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[眠たそうに、目をこする]
ふぁー。
おなか一杯になると、眠くなるのは……もう。
[腰掛けると、墓碑に背を預ける]
あ。そうそう。言い忘れていたわ。
ルリちゃん、ライデンさん。
──私に食べられてくれないかしら。
[初めて会った時のような、明るい*笑顔*]
歌が……
彼女が、倒れて……
救えなかった、……
[「思い出さなくていい」と囁くカナメの声が、遠い]
私は……
「貴方は」
――狂った「怪人」、だ。
[思い出す。舞台に立っていた時の事を。仮面を付け、歌っていた自分の事を。目の前で倒れた、彼女の姿を。自分が、誰だったのか――
頭が割れるように痛い]
……う……嗚呼、……
痛い、……
カナメ、私は……そして君は、
ライデン、だ。
[呟きは低く。ゆっくりと瞬いてから、ペケレの声に改めて其方を見る。笑顔が見えた]
そんな事、俺に言われても困るな。
楽園とは、現実にある限り名称でしかない。
真のユートピアなど、何処にもありはしない。
どんな幸せな世界でも、人は苦しみ悩む。
俺が知っているのは、向こう側が楽園と呼ばれる事。
その先に何があるのかなど、楽園の住人しか知らぬ話。
俺は記憶を取り戻したかった。
だから、人の夢を、記憶を、魂を喰らう。
それが問題だと言うのなら。
記憶を消した奴等を恨め。
ペケレ…
ほんとうに。プレーチェたちを…。
[伝えられたその事を
にわかには信じられなかった風で]
[しかし。
『食べられてくれないかしら』
その一言は、決定的にした]
どうして。
それが、必要だったのですか?
お腹が、すくからですか?
[うるさいと言うルリの声>>15。
どこか悲しげにそちらを見てから]
あ……。
[ふと視線を落として、黒い上着とぬいぐるみを拾い上げる。
そのまま白衣の男へと、言葉を投げかけた]
せんせい。
祈りは、誰かを救えますか?
あたしには、何もないから。
ただ、願うことしか出来ないから。
[獏の言葉を。一つ一つを頭の中で繰り返して。じっくりと繰り返して。]
君と俺は、相成れない存在なのかもしれないね。
…止む終えず記憶を消す。
そういう事だってあるんだよ、獏。
獏。君に。俺の夢を喰らうことはできるかい?
…俺がこちら側に来たことは。
本当に…本当に最大の誤算だよ。
俺は、盾になることが出来たのに…。
……ルリ。
君は…受け入れてしまうのか…。
食べたいのかね?
ルリと、私を。
[聞き返す声は平坦に]
私なら構いはしないさ。……思い出したから、ね。
私が誰かも、知り合いの顔も。
彼女の事も……
全てを、思い出した。
元々死のうとしていた事、だって。
私は、狂っていた。
[淡々と言葉を重ね、笑う。自嘲するように、寂しそうに、――愉しそうに]
>>+35
誰かがわからないままじゃダメですか。
[微かに微笑んで、上着を羽織る。
確信をもった手つきで、ぬいぐるみの背中をまさぐり始めた]
誰かがあたしのしあわせを祈ってくれた分、あたしも誰かの……
[カチリ、音が響いて、ノイズ混じりの機械音がメロディを奏で始める]
Ten little Injuns standing in a line.
最後の一人は……
幸せだったか、不幸せだったか?
[謎かけのよう。左の掌を天に向けて掲げ、目を細める。そしてまた、低くも高らかな笑い声を*響かせて*]
[影の世界からの、響音]
楽園。
…。…。…。わかりませ、ん。
――ライデン?
[様子のおかしいライデン。
彼の方へ伸ばしかけた手が、続いてその笑みに戸惑い 彷徨う――]
狂っていた?
そうは、みえませんが…。
誤算?やむを得ず?それこそ言い訳だ。
誰が、いつ、記憶の消去を望んだ?
少なくとも、俺は頼んでいない。
人は、思い出無しには生きられない。
記憶を消した事が、過ちの始まりだ。
[クスリ、クスリ、ただ笑って]
夢を喰らう事は、できるだろうさ。
肉体を喰らう事は、できないかもしれないが。
レン、お前は盾にはなれないよ。
お前は、溶けて消える泡なのだから。
[ぬいぐるみから響き出したのは、憂いを帯びたクリスマスソング。
知っているメロディなのかどうかすらわからない]
サンタクロースに最後に願ったのは、何でしたか?
[ぬいぐるみに視線を落としたまま、誰に尋ねるでもなく言った。
震える唇をきゅっと引き結ぶ。
瞬くと、頬を一筋の滴が*零れ落ちた*]
…その曲。
[顔をあげ、ひつじを見つめる]
眠れない君へと…手向けられた?
[ノイズ混じりに、ひつじが歌う]
そう見えなくとも、狂っていたのだよ。
今だってそうだ。
ああ、覚えているとも。苦い薬の味を。白い部屋を。
身動きできない窮屈さを。今だって。
[ルリの問いには、笑みを穏やかな微笑に変じ]
少なくとも、この世にはないものだ。
「This loathsome gargoyle who burns in hell But secretly yearns for heaven」
[半分の否定の後に続けた台詞は、独り言の*ように*]
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