情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ
[村は、収穫祭に向けた準備でどこかざわめいている。
その華やぎと関係のないように、女は常の如く、
窓辺でこしらえものの布地を手にしていた。
窓辺の女は、窓の外とは無縁のようで…否。
女の手が縫っているのは、収穫祭で用いられる飾り布。
そう、混じれずとも女もまた、収穫祭を待っている。
混じれないのは、ひとえに不自由な足の所為。]
[かたん][ふぁさ り]
[不意に風が吹き抜けた。
村の向こうにある、海からの風であっただろうか。
女の髪に、一瞬潮の香を残して風は過ぎ去っていく。
秋も深まろうというこの時期の風は、ひやりと冷たい。
それでも女は出来るだけ窓を開いていた。
白いカーテンが、ふんわりと宙に踊る。
それを細い指で押さえつけ、窓を少し閉める。
……と、もうひとつの音が扉に鳴った]
[コン] [コン]
なに?
[問いかけてこしらえものをサイドテーブルに置き、
代わりに飴色の杖を手に取る。
ゆっくりと杖を鳴らしながら、片足を引いて歩いた。
随分昔に右の足に怪我を負ってから、女は杖なしでは歩けない]
長老さまの星詠みで。…そう。
来いと、いうのね。
[女は村に生まれて村に育った。
だから抗っても無駄だということを知っている。
静かに睫を伏せて、ほそい息を落とした]
[男の家に、使いがやってきた]
[ひとこと、ふたこと。
会話を交わし――否。
使いの言葉に耳を傾け、頷くばかりで、男から発せられる言葉は無かった]
[何故ならその男は、”声”を失っているのだから――]
分かったわ。少し待って。
[かたりと杖を鳴らし、迎えを待たせて部屋へと戻る。
出掛けるために衣服を少し整え、
大きな帽子を長い髪の上に被ってリボンを結ぶ。
開いていた窓をきちんと閉めて、飾り布に少し視線を落とした]
間に合わないわ…。
[随分出来ていたのが、少し悔しい。
形はもう整って、あとは刺繍を施すばかりというのに。
だからそれも畳んで、荷物の中に一緒に入れた。
ふと思いついて、鏡台の前に置いた小物も仕舞う。
荷物は、そこそこの大きさになった]
[使いに連れられて屋敷に向かう道中、男の手は無意識に自分の喉に伸びていた]
[そこには、古い傷跡があった。病で失った声の残骸が]
[幸い耳は聞こえる為、日常生活に不便は無い。己の意思は、ペンで伝えれば良いだけの話]
…………。
[声にならずに男の口から漏れたのは、果たして嘆きか、それとも――]**
お願い。
[荷物を迎えの男へ差し出す。
杖をつく女が荷物を抱え歩くのは、少しどころでなく困難だ。
予測はされていたのだろう。
迎えに否やはなく、女は彼へ荷物を持たせたまま歩き出した。
女はもうひとつ、それとは別の荷物を持っている]
おかしなものじゃないわ。
[家の扉を閉ざしたあと、ドアノブにそれを括り付ける。
時折訪ねてきては、女のこしらえものを持っていってくれる人。
その人へと、暫く不在にする旨のメッセージを添えて、
様々な布のこしらえものを、扉に置いていく。
その人は、呼ばれていなければいい。
女は風に帽子を押さえて、不安に顔を*曇らせた*]
[お伽噺なんて子供のもの。
伝承なんて古臭いもの。
そんな価値観の中で育ったが故に、]
……へぇ。
[娘はひどく冷めた顔で、その宣告を受け取った**]
─ 作業場 ─
[冬に備えての仕事が増える時期。
忙しそうに仕事の準備をする。
その時作業場に現れたのは使いの男。
使いの男から声がかかれば、
手紙を受け取り中身を確認する。]
まーったく、今忙しい時期だってのに…。
長老の御伽噺に付き合う程暇じゃないっての。
[溜息をつけば困った表情でブツクサと、それでも使いの男に一応の了解を得てから家へ荷物を*取りに帰った*]
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了