待って待って、あたしがまだ乗ってないわー!
[ぱたぱたと走り込む娘が一人。]
えっと、何の演習だったかしら?
[自分の役どころを把握していないらしい。**]
[深く考えない方が良いと言わんばかりに、サヨヘもう一度微笑みかける。
エレベーターと呼ばれる箱は、衝撃を受けながらも何事もなかったかのように、再び動き出そうとした。]
――待って!
[思わず声を上げると同時に、飛び乗る人影。
走るヒールの音は、箱内に敷き詰められたカーペットのお陰か響き渡らない。]
さぁ? 忘れちゃったわ。
[ナオの問いかけには、吐き出すような声色で答えて。
エレベーターは上へ、うえへと*動き出す*]