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[病院からモミジの部屋に帰り、すぐに一人には出来なくて、結局上がり込むことになって…本棚に自分の本があるのを見つけた時は盛大に照れた。
渡した物語はその本の続編だったから、好都合と言えば好都合だったのだけれど]
あの世界は、ほんとに印象強かったからね。出逢ったみんなもなんか個性的だったし。
[登場人物の中に、雪降る世界で出逢った人達の特徴や名前が混ぜ込まれていることは、モミジもすぐに気付いたろうから、そう言って]
この、幼馴染みのヒロインは、モミジさんだよ。判ると、思うけど。
……まさか自分が主人公のモデルになってる小説とか、書く事になるって思わなかったな。
[ヒーローなんて柄じゃないからね、と、巫山戯てみせたけど多分、内心は、やたらと紅くなった顔で判ってしまったろう。
まあそもそも、教え合ったメールや電話での会話では飽き足らず、嫌がられてなさそうなのをいいことに、モミジの風邪が治った後も毎日のように部屋に尋ねていく(ちなみに家事のお手伝い付きである)行動自体で、色々バレバレだった]
そうだ、三輪さんと箔源くん、町で見かけたよ。今度一緒に会いに行こうか?
[デートの誘いに言い訳めいた理由づけが入るあたり、この時点ではまだ自信が無かったわけだが]
― 後日 ―
宝くじ下さい。
[実際にオトハのいる宝くじ売り場に現れた時には、二人で腕を組めるくらいにはなっていたろうか?]
え?100枚?ちょ、いや、まだ稿料入ってないしっ!それは無理ですから!
せめて50枚に...
[そんなすったもんだもあったりしたわけだけれど、それもまた楽しい思い出の一つに加えられていく]
― 後日 ―
すごく綺麗な曲だね、歌詞もなんか染みるなあ。
[バクの演奏を聴きに行った時は、盛大な拍手の後に、そう心からの感想を伝えた]
今度、ちょっと小説の中に使う歌とか、考えるの手伝ってくれないかな?
こう、旋律に乗せる歌って、俺慣れてなくて、感じ出すのが大変なんだよ。
[二作目を書き上げて、スランプの間も見捨てずにいてくれた編集者に渡したら、速攻で次作の依頼が来たので、今はそのアイディアを練るのに忙しくて、そんなことを願ってみる]
[もう前と同じスランプに嵌まる事はないだろう、と、確信していた]
「たからもの」を見つけたからね。
[嬉しそうに言う時の瞳は、いつも、モミジの笑顔に向けられている*]
[そんな風に話して連絡先も交換した後ライブに誘われた]
へえ、ライブか。うん、是非行かせてもらう。
モミジさんも一緒に行くよね?
[にこりと、隣のモミジに笑いかける]
楽しみにしてるよ。
[きっとリア充全開だなあ、と思われただろうが、現状気にする訳がなかった*]
[バクに招かれたライブは、十二分に楽しんだ。
いきなり叫ばれた随原の名に目を丸くしたりはしたものの、何となく気持ちは解ったので、モミジと二人、顔を見合わせて笑ったりもして]
ライブ成功おめでとう!すごく楽しかったよ。
随原さんにも、いつか君の曲が届くといいねえ。
[ライブ後には楽屋にバクを尋ねて、そんな風に笑顔で伝える。
その時バクに紹介されたバンド仲間の一人が、やたらに舞い上がった表情でサインを求めて来たので驚いたが]
えー?俺の方がみんなのサインを貰っておきたいくらいだよ。あ、そうだ、交換にしよう!
[バンドが有名になったら、すごいプレミアがつきそうじゃないか?と言いながら、結局、その日のプログラムに全員のサインを貰って帰った]
[そして、ネットの動画サイトにアップされた、その夜のライブ映像が、再生回数上位に食い込み始めた頃]
こんにちは。
[モミジと一緒に、そのペットショップに訪れたのは、偶然だった。
どうしても彼女に会わせろ、と煩い姉妹に根負けして、モミジに頼み込んで姉妹達が集まった実家へ顔見せに連れて行ったその帰り、長姉が「超シブくてイケメンのオーナーがいるペットショップがあるのよ!」と力説していた店を見かけて、前々からの計画を実行するのに丁度いいと思い立ったのだ]
小型犬を…て、え?随原さん?
[目を見張って、それからしみじみ納得した]
超シブくてイケメンかあ......確かに。
あ、お久しぶりです。お元気でしたか?
会えて良かった。
[あれ以来、どうしてるか気になってたんです、と屈託無く笑顔を見せる*]
はい、それなりに。
[向けられた随原の視線と、僅かに見えた笑みに頷いて返す]
ええ、小型犬を探しに来たんですけど、ちょっとその前に……随原さんスマホ持ってますよね?
[丁度良かったとばかりに、自分のスマホを取り出して]
是非見てもらいたい動画があって、えーと、もし時間なければ開始五分あたりを見てもらえば。
バクくん…箔源くんのバンドですよ。
[小説に協力してもらう約束のおかげで最近はバクという愛称の方で呼ぶようになった青年の、一番伝えたかったであろうメッセージを届ける為に、許可が得られれば、ライブ映像のURLを転送する]
[そして、改めて小型犬の仔犬のブースへと案内されると、可愛い仔犬たちに目移りしながら、モミジの方へと視線を向けた]
モミジさんと、気の合いそうな仔がいるかな?あ、アパートでペット飼えないとかは、うん、解ってる。とりあえず俺が連れて帰るけど、でも…
[そっと、モミジの手を取って、きゅ、と握る]
でも、二人で育てよう。マールの代わりは居ないけど、きっと新しい幸せを、育てられると思うんだ。
出来れば、ずっと、一生……
[モミジの返事はどうだったか。
丸い目をして二人を見上げる仔犬達のうちの一匹が、やがて優しく抱き上げられたのは確かだけれど**]
[連れて帰った仔犬の飼い方や、何かを、随原に相談するうちに、気付いたことが一つ]
あ、俺、随原さんに仕事のこと言ってませんでしたっけ?
[実はモノカキなんです、と、告げて]
...現実での、お近づきの印に一冊プレゼントしていいですか?邪魔なら古本屋に売ってもらってもいいですから。
[そう告げて、送ったのは『虹の鍵と青空の螺子』
随原自身がモデルのキャラクターがいるとは、彼は気付かなかったかもしれないけれど、ただ、彼のおかげで持って帰ることが出来た「たからもの」が作り上げさせてくれたものを、手渡しておきたかったから**]
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