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[此方の言い訳の様な其れに、返る後輩の声。
それは、強く責める声ではなかったけれど。
…どんな言葉よりも、強く心を締め付けて]
――、あ、
[待って、とも云えず。
やがて声も何もしない、無機質な音が]
<ぷーっ、ぷーっ、ぷーっ……>
[鳴り響き、ミナツの声の代わり、となり]
――。
[それをただ、受け入れるように、
携帯を耳につけて、微動だにしない。]
[電話中のイマリを黙って待ち、漏れ聞こえる会話に目を伏せた。]
…イマリちゃん。
[結局何も言えず、幼子にするようにお団子頭をそっとなでてみる。]
[やがて、その音も止んでしまう。
自動的に携帯が状態をOFFにしたようだった。
完全に、あちらとは途切れてしまった。]
――。
[それでも携帯を握り締め。
まるで、向こうからの声を聞いている様に。
一つだけ、ゆるゆると首を縦に振ると]
――、
[静かに、頬を一筋の涙が流れた]
[頭を撫でられても、暫くは気付けない様に。
ただ、すぅ、と零れる涙に、
瞳は遠くを見つめて、いた。]
――、あ
[だが、不意に、お団子に触れる手に気付けば、
素っ頓狂な声と共にそちらへ視線を上げ]
…ズイハラ、さ
[涙声と共に。ぐしゃ、と顔を、歪めた]
[ただ、頷いて。
泣きそうな肩をワイシャツの腕が包む。
すがりつかれる事も構わないと。]
[されどその身のぬくもりは、既に淡く薄い。]
[何も、見えていなかった。
見て居たのは、居なくなった人の気持ち、だけ。
何処か、居なくなった母に罪悪感があったのか。
…一番大切な残されたものの気持ちを…。
今になり、身に染みて痛感する。]
――、ズイ、は
[彼に包まれれば、強く、縋りついた。
側に誰も居なければ。こうする相手が居なければ。
ひょっとすると、一人、
発狂じみた状態になったかもしれない。]
ずい、っ…
[しかし、其の身に触れ。止まる。
呼んだ名が、途中で凍り。喉の奥へと、還る。]
――、…?
[恐る恐ると言う具合に顔をゆっくりあげ。
すがりついている、彼の顔を。]
…ズイハラさん、なん、で
[涙目のまま、見上げる。]
[まだ、此処に居る。
そう、云われれば何と返していいかわからない。]
―、っ、…っ、
[右左に、ゆっくりと首を振った]
なんで、
[そして、俯いたまま]
…なんで?…どうして?
[答えの出ぬ問い掛けを]
―回想―
[片づけを終えたミナツが戻ってきたときに時計が0時を告げた。
この瞬間に誰かが消えるのだろうかと思って俯いたそのとき。
ミナツの声にはっとして顔を上げた]
にーちゃ……えっ…ええええ…っ
きえ、た…きえちまった…。
ウソだ、ろ…
[ぽっかり口を開けて、さっきまでジュンタがいたその場所を見て。
そこへ座り込んだミナツにもなんて言っていいのかわからなくて]
ミナツねーちゃん…
[自分に縋って泣き続けるミナツ。
オトナだったら抱きとめることが出来たのかもしれないが、
小さな自分にはただそこにじっとしているしか出来なかった]
[まばたきをしたとき、そこにぼんやりと誰かの姿が見えた気がして]
あ、れ。
なんかいま。
[見えなかった?とミナツに言いかけて
ジュンタの携帯から着信音が鳴っているのが聞こえ口を閉じる。
ごめんねというミナツにはぶんぶんと首を振って、
その電話に出る様子を見ていた]
―?
[ミナツの悲しみに暮れる声に心がちくちくとして、
まばたきを何度も繰り返す。
そのたびに何かがぼやりと見える気がして、
だんだんとそちらに気を取られていく。
それはなんなのか…誰なのかと]
(ジュンタにーちゃん…か?)
[思い浮かべるのはその人だけで。
しかし確証はない。
電話を切ってうなだれているミナツの服をぎゅっと握って
まばたきをしながら見える影を目で追った]
…あ。
いっちゃ、った……
[ぼんやりとした影はやがてそこからどこかへ行ってしまって
そこには自分とミナツだけ]
オレ。なんか、見えてる?
[首をひねった。
―もうまばたきしても何も見えない]
―回想おしまい―
[イマリとの電話を切った後、携帯を握りしめたままうなだれていれば、服を掴まれる感触。
はっと我に返り、流れ落ちる涙を拭いながらデンゴの方を向く。]
デンゴ君…ごめんね…。
さっき何か言いかけてた?
[デンゴが呟く言葉。瞳を瞬く彼には何かが見えているようで]
ん…?何か見えるの…?
[自分もきょろきょろと周りを見回してみるも何も見えなくて、彼の目に映る物は何なんだろうと小首を傾げる。]
死者の想いを還せば…デンゴ君のお母さんもジュンタも本当に戻ってくるのかな?
[隣にいるこの子も母親がいなくなって辛いのには違いないのに、自分ばかりが泣いているわけにはいかない。と思いながら、ふと窓の外へ目をやれば、再び天から降り積もる雪。]
デンゴ君、疲れてない?
寝るなら一緒にいるから眠るといいよ?
[そう問い掛け、少年の頭を優しく撫でた。**]
―回想・自宅―
[ずっと外にいたせいで身体はかなり冷えていた。
一度シャワーに入り、汚れを落とす。
時間の流れがどうなっているかは分からないが、シャワーはなんとか使えた。
11月1日の日に使わなかったせいなのか。]
雪は…昇ってるわね、普通に。
[これが普通だと思う自分に激しく吐き気がするが。]
この時間を普段から使えるなら、誰も受験に失敗しなくなるわね。
うん、でも、まぁ…。
馬鹿は馬鹿な風にしか使わないかもしれないけれど。
[バスタオルで頭を拭きながら、携帯を取った。]
[携帯には1通のメール。
最近はパタリと止まった迷惑メールでないことは分かっていた。]
美夏…、あの娘か…。
[メールの文字に目を滑らせていく。
残っている人間の数は6人。
そもそもこのメールを信用していいのかすら分からない。]
霊感ね…そんなもんあったら困らない。
[あの少年が人間だと分かったのは。
ビー玉が教えてくれた気がするから。
ただ、それだけ。
掲示板にそれらしきことは書いてあったけれど、信じてはいない。]
ま、バカ兄貴が何を教えてくれるのかは疑問だけど。
[視線の先。
白い歯を覗かせ笑う兄の遺影。]
[一番、疑問に感じているのは自分。
青のビー玉は己のビー玉。
白のビー玉は兄のビー玉。
それを、大事に持っているなんて恥ずかしいけれど。]
バイク事故で死亡なんて、どんだけ親不孝なんだか。
あんた、ホントに馬鹿じゃないの?
そんなんが双子の兄だなんてそれこそ吐き気がするわ。
[けれど。
死者絡みの都市伝説を見るとすぐに試してしまい。
今回のことも。
もしかして、兄が来ているのかもしれないと。
そう、思った。]
…ま、馬鹿兄だけど…そこまで馬鹿じゃないか。
死者は死者の役目を果たせばいい。
あんたのために泣いてあげたこの私に感謝すればいいわ。
その代わり、あんたのこと私は忘れずに泣いてあげるからさ。
[遺影で笑う兄。
血まみれで冷たくなったその頬を触れた時。
己の半身を失ったあの感覚。
きっと、それを忘れることは2度とできない。
熱を失ったその皮膚の冷たさを忘れることはできない。]
とりあえず…元に時間を戻さないと。
いっぱい勉強できても、センター試験を受けられないと意味がないもの。
[軽く伸びをしてもう1度確認をする。]
[ミナツからのメールにもう1度視線を落とす。]
5人のうちの1人の名前を件名に入れて…。
それから、本文は「雪に願いを」か。
死者の見当はさすがにつかないわね。
とりあえず、このデンゴって子供は違う、勘で。
ズイハラ…これは誰か知らない…。
この名前でもいいけれど…。
[ここ2、3日で出会った名前の主のことを思い出し、誰が死者なのか考えていく。]
クニモト…ってあの理科室にいた…。
私の名前知ってたよね、あいつ。
……勝手に呼び捨てにしてるし、何様?
本当かどうかも分からないし、とりあえず書いてみるか。
[携帯のボタンを押し始める。]
[本文に指定の文章を入力し。]
宛て先不明で…送れるわけ…、
[無機質な音と共に、送信完了を告げる画面。]
は…?
これで送れたっていうの…?
まさか…本当に…?
[テストとして送った文章。
けれど、彼がもし死者でなかったとしたら。
何が起こるのだろうか。
窓から外を見遣れば、雪が天から舞い散り始めていた。]
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