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[学者は欲にとらわれている。
欲望の充足とはすなわち快楽の達成である。
求めて足掻けば足掻くほど、快楽の充溢の甘美なること!
あらゆる知識に貪欲なる学者の欲の行き着く先が、
誰もが経験することながら決して知識として蓄えられぬ現象、
――即ち死へと向かうのは、至極当然のことであった。
今、地に付した体、近づく足音に霜の割れる、
転がる眼鏡に世界は歪み、狂人の顔を見上げれば、
その口端もまた歪んだ三日月の形]
おや、
聞いていたのか ね、
[痛みに縺れる舌で、紡ぐのは死人への声。
理由をありきで人を殺すのは、人である。
今、我が身にふる理不尽なる災厄も――]
………、ッ 悪食め、
[朦朧とする意識の中、
気狂い男に吐き捨てる唾には、血の混じる。
乾いた世界に鮮やかな赤]
ああ……君、私を食らう前に、
私に殺されてみる気はないかね?
[口にしながら、くつと喉が鳴る、
それは咳き込む音やら呻きやらにすぐ消えたけれど。
妄想の中、学者には確かに悦の色がある。
死という無二の快楽に魅せられ、
学の世界を追われ、人の世界を追われ、尚]
……残念だよ、
しかし我が身での実践も、また、
[無上の快楽であるだろう]
[男に引きずられる道行きの中、薄く目をあける。
海のものは海へと還るのか、魔物の気配は知れず。
ただ、吹き荒ぶ風の中には、
おぼろげに小雪の混ざりはじめていた。
やがて分厚い氷の壁に、
しばし陸と海の隔てられる季節が至る*]
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