[三人手を繋いで、歩ける所まで歩いて。
たどり着いたのは、川辺]
……ここ。
この先に……。
[待っているのは。
なんて考えながら、ぐるっと周囲を見回した。*]
あ。
[見回した視線が、手を振る姿>>3で止まった]
……えーと。
ケーキ、持ってきたぞー。
[ここはなんていうところだ? って。
ちょっと考えて。
とりあえず、片手に持ってたケーキ、掲げて見せた]
みんなで食べよーぜ。
ひとりじゃ、さびしーから。
おわっ。
[突進は予想外だった。
取りあえず、落とさないように死守しながら、ぽふぽふいもーとの頭、撫でて]
はいはい、わかったわかった。
パイナップルは、とーさんのお土産だかんなー。
[いつもと同じノリでいう。
理屈じゃなくて、ここにいるのが、俺の家族なんだ、って。
……だって、それでいいじゃない、って。
そんな風に思いながら]
[つないでいたはずの手は、いつの間にかするりとほどけ、3つの足音は2つに。
川辺に立つ2人を離れて見守る]
ふふふ。よかったね。
ピーちゃんもギンちゃんも来たから、きくちゃんも寂しくないね。
[そこにやってきたキクコがギンスイにハグするの見て、『お母さんのかお』でほっとする]
──家族みんなで、行ってらっしゃい。**
[ケーキの上のお日様みたいな色はパイナップル]
ぱいなっぽー!
みずみずしい、ぱいぱい…!
[ようやく兄の身を解放すると、ケーキを貰うべく手を差し出し]
ほら、落ちついて食え。
[差し出された手>>8に、ケーキを渡して。
何かを探す視線>>9を追いかけた先の姿>>10に、少し眉を下げた]
…………。
[なんか言おうとして、声、引っかかった。
言いたい事はさっき言っちゃったから、これ以上何も言えなくて]
[同じような、困った顔>>13を向けられて。
駄々をこねながらケーキをもぎゅもぎゅするいもーとを、見た]
……同じとこにいなくても。
家族に変わりない……で、いいんだよ、な?
[一人だけ違うのは、寂し過ぎるから。
ほんとは一緒がいいんだけど]
また、逢いに来れるなら。
……寂しく、ない?
[こて、と首を傾げて投げた問いかけは。
そこにいる家族全員に向けたもの]
……そ、か。
[寂しくない、という言葉。>>15
自分にとって、一番大事なのはそれだった。
それが聞けたから、少し、安心した]
かーさんが寂しくないなら、俺は、だいじょーぶ。
[ちょっと心配だけどね、って。
付け加える表情は、苦笑い。*]
[両の手に握っていたはずの人影は消え、ひとり、川辺にぼんやり立っていた。
向こう岸には、どこぞの国の川の名前がついたレストランが見える。
昼の11時、一人の女性が出てきて本日のランチを黒板に書き記す]
[腕を伸ばしてコインを掲げると、店はすっぽり見えなくなった。
指先から力を抜き、ぽちゃんという音だけを聞く。
親指と人差し指の間に出来た空間に現れたのは、髪の毛を二つにくくった、桃色のワンピースを着た女の子]
[大きな鍋をパラボラアンテナ代わりにした、小さな家。
そこにたたずむ者の名を呼ぶが、自分が何と言ったのかわからない]
いってきます。
[どこぞの国の言葉で呟いた後、手を振った**]
[そっぽむいた顔が、上を向いて。
前を向き、一歩。
靴先を浅瀬に浸す]
もらったお小遣いで、乗ってく。
…ギン兄は?
[目指す先には、足漕ぎボート。
そんな水辺に相応しい、軽快な音楽が響いている]
―― ある日の我が家 ―−
[トゥルルルルルル]
はい、ダディです。
はい、マイナンバーは届きましたです。
番号確認ですか? 少々お待ちくださいです。えー
[受話器を肩で支えて、封筒をごそごそ]
[突進していくいもーとを、あー、って感じで見守って。
それから、ダディが消えて行くの>>18見送った]
そーか。
できるこ、ならだいじょーぶだな。
[問いへの返事>>21にへらっと笑って、もっかい頭をぽふっとした。
そっぽむいてる事には、突っ込まないで]
んー、じゃあ、俺もこれ使って乗ってく。
手漕ぎは多分、体力続かないし。
[足漕ぎボート>>22見て、そんな理由で渡り方を決めた。
体力関係ないかもしれないけど。
思い出したから。
自分は筋金入りの引きこもりだった事を。
だから、比較的楽そうなルートを選択して]
ん、じゃあ。
……行ってきます。
[またいつか、逢うために。
ただいま、って言うために。
そんな事はわざわざ言わない。
言わなくたって、きっと伝わると思うから。
だから、その代わりに手を振った。**]
(後どのくらい見ていられるかわからないから、
最後まで見送ろう)
[そんなことを考えていた矢先。
優先度の高いコードの割り込みが入る]
……?
[慣れた電子の命令。
長い間、感じたことのないもの。
ふっと川辺から姿が消える**]
─正常に起動しました─
[内部ディスプレイにメッセージが浮かぶ。
このメッセージを見たのは前回のバージョンアップの時である。
何かあったんだろうかと思いつつ、目を開けると、青い髪をした女性が居た。
見知らぬ女性。記録との完全一致は無い。
けれど、どこかで見たことの──]
どうして?
[なぜあの子が、キクコよりもアンよりも大人になっているんだろうか。
内蔵のシステム日付は、最後にあの子を見た日から20年後を示している]
どうして?
[もう一度つぶやいた。
なぜ『家族』の記憶が残っているんだろう]
一緒に乗ろ。
して、ギン兄がいっぱい焦ぐのだ。
[頭ぽふっとしてくれた兄に、恩を仇で返すよな台詞のいもーと。
こういうとこは、あいかわらずである。
肉球もつサーベルタイガー型のボートに乗り込んだ。
(ハクチョウ以外にも色々なボートがあるようだ)]
─数日後─
[勉強が大嫌いで、泣いてばかりのあの子は、なんと科学者になっていた。
あの日、自分が突然動かなくなった後、誰も直すことは出来なかった。
だから勉強したのだと、彼女は得意げな顔をした]
ほんとに、頑張ったね。
[やればできる子だよ、と、あの子にも言っていたが、まさかここまで出来るとは思ってなかった。
自分の役割は、あの子が変な男に捕まって、借金まみれになり、子子孫孫が大変なことになるのを防ぐために、未来から来たのだから。
その未来はまだ、遥か遠く。
技術的なブレークスルーはまだ先である]
ねぇ。聞いてくれる?
わたし、寝てたあいだ、旦那さんと子供が居たんだよ。
[いぶかしげな顔をするあの子に笑う。
縁側のある、ちいさな家のことをどう伝えたらいいんだろうか。
『家族』の記録は、過去にも未来にも偏在している。
もしかしたら、これから会うのかもしれない**]
[少女の影
鍋アンテナの家の影
遠いそちらへと一度だけ、高々と掲げたハンドサイン。
流れるキューさんの歌声と共に、ボートは進み始める**]
……こんにゃろう。
[ここで人を使うのか。
なんて思いはするけれど、頑張ってしまうのが兄貴心理というもので]
…………。
[当たり前のように返ってくる言葉と、振り返される手。
それに、へら、と笑って──川へと、漕ぎ出した。**]
これはなんですか?
[ギフトボックスを渡してきた、セーラー服姿の学生に首を傾げる]
『結婚記念日のお祝い、と』
[苺を1パック手にして、女学生は、岸に近づく肉球サーベル号へ駆け出した]
アチョー!!
[ヌンチャクを振り回し、昨日見たバトルアニメの真似をする。
そんな昨日なんてものは、本当はなかったんだけれども**]
[向こう岸に近づいたら、駆けてくる姿が見えた。
あれ? と思いながらも、その近くにボートを止めて]
……あー。
[苺を持って、立ってる姿に]
よ。
寂しく、なかったか?
[へら、と笑って呼びかけた。**]