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[裏返った菓子鉢。こぼれた甘納豆。
ワカバの口唇にはまだザラメの粒が、]
…
なんて なんてこと――
[声はひどく 恨みがましく。
面は悲嘆に染まり 視界は涙に、歪んだ。]
してくれたんだ。
[山奥の村に、茶屋は「稲荷屋」一軒だけ。
その店を、屋号で呼ぶひとは殆どいない。
いつも客をあたたかく迎える耳の遠い老婆が、
ずうっと昔「かみなりばばあ」なんて渾名を
つけられてこわがられていたなんてことも、
いつから人間好きになったかなんてことも、
覚えているひとはもう――殆ど *いない*。]
―― 診療所 ――
[静かな、薄暗い部屋でワカバのそばに居る。
新たに運ばれてきたのは――つめたいロッカ。
扉越しには、つめたくなった者らの親族と
ドウゼンとの涙声混じる話し声が聞こえ。
――その声もやがては絶える。訪れる静寂。
ヘイケは、眉根をきつく寄せて両腕を組んだ。]
……
…わらうことが出来なくなるわけでは、
[視界にはフユキがドウゼンへ向ける苦笑。
耳にはウミを抱いてきたホズミの僅かな声。]
ことばが尽きるわけでは、
ないのね。
[ほろり 感慨を漏らしてから其々へ目礼を]
きれいよ。ワカバも。
[ワカバの「状態」について短く触れる。]
カミナリは、落ちた。たぶんね。
でも、カミナリに打たれたのではないわ。
[アンも ナオも ワカバも火傷ひとつない]
カミナリにしても雷神さまのお怒りにしても
仕方が無い、抗えない、
…そんなふうには、どうしても思えないの。
足りない、もの?
人と 海と 柿。
そう、そうね――ホズミ。
[ホズミの言には少し想うところがある態で
言葉を続けようとしたが――彼女が胸に抱く
ねこが人語を放ったように見え、はたと瞬く]
ウ ウミ?! …
口寄せ…
な なんだか
かわいそうな気もするけど――
[躁状態のような挙動を見せながら
言葉を流し続けるウミに戸惑い、見遣る。
注意深く、今度は耳を傾けて]
苦しんだり、
何かを訴えてるわけじゃ ない…のね ?
[『 ぱしゃり 』
シャッター音を模した効果音を鳴らしてから、]
あ
動画じゃないと 意味ないわね…
[混乱さめやらぬままに呟く。
改めて動画を撮る気にはならず携帯を降ろした]
… 今までのことと
ウミの様子と…関係はあるのかしら
ウミそのものがしゃべってる…
う、うん。
でも、霊の声?姿?がわかるのは元からで
喋れたのがはじめて?
…困ったわね。
どこからどこまでが
今までのことと関係在るのかしら――
突っ走る、…そうね。
流されるのとどう違うのか、わからないけれど。
[ぽむりされるといたまれなくもなるが、
フユキのその手を軽く摩ってうなずいた]
…
私にも、わかることはあるのよ。
「何のせい」かは言えなくとも、
「誰のせい」か、くらいだったら。
…かえってしまうと 寂しい
そう言ってくれるコは、
ロッカの周りにいないのかしら?
[そう言って ウミへ手を伸ばす。
ねこの顎下を人差し指でいつものように擽る]
そうだね
探しに行ってみよう …鍵
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