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……――っ、
[集落を半ばまで来たところで、突然、サイレンが鳴り響いた。そして、頭痛を覚えると共に、視界が歪んだ。目を瞑る。しかしそれは見え続ける。放送を終了したテレビのような、ノイズに満ちた画面。
ラジオをチューニングするように、画面が鮮明になっていく。――ノイズ交じりのスクリーンに、映し出されるのは、見覚えがあるような廃屋郡。視点が移る。遠くに聳える火の見櫓へ。手元へ。異様な暗い色をしたその手に握られた、拳銃へ――
呻き声を零して目を見開く。そこでぶつりと画面は途切れ、元の視界が戻り]
……っは、……今のは……?
[頭を押さえながら、辺りを見回す。気付けば空は赤くなっていた。夕暮れにしても赤過ぎるようにも思えた。赤い水と、同じように。眉を寄せつつ、男は歩みを再開し]
― 集会場 ―
アンちゃん、早いなあ。
[少女の姿を見つけるとそう溢し、懐から読み損ねた茶封筒を取り出し、読み始めようとした。**]
……!
[すぐに、立ち止まる事になった。前方から蠢く気配を感じた。咄嗟に廃屋の影に隠れ、様子を窺う。緩慢な足音が聞こえた。そっと覗くと、人影が見えた。それが此方を振り向いたのに、どきりと身を引っ込めて]
……な、……何、なんだ。
何なんだよ……
[心臓が強く脈打つ。息が上がる。一瞬見えた人影は、人ではなかった。異様な肌。白目を剥いたような目。流れる赤い涙。封じる板が頭を過ぎる。あれは、もしかしたら。この村は――?
惑乱の中、*身を潜め*]
―集会場―
ねー、カズキ、従兄くんは…?
[弟のカズキから明確な答えはない。
アンの隣へ腰を下ろすとジャム煎餅をくわえる。
そのまま、小首を傾げ、]
アンちゃんって、腕細いよねー。
ね、これ使う?
[カズキの持つ金属バットを取り上げ、それをアンへ差し出した。
バットには大きな凹みがあり、何かが変色したらしき染みも所々に付着している。
咀嚼音を立てて、少女へ密かにウインク。
開いた側の片目が紅色を一筋流す*]
―村役場―
[轟いたサイレンの余韻が去りゆく頃――耳を
押さえうずくまっていた少年が漸う我に返る。
能面のような表情はそのままに、額へ薄い汗。]
ぁ…
隠れないと、また
[ふらりおぼつかぬ足取りで歩き出そうとする。]
美津保おねえちゃんが …こわくなる
[耳の奥へ、短く連続したノイズ音]
[―ざ―] [―ざ―] [―ざ―]
[切り替わる視界の幾つめか、端に
少年が―自分が―映る其れがある。
オトハ女史を見遣る相棒の、視線。]
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