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[レイヨに引き寄せられ、その手当てを受けながら。囁かれて、一度目を閉じ]
……私は。
それを、見付けられる……の、だろうかな。
……、
[喘鳴混じりに呟き、緩く手を握り締める。レイヨが語るのを聞き、そして開いた瞳には――トゥーリッキによって突き込まれる杖の先が映り]
! ――
[それを認識するが早いが、視界が揺れた。手にしていたナイフが転がり落ち、からからと立てた音が、崩壊の音に呑み込まれる。
放られたのだと判断するよりも早く。
揺れるコート。飛び散る血の雫。流れる火の矢。舞い踊る紅いオーロラ。視界は一瞬、赤く染まり――]
[次に認識したのは、傷から生じる熱を奪う冷たさ。崩れ落ちた小屋の外、雪の上に投げ出された男は、仰向けたまま――動く事は、なく]
……、与われしは。……
[だが確かに生きて、其処にいた。炎の音と人々のざわめき。生き残った者がどうなるのかは知れずとも]
……
[僅かにも動く気配のない左腕の代わりに、右腕を動かそうとしたが、血が失われているせいだろう、小さく震えるばかりで。背の下の雪を感じながら。ただ、ぼんやりと、薄らぐオーロラを*見上げていた*]
[いつかどこかで囁かれる、赤い衣の旅人の噂。
赤いコートを着たその旅人は、あちこちの国に、街や村に訪れては、様々な話を語るのだと言う。旅人の話はいずれもいつかどこかで「あった」話。とても詳細に、数は数え切れない程に多く]
――忘れても構わない話だ。
[どれもそう始められる。
旅人は眼鏡の下の瞳に常に憂いを湛えていると言う。そして、左肩に大きな傷跡を持っているらしい、と]
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