[東へ疾走する時空列車内の通路を進む。
ほどなくして、パオリンの隣の席へ戻った。]
ぅおおおい。お花つみから戻ったぜ。パオリン。
お、っと、そうだ。いまのうちに、人類誕生の調査結果まとめ、読んどくか?
っつっても、不明点が大半らしいが。
[封筒から書類を取り出し、隣へ渡そうとする。]
[老人の姿が見えたなら、察し、切符を取り出して差しだそうとした。]
[そう、24時間前に向かうはずだったのだ。生命誕生の謎を解くために、部屋の外へとふすまをあけて]
黒マントの男に…言われたんだ
[切符を持たない少年は呆然と呟く]
白無垢の娘に、黒マントの男。
お似合いじゃないかって言われたんです。
[冷凍みかんを手で弄びつつ、口元に手を当てて微笑む]
可笑しいですよね。
白無垢の隣には紋付袴がいる筈なのに。
「明日の君は――僕の事を覚えているだろうか?」
[黒マントの言葉]
俺は、覚えてる
結婚するって言ってたよ
それがあんた…?
[白無垢姿の顔を覗き込んだ瞬間]
ああ。
チョモランマのムチの観察でも、
何かしらヒントがつかめるかもしれないな。
[パオリンの言葉に頷きを示す
そして、返された書類をしまいこんだ瞬間。列車内の灯りが消え、闇が訪れた]
――?
[雲の上に轟く、雷鳴。]
[揺れはじめる車体。]
大丈夫か、パオリン。
[再びの雲上の雷鳴を耳にし、はっとしたように口を開いた]
嗚呼、時空嵐か―――。
[1年後]の[屋根の上]にとばされたりしないだろうな。
このままでは、24時間前に……
[間に合わない? ――闇の中で、唇がなぞった]
不思議な事もあるものですね。
[突然の暗闇。そして揺れる車体。時折煌く雷光が、彼女の横顔を照らす。]
診察室に似ているわ。
[呟き。]
[記憶が過ぎるのは切れ掛かった蛍光灯の点滅。
陰陽の中、[ふとん部屋]に居た[昨晩]の医者の呻き声。
メスの代わりにムチを持ったその姿は、[狂信者]のようだった。]