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―学校―
[キーンコーンカーンコーン……
終業の時間を告げるチャイムが、校舎に鳴り響く]
はい、今日はここまで。
縦笛は貸し出すから、次の授業までには、全員「さくら」を吹けるようになっておくこと。
年長の子は下の子に教えてあげるように。いいね?
[はーい、と元気な返事が返ってきた。
満足そうに頷いて見せると、オルガンの前の椅子に座る。
和音を号令代わりにして、生徒たちは起立、礼、着席した]
解散。
[その一言を合図に、子供たちは一斉に席を立つ]
『せんせー、ありがとうございました!』
[声を揃えて礼を言うが早いか、生徒たちは教室を飛び出していった。
喧騒が遠ざかった所で、そっと溜息を吐く]
先生、だってさ……。
[独り言ちるその姿は、教師にしては随分と年若い。
とはいえ、既に働ける年齢には達していたし、何より学校備え付けのオルガンを弾ける者がこの村ではごく限られていた。
そのため、週に何回かは、こうして学校に赴き音楽を教える事になったのだ]
さて、そろそろ帰るか……。
夕飯の「料理」はどうなってるかな。
[今晩の食事に思いを巡らせながら、校舎の中をざっと見回る。
誰もいないのを確認すると、青年は帰途についた**]
―帰り道―
[学校から自宅へと戻る途中、重たそうに桶を運ぶ人物を見掛けた。
村の中に知らない顔はない]
やあ、ダンケさん。
水汲みか? 大変そうだね。
[しかし手伝う程でもなさそうなので、隣に並んで歩いた]
ところで、今日の飯ってどうなったか知ってる?
誰か捌いてるのかな。
ポルテさんの店かな?
……腹減ったな。
[ぽつりと呟く。
のんびりした歩調のダンケに合わせながら、ゆっくりと目的地へ向かった]
―自宅―
……ただいま。
[習慣になっているのでつい口に出すが、家の中に人気はない。
薄暗さに目を慣らしつつ、擦り切れた唱歌の本を片付けた]
飯は……今日も御馳走になればいいか。
[一人暮らしではあるものの、料理をする事は滅多にない。
学校に通う子供がいる家に頼めば、大抵お裾分けを貰えるし、料理屋だってある。
ただ、儀式の当番に当たった時は別で、この時ばかりは手伝わない訳にはいかなかった。
その代わり、この日は村人全員が豪勢な食事に在り付けるのだ]
でも、ポルテさんの腕に敵う人はいないよね。本職だし。
[呟いて、帰り道に漂っていた良い匂いを思い出し、いそいそとポルテの店に向かうのだった]
―小料理屋へ―
―小料理屋―
[ポルテの店へ向かう途中、さっき別れたばかりのダンケとも出会っただろうか]
あ、こんにちは。
[店に到着すると、丁度家を出る所のポルテと出くわした。
金髪の女性の微笑みに、こちらも小さく笑みを返して]
今からお出掛け?
夕ご飯を頂きに来たんだけど、少し待った方がいいかな?
[割烹着を脱いだポルテに問い掛ける]
はい。
[ポルテに促されるまま店内へ入り、カウンター席に着く。
目の前の卓には冬瓜の煮付けが置かれた]
頂きます。
[両手を合わせてから箸を手にとり、冬瓜を口に運ぶ]
うん、美味しい。
[前菜を腹に収めながら、ダンケの野菜に期待の眼差しを向けた]
そんな事はないよ。
たまにはこう……あっさりしたものも、いいよね。
[米と野菜が中心の献立に、満足そうな表情を浮かべる。
ご飯の量は多かったが、漬物の塩味で食が進んだ]
あれ、夏ばて? 気を付けないとね。
うん、冷汁もまた今度食べさせて貰えると嬉しいな。
[目の前で作られた茄子の味噌汁を有り難く受け取って、一口啜る]
うん、美味しい。
……ああ、子供たちは元気だよ。
夏場はちょっと森に入れば虫が捕れるし、川遊びも出来るからはしゃぎ回ってるんだ。
ただ、授業中はもっと大人しくして欲しいかな?
[言って、苦笑する]
とは言え、こっちの言った通りに練習するばかりじゃ、あいつらも詰まらないんだろうな。
音楽って、何かの役に立てるための勉強でもないしね。
[笑顔には軽く自嘲も混ざっていた]
大変……か。
いや、ダンケさんほどではないと思うよ。
食べ物がなくちゃ生活が成り立たないんだから、責任重大だ。
[ダンケの無理矢理な励ましにくすりと笑い]
ありがとう。学校があるんだから、教養や娯楽だって、きっと必要とされてる……って、思う事にするさ。
[教室の片隅に置かれた、古びたオルガンを思い呟いた]
……ご馳走様、ポルテさん。美味しかった。
[出された料理を平らげた所で、席を立つ]
貰ってばかりも何だし、何か手伝う事があったら言ってよ。
……お役に立てるかわからないけど。
[料理の腕は言うまでもないし、オルガン奏者らしい細い指は力仕事にも向いていない。
それでも、感謝の気持ちだけは伝えたくて、そう口にした**]
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