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[廊下に散らばった硝子片の上に、
横殴りの雨が容赦なく降り込んでくる。]
あ…雨戸、閉めてなかったんだ…?
[思わず貼りついた壁から背中を剥がしながら、
青年は呟く。恐る恐る破れた窓へ近づくと、
折れた庭木の枝をぐいぐいと外へ押し遣って]
す、すみませーん…!!
どなたか手を貸してくださーい…!! !
あ、ビセさん、おはようございます。
なんで濡れて…? って、ええと、そうだ。
[廊下では、造り酒屋の青年が折れた庭木の枝を
割れた窓の外へと押し戻そうと奮闘している。]
このありさまなんで、
掃除用具を借りてきて… うわあ大丈夫ですか!
[呼んだ助けが、華麗に二次遭難で度肝を抜かれ]
むしろ救急箱を借りてくるのがいいような?!
あ、お二人ともおはようございます。
僕は怪我はないのでビセさんを――
[冷静なポルテの声に、ビセを振り返る。
突如何事もなかったように歩き出すビセの
様子に脱力してがくりと項垂れた。]
驚かさないでくださいよー…。
むしろビセさんをはたきたいです。
[その場合、必要なのははたきではなく
剣客ズイハラが帯びるハリセンソードだが]
ドイツ語以前に、素数じゃない気がするので
つっこんだつもりでボケたズイハラさんは
罰として雨戸を閉めるのを手伝って下さいね。
[ズイハラが獲得した8ptを
さりげなくボッシュートしつつ、助力を請う。]
あ、枝を切るならのこぎりもいるんだ…
[振り返ると、ビセはアンの部屋へ向かう様子。
改めて声をかけるのはよして、ピエトロへ会釈]
有難うございます、ピエトロさん。
すみません…こちらをお願いできますか?
プレーチェ、危ないから壁際に寄って――
ダイニングへ… はい。
プレーチェを少し落ち着かせて、行きます…
[皆集まろう、と言うズイハラの背へ答える。
今の青年は、血の気が引いた蒼白な面持ち。
時折、かち…と奥歯が鳴りかけるたびに
震えを押し殺す態でプレーチェを抱き締める。]
…日本は… とても治安のいい国なんだ って
話すつもりだったのに。どうして、こんな…
[茫然自失の態のプレーチェの頬を摩ろうとして、
青年は自身の手の冷たさにはっと我に返り――
軽く擦ってあたためたてのひらを妹へ添える。]
… 兄ちゃんが ついてる。
[大丈夫だとも言えず絞り、あおい唇を噛んだ。]
答えになってない、なんて…そんなことは。
[大きく被りを振るとめまいでもしそうで、
青年は慎重にレンへ首を横へ振って見せ]
でも。 レンくんの問いの響きが、
「既に出会った人間の中に犯人がいる」前提に
聴こえるのは、どうしてだろうって思ったんです。
僕たちは、まだ この邸内を
くまなく見てまわってもいないのに――
気のせい、と言われればそれまでの話で。
…僕も、聞かずにはいられなかったみたいです。
[浮かべた違和感は、まだ強い其れではなく。
レンからの返答を今は容れる様子で収める。]
…
立てるかい、プレーチェ。
[妹へ手を差し伸べ、先刻ピエトロから受け取った
タオルの端で気遣わしげに彼女の目許を拭った*]
―― 廊下→ダイニングへ ――
さっきはご助力有難うございました。タオルも。
紅茶、…おいしそう、です。
[並べられたカップに手を伸ばそうとして――
ふと、判断を乞う面持ちでポルテを振り返る]
…え、と…
[気まずそうに眉根を寄せる間にピエトロは
玄関へ行ってしまい…胸を撫で下ろした。]
…あ…だめでしたか、電話…
[戻り来たズイハラの知らせに、眉を下げる。
一応…と遠慮がちに自分でも確かめに行って、
浅く頷きながらテーブルのそばへと寄り]
ミステリーで予備知識があるだけ、
幾らかましなのかもしれませんね。
[いもうとを和ませるためにか、落胆は抑え]
動きを止められたといっても、
天候が回復するまで……ですよね。
犯人…たち?は、その間に何を――
[その先はやや濁して、人々が集うらしき玄関へと
顔を向けた。幾許かの会話の後其方へ向かうだろう*]
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