バロンだけじゃ味気ないだろう。
マスターには秘密ということでヨロシク。
[奥の部屋から持って来たのは、未開封の醸造酒と、グラス*2つ*]
……んー。声が聞こえる人は普通いないものなのね?
[確かに、今思えばあの時も、自分に声が聞こえた事を不思議がられていた節がある。]
ところで、あなたは誰なのかな。
[部屋を同じくしているうちの一員なのだろうか。**]
[頬杖をついて、同族を斜に見遣る。
――15年。
相手の胸裡へ醸成された物の薫りを
利くように、旧き男は目を眇める。]
……
絶対 始末するなら――
[やがて満たされるグラスは触れ合わず。
互いの目の高さに琥珀の水面を揺らす。]
狙いはどう定めるかね、
バロネス
*"男爵夫人"*?
適当だったらまだマシ――
[声の主(>>=1)を、勢いよく振り返る。
声を荒げた文句は長く続くはずだった。
けれど視界に入ったのは、いつもの毅然とした態度とはかけ離れたオードリーの姿]
……なによ。
[声のトーンが落ちる。
僅かに唇を尖らせるのは、どうにも投げやりな言葉を*聞いた証*]
僕?
――…内緒。
[まるで子供の様に無邪気に嗤う声が、漏れる。
信用は、しない。する程の情報が無いからだ。]
仲間同士は聲が聞こえるみたいだけどね。人間は…知らないな。
[ぱらぱらと本を捲り、ふと思い立ったように声を上げる。]
所で。僕に話しかけてきたという事は、何か用があるの?
それとも興味本位?
それとも――…
人狼騒ぎの犯人として、正体を暴いて皆の前に突き出す心算?
[先ほどまでの無邪気さは一瞬にて消え失せ、冷たい声が響き渡る*]
[バロネスという響きがすぐには理解できず、小さな笑い声が零れるまでには幾らかの時間がかかった]
バロンと一緒に煮込まれないように祈るしかないな。
[グラス越しに男を見やる。
集会場で顔を見た容疑者達のことを順繰りに思い出し――]
若い女は好きじゃない。
なんて、ただの嫉妬みたいなことしか今は出てこない。
[ブラウスの胸ポケットから取り出した鍵を指先でつまむと、チャリと音がした。
腕を伸ばして、男の方へ近づける]
ここの合鍵だ。
私に何かあったら、自由に使え。
そう、用がならいいや。
[返答に軽い色を乗せて紡ぐ。]
でも…その問いかけだと、誰かを噛み殺したい人でも居るの?
[更なる問いには問いを重ねて返しながら。]
ずっと前に、ね。こんな風に声が聞こえたの。
どんな「人」だったかは知らないけれど。
[あの夜居間の窓から見えたのは
まるい月の下を駆け抜ける獣の姿のみ。
]
[唇を尖らせていれば、向ける視線も僅かに咎めるようだったか。
返された言葉(>>=3)に、視線を横に逃がす]
それは、自分が死んだら悲しむ人?
死んだら自分が悲しくなる人?
[ふとよぎったのは、彼女の伴侶のこと。
さすがにズバリと聞くのは躊躇われて]
……どちらにしても、自分が死んで喜ぶ人がいるよりマシよ、きっと。
[ため息混じりに言葉を*返した*]
[もうすぐ夜が明ける。
声の主からの答えは、彼の心をどのように揺さぶったのか。]
そう。でもきっと「ずっと前」と僕とはきっと別の人だろうね。
[歌うように伝えると、振り続けた雪は*止んでいた*]