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[目撃した二人の片割れの、女の顔も見知ったもので。
やがて密談の雰囲気の男女は別れた模様。
その場を離れ、それから暫し後。女のほうをどこかで呼びとめた。]
……あの、弁護士さん。
ひょっとして何か、知ってるっすか?
[もしも先の彼女の行動がたんに逢引だったら、野暮なことこの上ないのだが。]
いまに無いなら、むかしに在る。
[小さな声で呟きながら書斎に向かう。
しかし、書斎のあった場所はがらんとした客間であり、いくつかの部屋をあけて、本が雑然と積まれている書斎にたどり着いた]
和綴じの本も入り混じる書棚を捜し、たどり着くのは、昔だというのに古ぼけた手書きの原稿用紙]
ここで「むかしのあたし」がこれを持っていくと、「いまのあたし」の手に届かなくなる……?
[右端をこよりで結われた原稿のタイトルは『太雪』である]
ガモンさん……ここは、むかしのここは、夢なのかな。
[原稿をそっと棚の上に戻し、ガモンの頬に指を伸ばす]
痛い?
[きゅっと頬をつねろうと**]
[ネギヤは死んでいないのではないか、そんな発言に老婆の表情はいくらか緩んだようにも見えた。
しかし、寿司桶を片付けに台所に姿を消したきり、ボタンは姿をくらました]
あら、無くなってる。
[グリタの宿泊していた部屋のドアノブに引っ掛けておいた腕時計も見当たらない。
胸ポケットから取り出したスマートフォンを操作して聞こえてきたのは、何か嫌な感じの音声だが、電波が悪くてそれ以上はわからない]
―― →玄関 ――
[玄関の扉を開こうとした手がぴたりと止まる。
中から聞こえるのは男女の声]
やだ、立ち聞きなんて品のない。
[と言いつつ、耳をぺたりとくっつけて盗み聞きの*体勢*]
[「今」とは違う書斎。オトハが原稿を手に思案している様子]
『太雪』それっすか。みつかって良かっ……
[女性の細い指が頬に触れれば、口を半開きにしたまま硬直する。が、次の瞬間]
あでっ!?
そ、そりゃ痛いですよ!
[頬を押さえて抗議するが、オトハの意図に気づくと]
あー、夢じゃない、みたいっすね。少なくとも、俺にとっては。
……試してみます?
[ごく軽く、オトハの頬をつまみ返そうとした**]
これが現実なら、人は過去には戻れない。
つまり、ここは、過去を模した家? え? 原稿は、ニセモノ?
[ぶつぶつと呟いていたが、ふっと肩の力を抜いて笑う]
いいの。
この世界なんて空飛ぶスパゲッティ・モンスターが大酒を飲んだ後に作ったものなんだから。
ちょっとくらいおかしくたって構わないのよ。
[何やら諦めたようで、原稿をそっと両手で抱えると]
せっかくだから探検しない?**
[ 庭園で、弁護士と別れた]
なぜ、は気になりますが男女の中に口出しするほど野暮ではありませんね。
[ そう、今でも信じられない。
もちもちなネギヤを、あの弁護士が刺したなど]
この事件は謎が多すぎる。
[ 男の足は、書斎に向かう。
応接間ではなく、彼女の告白を信じるならばもう1つの事件の犯行現場になったその場所に。
しかし]
あれ?
[ ふわりと妙な浮遊感を感じたかと思うと、昨日あって今日ないもの、その逆もまた然りの場所へと迷い込んだ]
あら?わたしは何をしてたのかしら。
[寿司桶を片付けに台所へ行ったまでは覚えているのだが。]
年を取るとこれだから、いやぁねえ。
[手を頬に当てて苦笑する。そういえば人形はどこに置いたのだったか。]
[知っているようで、知らない風景。
――いや、知らないようで、知っている。
折れて切り落とされた樹木の枝、
子供の頃にネギヤが付けた壁の傷、
そのどれもが、新しい]
……これは、どういう……?
[まるであの頃のままの屋敷が、目の前にある。
夢でも見ているのか]
そう言えば、時計……。
[あの時受け取ったはずの懐中時計も、いつの間にか手の中から消えていた。
どこに置いてきたのだったか。
ひとつ、ふたつと廊下の足音が増えていく]
[>>3:+28眼鏡を掛けていたのは誰だったか。
心当たりは警察も行方が分らないと言っている彼女の事だけ。]
ソラ、どこから持って来たんだい。
[窓際のソラに問いかけたが、首を傾げるだけ。
不安がちなボタンは空になった寿司桶を片付けたが、
一向に戻ってくる気配はない。]
[ボタンの長らくの不在に、警察に問うたが知らぬ存ぜぬの様子。]
はて…一体どこへ?
[手持ち無沙汰に呟くとソラが導くように動き出した。]
[向かうのは書斎。
その途中で、廊下に落ちている茶封筒を見つけた。
猫がてしてしと前足で叩く]
これこれ、悪戯しちゃあいけないよ。
[拾い上げて中を覗く。
文字がぎっしり書かれた紙の束だった。
何故ここに、と思いながら近くの警察に渡した。]
[猫は空いていた書斎に入りこむ。
幸か不幸か警察は不在を良い事に、猫は書棚に飛び上がり、次々と本を落としていた]
これ、やめんか!
[和綴じ本の奥に隠れた古い紙束に、猫の手が届く前にウミがソラを抱き留める。
猫は近くに来たウミの頬をペチと猫ぱんち]
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