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― 診療所 ―
[消毒液を滲みこませた脱脂綿を赤い膝にちょんとあてる。]
わ、… わわ。
沁みちゃったかな?
んー、もう少しで終わるからねー。
――― はいっ、これで大丈夫だ。
お大事に。
[早朝の患者でも時間を問わず診療をする小さな医師の姿を、扉の陰からじっとみつめる更に小さな人影。その手には昨日からずっと縦笛が握られていた。]
おはよー。
上手に吹けるようになった?
[影は首を横にふるふると振ってしょんぼりとした顔を見せた。]
[清治の声に、縦笛を持った影はぴゅっと家の奥へと消えていった。おそらくそのまま食事を済ませて学校へと向かうのだろう。]
はぁーい。
今、行きまーす。
[ぱたぱたと扉の方へと出向けば開いて]
せーじくん、おはよ〜。
いつもありがとねー。
[ほにゃっとした笑みを向けた。]
お水はそこの甕に入れておいてくれるかな。
無くなりそうだったから助かっちゃった。
[診療所と自宅の間に、子供がすっぽりと入る程度の甕が設置してあった。]
うん、デンゴくんは常連さんだね。
[続く言葉に、ふ、と眉を下げて]
――― あははっ
1人いれば2人いても3人いてもかわんないよぉ。
せーじせんせーも、大変だね。
[笑い終えた顔でそう言い]
うちの子、昨日から縦笛お気に入りみたい。
がんばってね。
[軽くプレッシャーをかけるような口調だが
子をあやすように背伸びをして清治の頭へぽふり手を置いた。
そのまま、またほにゃっと笑みを向けてから手を放して、爪先立ちしていた足をすとんと元に戻した。]
でも実際のところ
もう1人くらい子供は産まなきゃね。
1人じゃ少ないって、よく回診にいく先のお爺さんにも言われてるんだ。
[童顔とはいえ自分の年齢は理解している故の思いはあって、今度は少しだけ困った顔をみせた。**]
んーーーーっ、よぉーし。
[玄関先で伸びをしてから診療所の中を通り居間へと向かえば、食べ終えた食器がひと組残されていた。
冷めてしまった朝食を取り終え、ふた組の食器を洗い終えれば診療所の方へと戻る。
そこで壁に掛けられた暦を確認して]
学校は今日じゃないよね。
あ、儀式もう少しだ。
忙しくなるなぁ。
[診療所の椅子に腰を落としてカルテを確認する。]
回診は午後に二件、…と
明日は学校だから―――
…あれ? 患者さんかな?
はぁい、いまぁーーす。
…あれ、ダンちゃん。
どこか具合悪いの?
[彼が娘の父だと知ってはいてもそれを娘に話す事もないまま7年。
その月日もあってか彼と接する態度も何ら昔と変わらずのまま話す。]
ポルテさんが…?
[ダンケの言う症状を簡単にメモを取れば頷きを返して]
うん、うん。
解った、これから行ってみるよ。
……
[ぱちりと一度瞬いてから]
ん、いいよ。
うちの子もダンちゃんとこのお野菜美味しいって言うんだよー。
うちの子は風邪も引かずに元気でやってるよ。
でも、テンゴくんの元気を少し分けてもらってもいいかなー。
[今頃学校で勉強をしているだろう彼女を思いながら、目の前のダンケを見れば ほにゃっと笑う。]
じゃあ、また後でだね。
はーい、またね。
[ダンケを玄関先まで見送ってから一度診療所の中へと戻り
回診用の使い古された皮の鞄に荷物を詰め込み、診療所の入口に
『回診中』
の看板を掲げた。
その足で、小料理屋へと向かう。]
― 小料理屋 ―
ポルテさん、お邪魔しますねー。
[臨時休業と書かれた扉から内へと入れば、奥の部屋で横になるポルテの元へと向かう。
彼女の様子を見ながら、問診もしつつ]
んー、ちょっと熱いですよー。
どこか寒い場所にずっといたりしませんでしたかー?
今は安静にしてて下さいね。
また明日来ます。
[会話はしながらも濡れた布を額の上に置いて定期的に取り換えるように伝え、簡単な処方箋を枕元に置いた。]
それじゃあ、お大事に。
[どこからか漂う匂いが何なのかは解ってはいるけれど、先に回診の仕事を済ませる事にした。]
おじーちゃん、お加減どーですか?
昨日より顔色いーよ。
ん、…やだなぁ。
ちゃんと解ってるよ。
何かあればおじいちゃんを、残さずみんなで戴いてあげるよ。
はい、それじゃあこれ3日分のお薬。
ここに置いていきますねー。
よい… しょっとぉ。
[鞄を手に村の道を歩く。
回診は問題なく終り、空いた腹が音を小さく立てた。]
――――― あ
[遠くから聞こえる笛特有の高い音。]
もう少しだもんなぁ。
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