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偽りがあると、いけないんだろ?
ゼンジのおっちゃん、今そう言っただろ。
オレ様はっ、…、
…………ふたりを、偽っているのに。
[ぽつりと。溢れた真実が、零れる]
[絵日記を持つ指先に視線を落とす。
爪の隙間が汚れている。
屋上のあの時の、微かな赤がついたまま]
でも…怖くて、言えなかったんだ。
ああ そうだな……、
ゼンジのおっちゃんになら、今は言えるかもしれない。
でも、 ヨシアキにはまだ言えない。
[日記越しで良かったとこの時ばかりは思う。
泣き笑いのような表情を見られなくて済むから]
だからさ、
オレ様が選ばれたんだよ。きっと。
このゲームにも。“鬼”にも。
[誰よりも一番最初に、
参加者を殺すことが出来た理由は―――…]
…、―――ゼンジのおっちゃんは、自分の世界が好き?
残すべきとか、そーじゃないとか。
そういうんじゃなくてさ。
純粋に。単純に。 ――…好き?
[子供なりに精いっぱいの、*質問を*]
……むむー。
[ちらり。視線を一度、階段の向こうに投げて]
セイジのにーちゃーーん。
また、話そうな!
[届くかどうかわからない声を投げた後、
一度上った階段を再び下りて、4Fに降り立った]
苦労してんなー。
[傷口を縛るのに難儀している様子に、
そんな感想を漏らしながら近づく]
まだ生きてる?
[軽い調子で呼びかけた]
そうそ、オレ様は9thのデンゴ。
アンタは、名前何てーの?
[まだ血が滲んでいる様子を見てから、
手元のふろしき袋に視線を移し]
てやっ。
[絵日記を除いた、
中の物をばさーっと下に落とした。
ただの布になった唐草模様のふろしきを
乱雑な3つ折りにして、相手が拒否しなければ
血の滲む傷口を更に押さえて縛ってみる。
気休めっぽい気もするけど、なんか頑張った気分になった。
そんなことをしつつ、]
10thのおっちゃんが守りたかった相手ってさ、
あんたなんだろ?
[と聞いてみたりする]
そっか。ならよーかった。
[けらっと笑って、強がりをそのまま受け取っておく]
マシロのねーちゃんか。
7thの日記を壊したねーちゃん。
オレ様、覚えてるぜ。
アンタは――ちゃんと生き残る意思が
ある奴なんだな、って。
[質問には、おどけるように軽く肩を竦めた]
オレ様の最優先は、生き残ることだからなー。
[血が止まった様子を見下ろして、
へへっと満足そうな頷きをひとつ]
ふーん?
あのさ、なんで守ろうとしてたか、言ってた?
マシロのねーちゃんにヒトメボレしちゃった、とか?
[冗談を添えつつも、訊ねる眼差しは真っ直ぐだ]
ちなみにさ、なんで――守ってくれたんだと、思う?
[問いかけて、ああいや…と続けて首を振る]
答えは今じゃなくていーんだ。
オレ様さ、マシロのねーちゃんに頼みがあるんだ。
[さっき落とした自分の荷物をひとつひとつ、
ゆっくり拾い上げる。
ほとんどはズボンのポケットに詰め込んだ。
入らないペットボトルとクッキーは、
ぽんぽん、と持て余すように手の中で遊ばせた後、
―――あげる。と、マシロの目の前に置いて、]
…、…ゼンジのおっちゃんに会ってやってよ。
オレ様はマシロのねーちゃんのこと、割とさ、
嫌いじゃねーんだ。
生き残ることに貪欲で、
手を汚せるくらいの覚悟があるオトナは、
自分と、似てるから。
だから、ちっと、安心できて。…怖くない。
[年に似合わない薄い笑みと、年相応の弱々しい苦笑。
足して二で割ったような曖昧な表情を浮かべて]
だから…―――
[絵日記のカボチャがガタガタ震えるのに気付いて、
マシロの前でそれを開く]
『11thが、近くで死ぬ。』
[ごくシンプルな未来の文章を飲み込んで、
ぱたんと閉じる。表紙でカボチャが嗤っている]
…………、…――そっか。
んじゃ、頼んだからなマシロのねーちゃん!
一方的にだけどっ。
[けらっと笑った顔を最後に向けて、
その場を立ち去った。
向かうは――ここ以上に、血の匂いのする、方角]
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