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そう、なら良かった。
[中指で眼鏡のブリッジを押して、少々のずれを直し。温度を確かめる様子を傍観し、それから静かに茶を飲んでいたが、ふいに広間を視線だけ動かして見渡し]
……
[隅にある古めかしい戸棚に目を留める。戸棚の中がぼんやりと光っているのが、男のいる場所からでもわかっただろうか]
[お茶を啜り、湯飲みを置いて、ふと顔を上げる]
……どうかした?
[男の視線が一点に止まったのを見て、その視線の先へと目を向ける。
ぼんやり光る戸棚に気づくと、首を傾げる]
ん、いや……
何だろうと、思って。
ランプか何かが入っているのかな?
[最後は半ば独り言のように。マグカップと、膝上に置いていた本などの束を卓に置くと、その方へ歩いていき]
……?
[幾らか前で、不思議そうな顔をして足を止めた。戸棚の中には火の灯る蝋燭があり]
[男は戸棚に顔を近付けると、眼鏡のレンズの横を片方つまむようにして、観察するように蝋燭を見]
……フユキ。
[その一つに刻まれた文字を、呟くように読み上げる。イシダ、フユキ。――後、何を言うでもなく先程いた所に戻って座り]
ああ。
その戸棚は……
[少女に向かい聞きかけた言葉を、途中で切り]
――フユキ。
私の名前だよ。
お茶を貰った後で、今更だけれど。
[男は、名を*名乗る*]
リウ、ね。
[少女の名を復唱してからまた茶を飲みかけて、ごほり。口元を押さえ、ごほごほとむせながら]
……や、泥棒では、ないよ。
うっかり道に迷って、ね。**
大丈夫?
[むせる姿をわずかに心配の色の混じった瞳で見つめ]
迷子さん、可哀想な人。
……泊まってく?
[小首をかしげて、*フユキに問う*]
あ……れ?
[不思議そうに顔を上げ、身を起こす。
走ってきた方向をじいっと見やる]
誰も追ってこない……。
[自分の発した言葉に首を傾げる]
誰が追ってくるんだろう?
オレ……追われてるんだっけ……?
[膝をぽんぽんとはたいて立ち上がり、
帽子とサングラスを拾い、身に着ける]
頭うったかな。
[帽子の上から軽く頭を叩く]
家だ。誰か居るかな。
[古い日本家屋が目に入る]
で──さ。逃げるって誰からだろうね?
[冗談めかして呟きながらも、
周囲を慎重に確認し、
小走りに日本家屋に*向かった*]
[森の中、荷物を引きずり歩いている]
もうやだ……。
[湿っぽい臭いがする地面に置いた白いトランクに腰を下ろして、うなだれた]
はぁ。
[ため息混じりに顔を上げると、明かりの燈る家屋が目に留まる。
やや逡巡してから、亀の歩みでそこへ*向かい出した*]
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