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[嫌な夢を見た、気がした。はっきりとは思い出せないけれど]
はあ。夢、か。
[ホッとして目を開く、けれど。ベッドの上の少女を確認すると、息をのんだ]
まだ、夢、見てるのかな。
[夢であったら良いのに……という思いをこめて、呟いた]
ゼンジさん?
[ふと、人影に気付いた。この部屋にいるのは、自分とゼンジと、あとは、ポルテだろうか?ともかく、この無残な姿の少女と二人きりでないことに息をつく]
どういうこと?これって……。
殺された?人狼が……って。あの、御伽噺の!?
[そういえば。夢の中、誰かがアンを襲っていた。そんな曖昧な、記憶]
……でも。誰が?
[思い出そうとすると、頭の中が真っ赤に染まる気がした]
いってぇ……。
[こめかみを押さえた]
[ゼンジやヂグたちのやりとりが、遠い世界の出来事のように思われた]
どうして、みんな、そんなに落ち着いてるんですか?
これって……、さ……殺人でしょ。
[言葉にした途端、ざーっと血の気が引いた。足元がおぼつかない気がして、うずくまる]
[ふと。いつの間にか部屋に入って来たフユキの姿を認めて……。思わず、目を見張った]
お兄さん……、赤いよ。
[唇から出た声は、擦れていた。フユキの髪が目が、いやそれどころか、指の先から足の先まで全てが、返り血を浴びたように、真っ赤に、見える]
お兄さん、ヒト、だよね?ね?
[自分でも何を言っているのかわからなかったけれど、必死で声を出した。知らず瞑っていた目を、おそるおそる開けてみる]
[ポルテにしがみついていた手を緩めると、力なく返す]
こっちこそ、ごめんなさい。
何か、動転してたみたいで。
[あんまり凄惨なアンの姿を見たせいで、どこかおかしくなっているのかもしれない。……けれども、あの真っ赤なフユキの姿こそが真実なのかもしれないと、頭の中のどこかが警告を発していた]
[ポルテが部屋を出て行くのを見ても、動く気にはなれなかった]
どうして……。
[何度目かの、意味の無い問いを繰り返す。ふと、死体となった少女と同室なのだと唐突に気付いて]
と、とりあえず、出よう。
[枝を手にしたヂグを認めると、首を傾げて]
どこ、行くんですか?
[問う声が届いたかどうか?お茶の方へ向きなおると]
うぁあっっちぃ!
[フウフウいいつつ、お茶を啜る]
[外に出ると、微かに何かが燃える匂い]
あ、煙だ……。
[見上げれば、一筋の黒い煙がのぼっている。建物が、息をしてるみたいに見えて、何となくぞっとした]
何もないです。うん。
[ポルテの問いには、ゆるく首を振って]
ヂグさんが燃やしてるのかな?あれ。
何か、枝を抱えて歩いてたの見た気がしたから。
[煙を指してぽつりと言う]
こ……わいよ。お兄さん、真っ赤……。
どうして?
[頭の中がガンガンして、煩いくらい渦巻いている。これは声だろうか?でも誰の?]
え。お……おおかみって?なに?
[何を口にしたのか、自覚は無い。強烈な睡魔に襲われて、そのまま意識を*手放した*]
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