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[過ぎったものは一度横において。ここからどうするかを思案する]
家で見たものだけじゃ足りねぇ、ってことなんかな。
あと俺に関わる場所っつーと……あそこかぁ?
[思いつくのは学友が住んでいた風音荘。遊びに何度も通ったことがある場所]
止まって考えててもしょうがねぇし、行ってみっか。
[目的地を定めると、住宅街を早々に抜ける。駅前まで出てくると、そのまま海辺へと向かう道を歩いて行った。考え事をしているためか、周囲への注意力は散漫。声をかけられれば立ち止まって応じるが、それが無ければそのまま風音荘へと向かうことに*なる*]
大体、アレが関わってるとして。
俺がその、何を忘れてるってんだよ。
[それがわからないから、不機嫌さは増す]
そも、忘れるような事、ねーはず……だし。
[ない。
ないはずだ、と。
紡ぐ言葉は、どこか自分に言い聞かせるよう]
…………。
[しばし、神社を睨むように見て。
それから、もう一度、ふる、と首を横に振る]
……ここにいても、仕方ねぇ、かな。
[振り切るように呟いて、石段を降りてゆく。
目指すのは、当初の目的地である駅前広場。**]
愛が無いなぁ。
[呟きを聞いて、返しながらケラケラと笑った。さらっと切り上げられたことには深く突っ込まず、力については同意の言葉を向ける]
そんな感じだったな。
…俺達がこの状態なんだから、他にも何かされた奴が居てもおかしくはないよな。
直接聞いてみんのが良いかも。
なぁ祐樹、その子どこ行くとか聞いたか?
[もし目的地が分かるようだったら、そっちの方へと向かってみる*つもり*]
― 駅 ―
電子音より、楽しかったな。
[懐かしい改札を、さっき見送った備瀬の背中が走り抜けていった。妙な笑い声と一緒に遠ざかって、途中で掻き消える]
……なんだ、今のは。
[風音荘に向かったはずの備瀬がここにいるわけない。
首を捻っていると、建物内のはずなのに、さやさやと風が吹いて囁いた]
「ごめんね、ごめんね、まきこんで」
[風は、そう言っているように聞こえた]
備瀬さんは巻き込まれただけ、だったのか?
[無人の有人改札で呟いたが、風からの答えは戻ってこなかった**]
俺は、愛の安売りはしないのー。
[笑う声には笑って返す。
こうして交わす軽口が、神社で感じた苛立ちを多少なリとも鎮めてくれていた]
ん、それがいいかも。
……そーいやあの子、ここに引き込まれた後、しばらく具合悪そうだったんだよな……そこらもなんか、関わりあるかも知れん。
[引き込まれた後の状態も告げておく。
状況的に、個人差もでそうな所だが、それが異変に関わる、とは思っていなかったのだが]
行く先……帰る、って言ってたから……ああ、風音荘に下宿してるらしいから、そっちで会えるんじゃないか?
でなきゃ、駅前広場……さっき、海近くで集まってた連中で、後で広場で、って話しになってたから。
[行く先を問われると、先の話を思い出してこう告げた。**]
― →風音荘―
〜♪
[片耳にさしたイヤホンから繰り返し流れる音楽。
いつしか覚えてしまったメロディが鼻歌となって、無意識に零れていた。
そう何度も聴いていれば飽きてしまいそうなものだが、柔らかな音色と優しい声は不思議とそのまま聴いていられた]
…… あ。いた。
[そのうちに見えてきた風音荘の入り口。
探していた先輩の姿を見つけて、小走りになる]
[通学路を通り、娘が通っていた小学校へ。その途中、誰かに出会ったかもしれない。]
そう、そういえば、耐震工事があったのは、もうちょと後だったわね・・・
[敷地外から、コンクリート製の3階建ての建物を見上げる。]
みーちゃんは・・・
[まだ授業中だろうか。思いながら校門から一歩くぐったその瞬間]
―っ!
[いきなり、目の前に情景が広がる。
いくつか建っている簡易テント、トラックをぐるりと取り囲んで縄がはられ、その外側には様々な色や模様のビニールシートと、その上に座ったり立ったりしている人、人、人。そのほぼすべての視線が、トラックの中に注がれている。
トラックの中では、体操服姿の子供たちがリレーを行っていて、辺りに応援の声が響いている。]
・・・運動会・・・
[そう。確か、自分たちの子供のころには10月に行われていたその行事が、ここでは5月に行われていて、それを新鮮に、奇妙に思ったものだった。]
「みーちゃん!いけー!がんばれ!」
[唐突に。周りの喧騒の中から、「自分」の声が浮き上がる。
他の人や景色が微妙にセピア色がかっている中、背伸びをして手のひらサイズのカメラを構える自分と、その周囲だけが現実味のある、鮮やかな色彩を放っている。
と、]
「持とうか?俺の方が身長あるし。」
[紙の袋を持った男性が一人、近づいてくる。]
「結構よ。みーちゃんの姿は、私が残しておきたいの。」
[「自分」はそちらを見ようともせず、すげなく断る。
「やったー!」
トラックの中、同じように一人だけ色彩の鮮やかな、小学生の「娘」が一人を抜き去り、次の人にバトンを渡した。]
「お。さすが、みーちゃん。運動神経の良さは、母親譲り?」
[断られ、少し寂しそうな顔をした男性は、ビニールシートの外から、トラックを見ながら言う。]
「そうね。あの人は運動はからっきしだったから。で、なに?」
[用事が済んだのなら、早く帰って。そういう空気を隠すことなく、振り返らず告げる。]
「いや、頑張ってるみーちゃんにって、買ってきたんだ。よかったら、食べて。」
[そういって紙袋を差し出される。「自分」はそこでようやく振り返って受け取り、]
「雷電堂の柏餅じゃない!
ありがとう。昨日買いに行こうとしたんだけど、売りきれちゃってたのよねー。」
[いくら?財布を出しながら、尋ねる。が、]
「いや。お金はいいよ。本当に。それより、これが俺からって、みーちゃんには言わないでいてくれたら嬉しい。俺からって知ったら、みーちゃん食べてくれないから・・・」
[情けなく笑い、「じゃあ」と手を挙げて去ってゆく。]
「あ・・・」
[物言いたげに、しかし引き留めずただ見送る自分、そして、]
あー・・・相変わらず、控えめで後ろ向き過ぎるんだよなー・・・
[二人の様子を見ながらつぶやいて、そして、ふとトラックの方に視線を転じて、]
―!!!
[こちらの方に射るような視線を向ける「娘」の姿をとらえた。
しかし、過去の「自分」は、去ってゆく「彼」の方しか見ておらず、気付いていない。]
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