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砦と言うか……あー……むしろあれかもね。
迷宮。
[困ったように笑うイェンニ>>1:61に軽めに返したものの、この場での冗談としては滑ったかも、なんて思考はちらりと過る。
ともあれ、地下を見に行くという彼女には気を付けて、という短い言葉を向けて。
自身は階段を足早に上がって三階の展望室へと向かい]
…………はぁ?
[先とはまた、違う理由で呆けた声を上げた]
[雨が降っている。
それはいい。
だが、その降り方は酷く不自然だった。
屋敷の周囲を取り囲み、そこにだけ降る雨。
それはどこからともなく放たれる紅い光を帯びて、美しくも不吉なものを思わせた。
呆然としつつ、頭上を見上げる。
そこにあるのは、不吉だが美しい――紅い月]
…………『紅き月の煌めく夜に、始まりを告げる13番目の鐘が鳴り響きました。』
……だっけ。
[大広間で黒衣の娘が落とした言葉が口を突く。
天上にかかる月ははっきり見えるのに屋敷の周囲には雨が降りそそぐこの異様な光景。
それが齎す意味は、と思考巡らせつつ、しばしその場に立ち尽くして紅い月に魅入られて。**]
[紅い月を呆然と見上げていたのはどれほどの時間だったか。
不意に、影のようなものが月の上に浮かび上がったような気がして瞬いた]
……なん、だ?
[文字通り、瞬きの刹那に消えたもの。
それが何なのかを確かめる術はなく]
……戻るか。
[今は、休息を取るべきだろう、と割り切って。
踵を返し、向かうは二階の個室。*]
[個室に戻った後は、諸々の疲れから眠り込み。
目が覚めて、最初に確認したのは窓の向こう。
やはりというか、雨はまだ降っていた]
……ぁー……。
[さて、どうしたものか、と。
そんな事を考えていると、ドアがノックされ。
訝りながらどうぞ、と応じれば、現れたのはメイド。
メイドは淡々と、黒衣の娘の死と、地下の武器庫の開放を伝えてきた]
……いや、その、なんていうか。
……冷静過ぎない、あんたたち。
[仮にも主が死んだというのに、何故こんなに冷静なのか。
それが取り決めだからと言わんばかりの態度は、人間離れしていて背筋がうすら寒い。
とはいえ、そこに囚われていたらヤバイ――という認識もまた、確かにあって]
……色々は、りょーかい……。
あ、申し訳ないんだけど、何か軽く食べられるもの、頼める?
[まずは体力つけないとまずい、と。
思い至ったのは、そこ。
食欲があるとは言えないが、いざという時に力が出ないのはまずいから。*]
[メイドから届けられた食事を取りつつ、持っていた荷物を開ける]
あー……まさか、こんなとこで使う必要出るとかねー。
[荷物の奥底から取り出すのは、布に包まれたもの。
包みを解けば、現れるのは護身用にと持ち歩いている短剣]
…………いやほんと、勘弁してって感じだわ。
[ぼやくように言いつつ、それを上着の内側に潜ませて。
食事を済ませると、食器くらいは下げるか、と思い、盆を片手に廊下に出た。
当の盆は、歩き出してすぐに現れたメイドによって速やかに階下に下げられたりしたのだが]
……さて……上に行くか、下に行くか。
[階段の前に立ち、巡らせるのは次の行き先。*]
[取りあえず、下に行くか、と思った直後に、上から何か聞こえた気がした。>>16]
なんだ……?
[嫌な予感がする。
ヤバい仕事に巻き込まれた時に感じるタイプのそれは、大体ロクでもない事が起きている事を示唆していた]
っても、行かないわけにゃいかんか……。
[小さく呟き、歩み向けるは三階]
[三階まで上がれば、微かに大気に異臭が混ざる。
それが何を意味しているかは、何となく察しがついていた]
……うぇ……。
[呻くような声を上げつつ歩みを進めれば、先にも聞こえた声がまた耳に届く。
何かを執拗に繰り返すそれは、どこか不穏なものを感じさせた]
……っと、ここか……って。
[さすがにそーっと、慎重に覗き込んだ室内。
目に入ったのは、寝台に横たわる亡骸と、そこの傍らで何やらぶつぶつと呟いている黒衣の姿]
…………。
[思わず、扉を閉めて何も見なかった、とかやりたくなったのは、已む無しとしてほしかった。*]
……さて、どうしたもんか……ってか、あれがあの鳥の……。
[持ち主なのか、と。
あれやこれや、思考を巡らせていた所に感じたのは、人の気配]
……っと。
[階段の方を振り返れば、上がってきた二人の姿は見えるか。
ともあれ、二人に向けてよ、と手を振って見せた。*]
……見た事ない、黒服がいる。
考えられるのは、例のからくり鳥の主な引きこもり氏だと思うんだが……。
[向けられた問い>>29に、他に考えられない予測を返す]
何やら、えらい物騒な事を延々繰り返しててな……正直、何がなんやら……。
[わからん、と言いかけた言葉が、ふっと途切れる。
先に、展望室で見えたもの――月に重なった影。
それが一瞬、カウコに重なって見えたような気がした]
……ん、ああ。
[ほんの一瞬逸れた気は、イェンニからの問いかけ>>30に、辛うじて目の前へと向けられる]
俺にもよくわわからんのだけどね。
件の引きこもり氏が、ドロテア嬢の横で延々と物騒な呟き繰り返してるんだわ……。
多分、さっき叫んだのもあちらさんだと思うんだけど。
[室内には他に人影はないから、間違いないとは思いつつ。
ただ、繰り返される呟きの物騒さに、ひとつ息を吐いた。*]
[得られた同意>>33に、だろ? と息を吐いて]
……てか、あの黒服さん。
「ころしてあげなきゃ」って言ってた……ん……だよな。
[それが黒衣の娘だとしたら、この状況は彼が作り出したのだろうか。
それなら、嘆くような様子は何故か、とか。
あれこれと考えていた所に聞こえたイェンニの声>>35に一つ瞬いた]
……あー……言われてみれば、確かに。
あの様子だと、ちょっとヤバイかもな……。
地下の部屋って……ああ、メイドさが言ってた、武器庫の事か。
あの調子で駆けこまれたら怖そうなのは同意。
[軽く首を傾ぐ様子に返す言葉は聞いている、との肯定の意を含むもの。
そういや、そっちも見とくべきか、と思いつつ、視線は黒服の方へ向いていた。**]
……お嬢さんの顔?
[イェンニの言葉>>38に、改めて寝台の方を見る。
はっきりとは見えないが、確かに、最初に見た時の無表情さとは違って見えた]
……あー……そういう可能性も、無きにしも非ず、だよねえ。
[長逗留していたという黒服の客。
こちらの知らぬ何かがあっても不思議はないが]
いずれにしても、大人しくしててくれれば……って感じかね。
[もし、そうならなければ、というのは自身にもあるから。
向けるのは、同意の頷き。*]
……ああ、ほんとそれ……。
[暴れられると厄介。>>40
聞こえたそれはまるっと同意なので、カウコの方を振り返って頷きひとつ。
直後にまた、妙な影がちらついたような気がして瞬いた。
そんな、完全に気が逸れた一瞬の隙。
それをついた……と言えるかどうかは定かではないが]
なんっ……!
[奇声を上げて走り出す黒服。>>42
突然の事に何かするのも間に合わず、外に飛び出すのを阻む事はできなかった。*]
……お見事。
[思わず上がった声は、見事な足払い>>45への賛辞。
とはいえ、事態はそれどころではなく]
ちょっと待った、そのまま行ったら落ちるぞ!?
[どう見ても階段に頭から突っ込んで行きそうな様子に上ずった声を上げ。
とにかく、動きを抑えなくてはと駆け寄り手を伸ばした。*]
[投げかけられた問い>>49に対する答え>>50は、やはり物騒なもの。
ただ、微妙に引っかかる部分もあり――とはいえ、そこを思考している余裕はなかった]
……ぁー……。
[落ちた、とは声にはならない。
転げ落ちて動かなくなった男>>50が生きているのかどうかはわからないが、あらゆる意味で長くはないだろう、という読みもあった]
……どっちにしろ、どっちかはわからんのだしね。
[階段を降り始めつつ、ぽつり、と呟く。
始まりに刻み込まれたルール。
それに従うならば、真っ先に狩るべきは『鬼』なのだが。
男がどちらかはわからないから、安全を確保するためには、という思考が動いていた。*]
……おう。
[軽やかに、踊るような動きで階段を駆け下りる姿。>>53
それが紅を散らす様子に、どこか惚けた声が上がった]
あー……まあ、仕方ないんじゃない?
あちらさんは、全部殺る気でいたみたいだし。
[祈り捧げた後、俯く様子>>54に、軽く返す。
黒衣の事情は知る術もない。
だから、彼が何者かはわからぬまま。
ただ、これで終わる、という確信だけは、残念ながら持てずにいた。*]
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