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…箔源君は、音楽をやっているのか?
[彼が担ぐ大きな荷物。
形から楽器であることは想像がついた。
探し歩く合間に問いを一つ投げかける]
[探すものは無いと言う箔源。
今、「夢」を追っているのなら、確かに『たからもの』はそこにあるのだろう]
[けれど]
[兎がそんな人をここへ呼び寄せるだろうか、と言う疑問もあった。
男は自分を、兎と似たような存在、と称したが、思考がそちら寄りになっていると気付き、内心自嘲を零す**]
[高校に入ってから始めた音楽活動は、学生時代は仲間が一緒だったから良かったけれど。
進路決定の頃から仲間たちと噛み合わなくなり、結局、その頃のメンバーはばらばらになって、今は連絡も取っていない。
馴染みのライブハウスにも気の合う連中はいるけれど、いまいち波長が合わなく思えて。
ルームシェアをしている、同じ店の常連から誘われても、たまに助っ人入りする程度だった。
そんな状況だから、駅前で一人で歌うのが常で。
そんな生き方が実家にどう思われているかは──あんまり、考えていない]
…………。
[ふる、と首を振る。
随原の問いかけから動きかけた何か、それを押し止めようとするように、ココロの中の雪色が強くなる]
……あ。
[そうやって、どれだけ歩いたか。
雪の帳の向こう、公園らしき場所に何か違う色が見えた気がして]
もしかして、あそこにいたり?
[そんな呟きと共に、そちらへ向けて足を早めた。**]
[大学時代ではボランティアで捨て犬や捨て猫を引き取る団体の手伝いをした。
そこで見たのは捨てられた動物達の現状や団体の経営的な内情。
一度は飼われた動物であるため、人懐っこい仔らもいたのだが、中には人と触れ合うのを恐れる仔も居た。
そんな仔達は中でも手がかかり、リハビリもままならないこともしばしば。
里親に貰われていく仔が居る中、そのような仔達は当然残り、団体が請け負うコストは嵩んでいく。
男が目指したものは、生半可な気持ちで出来るものではなかった]
[大学を出て、「夢」を実現させるための資金を得るために先ずは働き始めた。
今経営している店もそのためのはずだったのだが……]
[いつしか経営維持が主眼となってしまい、「夢」まで考えられなくなっていた。
目の前のことに集中してしまう性格的なものもあった]
…「夢」は。
行動するための動力源ではあるが、それを掴むまでの道は簡単なものではない。
辛いことも、壁にぶつかることも、ある。
現実では、それが当たり前とも言える。
だが……
それを、乗り越えられた時。
少しずつ、「夢」に近付いていけるのだと、思う。
[現実を見据えるような言い方。
けれど、今までの男ならば、人に対してこのようなことを言うことは無かったはずだ。
それを口にしたのは、自身が抱く「夢」を、『たからもの』を思い出したが故]
君は、「夢」を追いかけている間は。
辛いことばかりだったか?
[そうは思わない、と男は言うように問いを重ね。
意識を児童公園に滲む色へと移す]
[真っ先に七咲に駆け寄ったのは冬木。
全力疾走で男達よりも早く七咲の傍に寄り、位置を示すように大きく手を振っていた。
モミジ、と名で呼ぶ声はとにかく必死だ]
七咲さん。
[男も箔源の後に続き七咲へと近付いて、軽く頬を叩いてみる。
反応はあるだろうか。
あったにせよ、到底動けそうには見えない]
箔源君、屋根のある場所を。
[探して欲しいと言う意味で言い、男は七咲に積もる雪を手の甲で払い、冬木の上着ごと七咲を抱えあげようとする*]
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