こえてないみたいに……。
うーん、でも、ンガムラさんってそんなひどいことする人じゃなかったよね。
やっぱり夢なのかなぁ。
[首をかしげて再びベランダの外を見ると、下の方にンガムラとは違った不思議な感覚を覚える人影。雨の中、目をこらしてよく見ると]
…あれ?ギンスイ?
おーい、ギンスイー!
[ぶんぶんと手を振るが]
……って、夢の中の人には見えなくて聞こえない…のかな?
[ンガムラの反応を思い出し、手を振るのをやめて、その場でギンスイをじっと見つめる。]
……何じゃ?
なんぞ、ザーザー言いよる。
耳ん中に、チューニングの合うとらんラジオがあるみたいな……。
[首を振り、掌の底で耳を叩く]
……お。
合うた。
[名を呼ぶ声>>+14が聞こえ、ベランダをを見上げる]
アン!?おーい、いつの間に来とったんじゃ?
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