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幻なのかも…、知れないね。
[周囲の話に、ぽつりと呟く。
そうして、生前見ることのなかった…出来なかった
──この手が煙にした、純白のドレスを手にした父娘の様子を見遣った。]
─── 殺してやりたかった……?
[誰を、と。
語尾の調子だけで問い掛ける。
その手の中に、はじけた魂が
──血に塗れた幻想が、またひとつ。]
── ああ。
……ひとりじゃ、 なくなった、かい…?
[物言わぬ欠片に、僅かに微笑みかける。
とろりと酔いを誘うのは、血の匂い。
唇を寄せて、ぺろりと舐める。
──あの雪の夜と、同じように。]
……、…そっか。
[空の揺り椅子とメイのいた場所を、ぼんやりと見た。
2人が消えたことに驚く風もなく、悲鳴を聞く風もない。]
────……。
[揺り椅子に歩み寄り、毛布を手に取る。
温もりが手に触れた気がして、僅かな時間俯いた。]
───、隠。
[興味なげに、名を呼ぶ。
差し出す手には、昨夜と同じ血の匂いが漂った。]
…… ”時間”は長続き、しないんだろ?
[言葉を繰り返して、首を傾げた。]
『……どうして、今…』
[何故、と。
向けるべき相手は本当は──誰に向けるべきものだったのか。
ポケットに入れた、小さな紙切れ。
渡したかった、小さな紙切れ。
───今、渡しても──…だろう。
そうして、かさりと奥へ押し込める。]
『もう帰るよ…』
[結局、暖かな皿に手をつけることはなかった。
皿からは、とても、とても暖かな湯気が立ち上っていたけれど。
暖かな記憶。
兄と慕った、大切な記憶。
詩を、うたを。
もう一度聴きたかった。
──遠い日の、雪解け前の記憶。**]
… なに…。
[怯えたように繰り返す。
祝福の言葉に目を見開き、ポケットに片手を突っ込んだ。
かさり。
小さな紙切れが指先に触れる。
こくりと、喉が動いた。]
……、べつに。
怒って、な ん……。
『──今日の処刑は…』『…彼女のことを…』『……勉強、続けろよな!』『何で今──!』
[フラッシュバック][頭痛がする]
[こめかみに指をあて、一歩下がった。]
──……、自分のことを「殺した」相手なんて、恨んで当然だろ?(違う)だから僕は、僕──…
……コーネリアス。
[こうして名を呼ぶのは、いつぶりのことだったろう?]
……帰って、来なきゃ良かった。
あのまま、遠くにいれば良かったろ。
なのに、どうして─…
何であのとき、帰って来たんだよ…!!
選りによって……!
[ああ。
いつか遠い日に、やはり同じように彼に怒鳴ったことがある。
奇妙な既視感。]
あいつが、あんなのことを言い出して─…
[そうして、ギルバートをも睨みつける。
人狼の対策をと、言い出したのは誰だった?]
──…あんなことが、なかった、ら。
[純白のドレス。小さなセーター。
温度を持たぬはずの手が、白く揺り椅子の背を掴む。]
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