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んーーーーっ、よぉーし。
[玄関先で伸びをしてから診療所の中を通り居間へと向かえば、食べ終えた食器がひと組残されていた。
冷めてしまった朝食を取り終え、ふた組の食器を洗い終えれば診療所の方へと戻る。
そこで壁に掛けられた暦を確認して]
学校は今日じゃないよね。
あ、儀式もう少しだ。
忙しくなるなぁ。
[診療所の椅子に腰を落としてカルテを確認する。]
回診は午後に二件、…と
明日は学校だから―――
…あれ? 患者さんかな?
はぁい、いまぁーーす。
…あれ、ダンちゃん。
どこか具合悪いの?
[彼が娘の父だと知ってはいてもそれを娘に話す事もないまま7年。
その月日もあってか彼と接する態度も何ら昔と変わらずのまま話す。]
ポルテさんが…?
[ダンケの言う症状を簡単にメモを取れば頷きを返して]
うん、うん。
解った、これから行ってみるよ。
……
[ぱちりと一度瞬いてから]
ん、いいよ。
うちの子もダンちゃんとこのお野菜美味しいって言うんだよー。
うちの子は風邪も引かずに元気でやってるよ。
でも、テンゴくんの元気を少し分けてもらってもいいかなー。
[今頃学校で勉強をしているだろう彼女を思いながら、目の前のダンケを見れば ほにゃっと笑う。]
じゃあ、また後でだね。
はーい、またね。
[ダンケを玄関先まで見送ってから一度診療所の中へと戻り
回診用の使い古された皮の鞄に荷物を詰め込み、診療所の入口に
『回診中』
の看板を掲げた。
その足で、小料理屋へと向かう。]
― 小料理屋 ―
ポルテさん、お邪魔しますねー。
[臨時休業と書かれた扉から内へと入れば、奥の部屋で横になるポルテの元へと向かう。
彼女の様子を見ながら、問診もしつつ]
んー、ちょっと熱いですよー。
どこか寒い場所にずっといたりしませんでしたかー?
今は安静にしてて下さいね。
また明日来ます。
[会話はしながらも濡れた布を額の上に置いて定期的に取り換えるように伝え、簡単な処方箋を枕元に置いた。]
それじゃあ、お大事に。
[どこからか漂う匂いが何なのかは解ってはいるけれど、先に回診の仕事を済ませる事にした。]
おじーちゃん、お加減どーですか?
昨日より顔色いーよ。
ん、…やだなぁ。
ちゃんと解ってるよ。
何かあればおじいちゃんを、残さずみんなで戴いてあげるよ。
はい、それじゃあこれ3日分のお薬。
ここに置いていきますねー。
よい… しょっとぉ。
[鞄を手に村の道を歩く。
回診は問題なく終り、空いた腹が音を小さく立てた。]
――――― あ
[遠くから聞こえる笛特有の高い音。]
もう少しだもんなぁ。
― 診療所 ―
[結局その足で帰って来た。
昼も過ぎていたので家にあった漬物をつまんで飢えを凌ぐことにしたのだった。
回診中の看板を取り、診療所の中へと戻ればカルテに必要事項を書き込んでから暦をもう一度見た。]
[明日の回診の準備と同時に、別の準備を始める。]
…、…
[ここ数年何度となく繰り返されてきたこと。]
『 ただいま。 』
[小さな声と共に帰宅を告げる娘の声。]
おかえりー。
今日はダンちゃんも来るから
一緒にご飯食べようね。
[こくんと頷いてから奥の部屋へと向かう双葉を見送った。
診療所の待合室は日課のようにお年寄りでにぎわう声が聞こえてきていた。]
ん…、あれ?
はーーい。
[ぱたぱたと音のする方へと向かい裏の戸を開く。]
マシロちゃん。
…どうかした?
[年頃の女性の訪問は色々と気を使う部分がありやや真顔のまま彼女を見上げた。]
[マシロの言葉に瞳を瞬いてから]
…今日はまだ来てないみたいだね。
診察室は相変わらずの様子だけど、…
あ。
急ぎの用なら来た時に伝えておこうか?
ありゃ、そうなの?
わざわざ探しに来たのに…
ん、うん。
それじゃ、おばあちゃんに宜しくね。
[ほにゃっとした笑みを向けた。]
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