「明日の君は――僕の事を覚えているだろうか?」
[黒マントの言葉]
俺は、覚えてる
結婚するって言ってたよ
それがあんた…?
[白無垢姿の顔を覗き込んだ瞬間]
ああ。
チョモランマのムチの観察でも、
何かしらヒントがつかめるかもしれないな。
[パオリンの言葉に頷きを示す
そして、返された書類をしまいこんだ瞬間。列車内の灯りが消え、闇が訪れた]
――?
[雲の上に轟く、雷鳴。]
[揺れはじめる車体。]
大丈夫か、パオリン。
[再びの雲上の雷鳴を耳にし、はっとしたように口を開いた]
嗚呼、時空嵐か―――。
[1年後]の[屋根の上]にとばされたりしないだろうな。
このままでは、24時間前に……
[間に合わない? ――闇の中で、唇がなぞった]
不思議な事もあるものですね。
[突然の暗闇。そして揺れる車体。時折煌く雷光が、彼女の横顔を照らす。]
診察室に似ているわ。
[呟き。]
[記憶が過ぎるのは切れ掛かった蛍光灯の点滅。
陰陽の中、[ふとん部屋]に居た[昨晩]の医者の呻き声。
メスの代わりにムチを持ったその姿は、[狂信者]のようだった。]
ああそう、これが時空列車なんだ
[話には聞いていた。乗りたかった。乗らなくてはいけないとわかってはいたがその方法がわからずにいた]
…よかった
[座席の間、狭い通路でバランスを取っている]
嵐が去るまで、席からお立ちになりませぬよう。
[乗務員席に腰掛けたまま、ふと何かに気づいたように辺りを見渡す]
アンさんが、いらっしゃいませんな。