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[よけもせずクルミにスポーツバッグでぼふんと殴られた]
痛えよ。悪かったよ。なんだよ。謝ってばっかだよ…。
カブト虫と懐中電灯しか持ってるものなかったんだよ。
お前がなんかすぐめそめそするからだろうが。
俺も笑わせるのに必死だよ。
[上手くいかなくて残念そうな顔で、木で出来た電柱にかぶと虫を預けた
[異質な空気に視線を遣れば、また一人切り取られていた。
いまさっきまでいた人間。声の残響が今の今まで響いていた人間がいない。]
――笑えねえよ、少しも。
[灯りの消えた街灯に、急いで一度消していた懐中電灯を点けた。
暑さのせいではない汗が肌を伝う。
感情を飲み込む。タカハルとのやり取りを思い出した。
進展はあった。と言えなくもない。苦笑する]
神隠しね。いつもなら爆笑だぜ。
[自分の服の裾に手を伸ばすクルミに声をかける]
大丈夫だよ。根拠全くねえけど。
[タカハルの声につられるようにコハルを見た。
確かに様子は普通でもない。というか、全員が平静ではない]
……さっきあいつが言ってた肝試しってのは、何だったんだ?
[誰へともなく呟いて、クルミを見た]
何がだろうな。わかんねえけどよ。
何もかもだよ、きっと。大丈夫だよ。シャツとか握らせてやるよ。
本気で関係あんのか?あれ。
[予告じゃなかった。という言葉に手紙を思い出して、誰にも悟られぬように唾を飲み込んだ。]
……何にしても、今日は帰るしかないだろ。
明日もあいつがいないままだったら、また考えよう。
警察には、言っても意味ないかもな。確かに。
[じゃあ他に何が意味があるのか、と。
自問して、それに自答はしなかった]
[ナオに、んだな、と短く相槌を打つ]
近いやつから順番に送るの待ってくれるなら先輩も送れるぜ。
……って。
[踵を返すナオに困ったように言葉を切る。実際、最前のようなことが起これば誰がいようと関係はないのも事実ではあったが]
あー。
[クルミにシャツを掴まれたまま思い出したようにタカハルに向いて]
……じゃあそういう担当でいくか。
俺はクルミとウハウハするわ。コハルと先輩は任せた。
[手にぎにぎするべきなんかなー。
どうなんだろ。わかんねーなって顔。
考えながら歩き、しばらくしてクルミが言った言葉に口を開く]
気にすんな。したいことだけしてんだよ。
俺は気にしてねえし、気にされるほうが変な気分だ。
なんだ。あれだ。……無神経で悪かったな。
[不器用に言って、そのまま家の前まで送っていくのだろう。
*いい加減夜も遅くなっていた*]
[二年の教室で図書館から借り出した本を読んでいた。伝承に関する書籍。数冊目の本を読み終えて雑に重ねた]
……何かできるのか?これ。
[合理的解釈など今回は全く意味はない。伝承を受け入れるなら、それこそどうしようもない。なら考える意味がない。
否、一つだけ。何故か頭に焼き付いている。――顔のない手紙。]
[無個性な文字が問う。「人であって人でないもの。それは何?」
人を喰って成り代わる妖怪のことを聞いたことがある。自分はどうだろう?気づかないうちに“そういうこと”もあるのか?成る程。完璧な擬態かもしれなかった]
――震えるよ。本気で。
[呟いて、そこで知った声が聞こえた。
何時もの気だるい口調で返事する]
耕一だよ。どうしたんだ?
[チラシを差し出され、受け取って眺める]
狐狗狸ね。確かに大抵は狐だよな。こういうの。
でも。なんだ。上手く伝わる気しねえけど。
……まだ何かするつもりなのか?
そうだよ。来海はこれ以上何をしてやりたい?
なんつうか。なんだろな。責めてるとかじゃなくて。
[心配だよ、と。そう呟いた。チラシを茫洋と見つめたまま]
そだな。それは、俺もそうしてやりてえ。
[視線に応えるように来海の目を見つめ返し]
何があっても俺がお前に怒ることはないよ。
心配だからあんまり一人ですんなってことだよ。
何かするなら、俺も付き合うよ。俺がいる限りは一緒にやるよ。
[袖を引っ張る来海の手をとって、きゅうと握る。
少しだけ迷って、やはり根拠もなく約束した。
この状況で、それ以外できそうになかった]
大丈夫だよ。
[せめて自分が身代わりになれたら。思いながら決して言わない]
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