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―― 村の通り ――
[ キコ… ]
ほ
[まだ乾かぬ通りを、錆の浮いた自転車がやってくる。
途中には、傘を回す学生と キコ… 擦れ違って。]
…あした、天気?
[擦れ違った男子学生のうたが漸く脳にしみた様子。
ひとり呟く、自転車の男。
――川下りの船頭見習いをしている、移民の男。]
[移民の男が振り返ると、傘を回す学生は
ひょろ長い風体の子と言葉を交わす様子。
漕ぐのをやめた自転車はすこしふらつく。]
… ほ
[ ふら ふらふら ]
[男は積み荷の重い自転車の体勢を立てなおす。
ペダルをぐっと踏み込むと軌道は直線に戻る。]
昼のバスにゃ、乗っちゃおらんかったごと ある。
[南国訛り。たぶん、村から出てはいないだろうと…
ンガムラから簡単に事情を聞かされてそう伝える。]
…トランクスでん ミス は ミス じゃったっで
美人さんは 出て来っど だい。
[やや楽観的に付け加えてから、そんなら、と挨拶。]
ンガ、
[ムラさん、と声は荷台から手を離した途端に置いていかれる。
軽い警笛の余韻。和服の男が乗った軽トラのバックミラーには、
少し遅れて手を振り返す移民の姿が映っていたことだろう。]
[ キコ… ]
[上り坂はもうしばらく続く。見かけるのはボタンの後ろ姿。]
ほ 婆っばん
[こんちは、と懐こく声をかける。老婆と上り坂とを見比べる。]
…
此処せえ 乗っちっきゃい。
[足腰の適わぬらしき彼女へ、自転車の荷台――トランクの上を
ぽこんと叩いて示す。腰掛けて乗っていくように勧めるよう。
運動にならぬとボタンが断っても、移民の男は首を横に振る。]
…そんなら てっぺん までなら 良かろだい。
[力を籠めるでもなく、移民の男の腕はボタンを抱え上げる。
荷台のトランクケースへ彼女を座らせ、自身は自転車を押す。]
こないだの握り飯 うまかった。
親方も よろしゅう て。祭、晴れたらええな て。
[上り坂。他愛無く話す。口数はすくない、話題もつたない。]
なあ 婆っばん。
『いい天気』 て 『晴れ』 か ?
[斑曇り、雨上がりの空。『あした天気になあれ』…聞いた歌。
見上げ、思い出しながら尋ねた。老婆が零す、不平の合間に。]
[話題が祭に及ぶと、ギンスイの姉たるV9ミスにも話が到る。
ンガムラから聞いた其れをやや遠慮がちにボタンの耳に入れた。]
…ネギヤさん 張り切っちょっで。探さんと なあ。
[ボタンの反応を聞くと、僅かばかり困り顔。
やがて自転車は坂の頂上へ着く。
彼女を下ろす際、積荷のトランクからじじじと音が聴こえた。]
ほ
…何でん 無か。
[男がてのひらを当てると程無く音は収まる。すこうし、微笑み。]
そんなら、気ぃつけて 行たっ来やんせ。
親方… んにゃ 親父さんも。
川の水嵩よっか 嬢ちゃんをば 心配しぃちょっし な。
[不器用に伝え、自転車のペダルを踵でからりと空回り*させた*。]
キク嬢ちゃん、放課後ん 踊りの練習 あったろが。
…ええとダンボール音頭じゃなかっせ…「トランクス音頭」か。
今はァ、皆々 人探しぅ しちょいやっごとあるけど。
[軽トラの荷台にあったダンボールが何故か頭にあったらしい]
疲れとったら、無理はせんごと な。
[礼儀正しく頭を下げるキクコへは最後にそう言って別れた。]
―― 花畑 ――
[広い広い、花畑。いろは一様にくすんでいる。
移民の男は、錆の浮いた自転車を停めて降りる。]
ほ
[傘も差さず、濡れるままに髪先からは雫が落ちる。
畑の花も、道端の草花もただ色がよくないだけでなく、
どこか雨の雫にうたれるごとに色褪せていくような…]
「いい天気」は …難しか ね
[ カコン、 ]
[男は自転車の荷台に括りつけたままのトランクを開ける。
木枠の蓋を開けても、少し待っても…何も音はしない。]
… まこて、いけんした?
["ほんとうに、どうした?"――
独り呟くときは、郷里の訛りがきつくなる。]
[近づいてくる学生の手元に揺れるてるてる坊主を見遣る。
不思議そうに瞬いて(まぶたがぴくりとしただけだが)]
ん 花ァ 見せに。
[トランクの蓋――側面の蓋をゆっくりと戻す。]
ミスコンの「花」のほうは、まだ 見つからんねえ。
タカハルんほう も?
… 蜂。
[ ことん、 ]
[トランク型の「巣箱」は閉まる。]
ギンスイの姉ちゃは、ホズミ。 ヌイ覚えた。
大仰に 探し回っと、恥ずかしなっせえ
出て来にくか と じゃなかかねえ…。
[手を打つタカハルへ頷いてみせると、こりこりと鼻先を掻く。]
同じ年ごろの 女と話すっとは … はずかしい と 億劫。
[皆の探し人たるホズミについては、そんな感慨。内緒、と添え]
ネギヤさんは、心配ごとだらけ じゃっと なあ。
舟で ロケット花火運ぶときも 湿気らせんように ちゅうて
河原で そわそわ うろうろ しちょったし。
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