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[赤のノートにはこんなのが書かれていた。
最後の戦い、テシオを加えた王国軍によるヴィルコラク攻城戦がはじまる。
ヴィルコラクにたつ旗はシュテルをはじめ守将に森の熊さん。そして隠者。
三将の内二将の旗は見つからずどこかに潜んでいると思われていた。
そして攻城が投石の音とともにはじまる。
杭を内、更にテコの原理をこの当時から利用して守られた城門は容易く落ちることはなかったが、兵力差などは歴然としていた。
ゆえに普通に攻め、普通に落とす。
というのは表の戦。
王国軍は同時に影の戦。ローウェルによるシュテル暗殺の指示を出していた。
元よりヴィルコラクは彼らの城。道は熟知している。
そしてローウェル率いる少数精鋭はその暗き刃をシュテルへと向けたとき、その人物がシュテルではないと気づく。
それは嘆きのイレアナといわれ、ローウェルの妹、オイナ一族族長の娘、三つの顔を併せ持つ影武者≪半身≫
兄妹として違えられた道は切り結ぶことによって凄絶な交わりをみせるのであった]
[一方、シュテル
それに猛犬と暴れ馬の二将は少数の兵と、ポーンザインの本軍を加え、オイナ一族の案内のもと、ピアボンド山より、執着王の首都、ピジュへの奇襲を結構していた。
シュテルであり第三王子のマッテオは熟知していた、城の内部を、どこが弱点であるかを。
波をがさざめくような静かさとともに進軍。
オイナ一族の力を借り、ローウェルを出し抜いた瞬間であった。
だが好機とともに不運が存在していた。
それは森の熊さんと黒獅子のピーコック会戦の折りに交じわせた言葉。
ごくごく個人的な約束であったその言葉は敵と繋がってることを疑われたとも、またはそれとはまるで関係なく、連戦で軍の機能が著しく低下したためなのか。
黒獅子は一時首都への帰還を命じられていたのだ。
一度目は軍で、二度目は馬上で、三度目は生死をもって、矛を交えることとなった。]
[後に、熊との約束を破ったことによる自責の念か、それとも別の感情なのか。黒獅子はポーンザインへと様々な援助をしており、後世において、黒獅子の紋様が残ることとなるがそれはまた別の話]
[また、執着王、ローウェル、そしてイレアナの関係のはじまりは謎が多い。
ローウェルは執着王より賜った名であるが、本名はトゥナの兄弟の誰かではないかとは思われている。
二人が孤児であったこと、オイナ一族との関係。そもそもオイナ一族に多くの謎が残るのではあるため確固たる論はない。
だが当時、執着王の他にも欲にのった権力者が一度、オイナ一族の秘法欲しさに攻めるという事件が起きている。
それは結局お互い犠牲者をだしながらも彼ら一族のその特異性より決着をどこかに置き忘れた形で終わっているが
その時期と、執着王とローウェルにイレアナとの出逢いの時期が被るためこの戦の際の逃げたのかなどして身寄りをなくして拾わえたという説もあるが、やはり真相は定かではない]
[またシュテルがマッテオであるという説
周囲からは情けないといわれているマッテオであったが、生来から気性は穏やかであり、動物…特に馬に好かれていたといわれている。平和な世であればよき統治者となっていたであろうといわれている。
だが時は戦のはびこる時代。戦場にて彼は一体何を見たのか。
そして外の世界にて何を感じ取ったのか。
そこについては想像するに堅くないが、その名を棄てたことより、弱気自分を捨てたとも、または、王権をもっての戦いにせぬ志を抱いたともいえる。
転機は戦場にて、危機的状況に陥ったとされた際のジェミナイとの出会い。
流れの軍師の策に従い、また守るべき重責とその意味をイレアナに教わった彼は軍を生き物のように動かした。
その時、隠者は驚愕に顔を歪め、イレアナは当たり前だというように誇らしげな顔であったという。
これにより自信を持てるようになったのが本当のシュテルが産まれるきっかけであったのではないかといわれている]
[また、ジェミナイも、自分の使える主であり、自分の知に法った戦運びをできる指揮官を探していた。
ワドリックの戦いにおいて、火計をもって黒獅子を追い詰めるも逃がしたのは、黒獅子の指揮能力に加え若狼の情報能力もあったが、隠者の指示についてこられるだけの隊がいなかったというのも大きな原因の一つであったのだ。
そして二人はであった。
マッテオ…シュテルが自分の味方を探していたように、ジェミナイもまた自分の知で支えるものを探していたもの同士がぴたりとはまり合うように]
[ここで執着王の次男のテシオについて触れておこう。
嫡男。ねちっこー油っこー。
次男。あ、いたんだ
三男。ぷ、なっさけな
で知られる執着王の息子たちである。(一部嘘である)
当時では目立った功績もなく、さりとて目立った失敗もないためにさほど名があがる存在ではなかったが、記録を調べていけば、同じ時代にて最強といわれていた黒獅子に継ぐほど幾多もの戦に参戦しておりそのどれもがいる記録が残っている。
テシオの母親はユリア。月の光も陰るといわれるほどの美女として知られ、執着王が唯一、策を練ることなく得た女性であった。]
[だが元より猜疑心が強い執着王はユリアの美しさを欲しながらも、何も手を尽くすことなく自分の妻の一人にできたことに疑心を抱く日々が続く。
それは息子、テシオが生まれた事により一時おさまるのだが、後に再熱。
執着王には武の心得はなくユリアは当然であったが、テシオには兄弟にはない武の才があったのです。
初めは僅かな疑心であったといわれているが、徐々に似ていないのではないかという思いが強くなり、同時にユリアの乳母兄妹であったものとテシオが似ているのではないかという噂がたつことで激情のままユリアとその乳母兄を謀殺してしまいます。
しかしそれは後に根も葉もない噂であることが分かり深く後悔することとなりました。
後に執着王をなんの掛け値もなく愛したといわれたユリアを自分の手で、しかも間違いで殺してしまったとあればそれは想像に難くないことだろう。
テシオにもその件はわかることとなり、その後己の武才を表に出すことがなくなりました。二人の間でその件について交わされた言葉は一切記録には残ってはおらず、テシオの心中を知るのは、彼本人とあるいは友と言われたローウェルだけだったのかもしれない]
[ヴェルフェルミ=アイ・ヴァンホー
9世紀○○地方の王。
ストーカー王。執着王といわれ当時としては異常な情報戦を取り、政治戦略とも執拗に追いつめることを、また性格もねちっこいであったという。
戴冠後、南方進出のために首都を古都ピジェに移し、いくつもの国をその情報能力と戦略を駆使して手中に収めて領土を広げていった。
その麾下には当時最強といわれた軍人黒獅子や諜報部隊"L"をはじめ様々な文武官を従えており、また政治においては律を主にした厳格なことで知られている。
敵対するものには容赦はなく、悪辣な手段も平気でとっていたといわれているが、被害を最小に収めた手法をとっていたともいわれている。
彼のストーカー王などという不名誉な名で後世に伝わっているのは、当時の、嘆きのイレアナ。事件に由来することが多いが、彼自身も好色であったとも、欲しいとおもった存在は何がなんでも手にしたい強欲な王だともあるが、慎ましい性質ではなかったようだ]
[諸説にはそうなった原因は、彼を最も愛したといわれるユリアをその手で謀殺してしまったことが由来するともいわれているが、彼の幼少時代もまた原因の一つといわれている。
当時の父王の妾の子として生まれた彼は兄姉に疎まれ、よく暗殺に身を晒されながら悲惨な暮らしをしていた。
また当時の父王「お前には扱いきれないだろう。そういったものがいたら危険だ」などという理由だけで友となったものを殺されている
それは当時の病弱な王位継承権第一位であり一番可愛がられていた王による乱心ともいわれている。事実の有無はともかくそのようなエピソードがあるように、彼に味方は母親意外にいなかったのだろう。
だがその母も度重なる苦労にて早死にしているといわれているが、何時頃かの記録は残ってない。
一人母の死を悼むヴェルフェルミに「あなたの母君も一人で死ぬのは寂しいでしょう。ご一緒にどうぞ」というメッセージとともに獣の死体が贈られてきたなどとも言われているぐらいだ。おそらく彼意外誰もその死を悼むものがいなかった故に不明なのだろう]
[それがきっかけで彼はより辛辣に卑怯も不名誉もものともしない人間に変わったのではないかといわれており、また後の若狼を拾ったのも、後の黒獅子と呼ばれるものと親交を得ていたのもこの頃である。
その後、父王を初め当時の兄弟など王位継承権を持つものが一人ひとり"不慮な事故"でなくなっており、王位継承権の低いヴェルフェルミが王として君臨することとなった。
また、当時のヴェルフェルミの父王の時代、彼の国は弱体化の一途をたどっており、それを早急に建て直すためにも手段を選ばぬ策を講じざるを得なかったという説もあり昨今では不名誉な名を得る王であるだけではないという説が浮上している。]
ジェミナイ
元は下級貴族の出身。
軍事学校にて黒獅子とは同期であったといわれている。
文武ともに優秀だった黒獅子ヴェンツェルと比べ、ジェミナイは体力はなく、また知においても評価が低かったという。
だがそれは型通りの知識しかもたぬ教官には理解できないためであり、彼の真価をこの場で測ることはできないと黒獅子はいっていたという。
シュテル仕官先とするわけでもなく様々な場所で流れの軍師として活躍。
定石通りから外れていながらも理に叶った、当時では画期的な策を講じている
特に有名なワドリック湿地帯の争いでは、地理や天文を把握し、霧の出現、風向き、また時間差をもった兵の配置による火計をとりおこなう黒獅子率いる部隊に痛撃を与える。
また執着王麾下のスパイ集団"L"の目をも直前まで欺いたことを特筆すべき点である。
だがその時は自分の軍略についてこれるだけの指揮官がいないために、思ったほどの成果があげられなかったが、ここにその名声は高まる。
シュテルとの出会いをきっかけに主を得たとされ、嘆きのイレアナ事件より端を発した戦いの全体図を書く。
思えば、情報伝達速度に差がある時代にて、執着王に蜂起する期間の足並み揃っていることからも
レヴィングダットの戦いでは、黒獅子率いる当時最強といわれた黒騎兵を発案した八方十六角陣にて混戦時に痛撃を与える。などあらゆる知をつくりて対抗した。
またシュテルを援助した商人一座のリ=ダーグと渡りをつけたのも彼といわれている。
このリ=ダーグにはまた諸説あるが、その方策も彼がねったといわれているがそれは別記にて記そう。
ヴィルコラクの戦後も彼は生き延びたとあるが、その後は表舞台に姿を表すことなく隠棲。
仕官を求める使者があったといわれているが全て固辞したことも加えて隠者と呼ばれるようになる。
私塾を開き、素質ある子供たちに知をさずけていったとあり、この地方の学校の礎を気づいたとされる。
ヴェンツェル・クロイツァー
黒獅子の異名をもち、「執着王に黒獅子ある限り、戦をしてはならぬ。」とまでいわれ恐れられた常勝不敗。当時最強の軍人
彼の軍の練度もさることながら大きな特徴はその機動力にあった。
本来ならば軍を進発させると決めて動くに要する時間が長く。十日以上といっても不可思議なことはない。
だがヴェンツェルの隊はそれが極端に短いため、当時としてはありえぬ行軍をもって、電撃的に敵に攻撃をしかけれた。
後の隠者、ジェミナイとは同期であり、また執着王とは彼が王になる時分より前からの付き合いである。
また彼と執着王との仲は極めてよかったのではないか推測される。
それは執着王という不名誉な呼び名にまつわる暗い感情を黒獅子に向けられたことが残されていないのだ。
そして彼からも執着王に対しては忠を尽くした。のそっけない一文のみが残されている。
その後主要な戦には全て参加している。普段は礼節をもちまた、質素な暮らしをしていたといわれるヴェンツェルだが戦いにおいては非情をもってあたる苛烈な人間であったのは、ガリウス、リムドラの侵略の記録をみればわかることであろう。
また彼を語る上でかかせないのはワドリック湿地帯の争い。
ジェミナイの策により窮地に陥るところを、当時のスパイ集団の長、ローウェルの機転によって救われたことより、彼らは無二なる親友となったといわれ、後の戦においても、情報をローウェルが集め、ヴェンツェルが戦う。互いが互いの分野をいかし信頼をしあうことで、より常勝の名を強めた。
後に、嘆きのイレアナから端を発するシュテルの蜂起がおきるが、持ち前の機動力を生かし、その進撃を阻む。
レヴィングダット攻防にて援軍もなく、また消耗し切った部隊のなか、多くの犠牲を出し苦しめられながらも、一歩も引くことなく、次男テシオ率いる援軍がくるまで持ちこたえた。
そのレヴィングダット攻防にてシュテルについた元副官の森の熊さんとの間になんらかの約定が重なっていたのではないかといわれているが真相は定かではなく、ただボーンザインの黒獅子の紋様だけが、何かがあったのではないかと伝えられている。
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