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恵愛の家教会・寮―
[自室で、思いにふける]
…………。
どうしてるかな……「お姉ちゃん」。
[思い出すのは、幼い頃のこと。
留守がちだった両親が、オトハの子守のためにレンタルしてきた、アンドロイドのこと。
食事や着替えの世話から、遊びや躾けまで引き受けていた「彼女」のこと]
[多忙のため、子供に目が行き届かなかった両親。
オトハがそのアンドロイドを「お姉ちゃん」と呼んで慕っていることに、しばらく経ってから気がついた]
[そして、「彼女」は、いなくなった]
絵本を……読んでくれた。
学校で褒められた話をしたら、一緒に喜んでくれた。
友達と喧嘩して、泣いて帰ってきたら、抱き締めてくれた。
あれは……確かに、子守のためのプログラム、だったのでしょうけど。
私を、私の心を育ててくれた。
私は確かに……お姉ちゃんの「心」に触れた。
お父さんとお母さんがいない間、私が寂しくないように、「お姉ちゃん」を傍に置いてくれたのでしょう?
だから、お姉ちゃんは私に心を見せてくれただけなのに……何がいけなかったの?
いいえ……いけないことなんて、何もしていない。
あれから、いろんな人と、いろんなアンドロイドと出会った。
同じように「心」を持っている……その思いは、変わらない。
あのお店で、お話ししているとき……誰が人か機械かだなんて、わからなかったくらいだもの。
お父さんも、お母さんも、きっといつか……わかってくれる。
今はまだ、怪しい宗教に走った娘と思われてるけど……。
また、あのお店に行ってみよう。
倫理委員会の人に、もしまた会うことがあったら、今度はちゃんと話を聞いてみよう。
美味しいコーヒーと、ケーキでも頂きながら。
[そう、心に決める。
『イヴの時間』は、明日、その扉を開いてくれるだろうか**]
……こんにちは。
[やや緊張した面持ちで、店へと現れる。
知った顔を見つければ、ふと目元が和らぎ]
お元気でしたか……?なんて。
何だか、とっても久しぶりのような気がしてしまいます。
[以前と同じ、窓際のテーブル席へ座り、
すっかり頭に入ってしまったメニューは見ないまま]
イヴレンドと……レアチーズケーキ、ストロベリーソースで下さい。
……ナオさん。
いえ、ナオさんだけじゃなくて、ここで会えた皆さんのことも、そうなんですけど。
相手が人でも、機械でも、自分の気持ちに変わりはない……ってことと、だから知らなくてもいい、ってことは、別……ですよね。
もし、互いにもっと親しくなりたいのなら、互いのことを、もっと知りたいと思うでしょう。知った上で尚、変わらずにありたいと願うでしょう。
いつか……こんな風に誰もが共に安らげる場所がもっと増えて……ありのままの姿で、触れ合えるようになればいいと、思います。
私の祈りは、そのために。
幸せな時間が、長く、確かに続きますように。
ごめんなさい、変なお話をしてしまいましたね。
また……前みたいに、皆さんのお話も聞きたいものです。
あら、誰か……いらしたのでしょうか?
[カウンターの空席へちらりと視線を向け、
それから入り口を見遣った**]
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