…医者?
[ライデンとか言う男に言われて、自分の姿を省みる。]
あぁ、そうかも。
どうすればいいかは、知っていた。
[不思議そうに首をかしげて。]
僕は、ユウキらしい。
どうもまだ…眠くてね。ボーっとしてしまうな。
[スプーンを咥えたまま、ぼんやりと椅子にかけている。]
…へぇ。
それで、キミが…カナメ。
そうだね、休息は必要。
[かふ、とあくびをかみ殺し、廊下へ。]
…歌?
[聞こえた声に耳をすませる。
硝子の天蓋から満天の星は見えるだろうか?
さもそれが当然だったかのように迷うことなく、自分の揺り籠である部屋へ*]
[サンダルの足元で音を立てるのは玉砂利。
薄い色の空は、水平線の端から淡い色に染まっていく。
なだらかな丘からは、鴇色に照らされる無数の白亜の碑。
ただ、それを見つめて目を細める。]
…心はただ、あの空の上に。
[ひとつの質素な墓碑に刻まれた言葉。
それをかみ締めるように読み上げると、空を見上げる。]
流れ着く、居場所なのかな?
[空はただ広いだけ。
サンダルを履いた足は、自然と話し声のするほうへ。]
…死?
[聞こえてきた言葉を、ぽつりとつぶやき返す。]
ここは、安らかに眠るための場所?
…目覚める事の無い、眠り…
[空を見上げる]
確かに、快適そうだ。
[…ふ、と小さく微笑む。]
あいいろ、か。
できあがったらみんなでみるといい。
そこにしかないはずの瞬間が取っておけるなんてすてきなことだよ。
[そう言って、屋内へ]
[サンダルの足音は廊下を行き、ひとつのドアの前でとまる。
白い扉。
その向こうに白い部屋。
白いカーテンで仕切られた部屋は、ほのかに薬品の香り。]
…ここは、
[しばらく立ち尽くす。*]
…不思議だ。
[その白い部屋へと入り、室内を歩き回る。]
まるで、先ほど出来たかのように真新しくて、塵一つ落ちてやしないのに、
[棚の薬品、器具の位置。
奥のデスクに転がるペンすらも。]
いつも通りな、気がする。
[体に馴染む事務椅子に座り、両の手をじっと見る。]
なぁ、カナメ…だったか?
ここ…
[救護室だという返答以外、詳しい答えは返らない。]
なんかさ、引っかかってるんだ。
…大事なもの。
[デスクの上に転がったままだったペンを手に取り、胸ポケットへ収めると立ち上がる。]
…そもそもだ。
何故冷凍睡眠に入る必要があったのか。
何故、今目覚めたのか。
目覚めたのは今だから?
他の人たちも、最近目覚めたような様子だったが…
[思考する時に口に出すのは、どうやら癖らしい。
規則正しいサンダルの足音が、廊下に響いていく。]
…おや。
[背後の気配に気づいて振り向き、その長身に軽く手を振る。]
調子はどうかな?僕のクランケ。
腫れは引いた?
[自分の後頭部をさすりながら、ライデンに問う。]