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―…しかし彼の記憶には混乱がある。
>>1:89私は早々に『鑑定』に掛けられ、人であると判断されたんだ…。
今思えば、久方ぶりに帰って来た息子が実は人外に変化していた、とかいう事態は拙いと。
何とか父が策を巡らせた結果のような気がするが。
だからこそ、ハーヴェイに宣告する羽目になったり、葬儀の手配に駆け回ることになったのだから…。
[がたん!と、
コーネリアスが戸棚にぶつかる音を聞き]
……
そうやって。罪だと背負ってる時点でね。
…、 書生さんは、…優しいおひとですね。
そして私と、ギルと、ユージーン。
ごく短期間、共に旅した男と。
長い付き合いとはいえ、内心の伺えない男。
私はどちらを信じたのだろう?
いや、待て。
結果は3人とも死―だ。
>>3:69 ギルが言っていたように、生者がここに紛れ込んでいるのでない限り。
と、すれば死にゆく瞬間、私か、残りの人間が、相討ちにまで持ち込んだようだ…。
しかし、いずれにせよ、村は…。
つまり私は、失敗した…。
[幸いまだ死の瞬間の記憶は蘇って来ない。
...は厨房の床にへたりこんだまま、呼吸を整えている。]**
……
[かくり、と、首を横に傾ぎ]
かみさまってのは…、裁くためじゃァなく、
許すためにいらっしゃるんだ──、と、
牧師さんは、…おれに、
むかし、教えてくださいましたが。
[気のない声で、男は、そんなことを言い]
…まあ。獣のおれには、
…かみさまのお許しなんてのは。
あんまり…、意味のないことではありましたけれど。
許されるのか、どうだなのか、
… 試してみたって、いいと思いますけどね。
[まあ。それを望むんでしたら。と、
最終的な選択については、男は放り]
…、ユージイン?
[がたりと音がする。
けれど今は、そちらを向くことはせずに、
やはり少し呼びにくそうに、墓守の名を呼んだ。]
…… かみさま。
[ぼんやりと、口にする。
かつて、年上の彼らの後をついて教会に遊びに行った。
裁くだの、赦すだの、そんなこと、
…縁も理解も、何もなかった頃の話。]
……………。
[続く話には、頷くことはせず、
──けれど、すぐに首を振ることもせず、
考え込むような沈黙が、じっと返った。]
──…、
[自らの思考に沈んで、少しの時間沈黙する。
放られた結論に目を上げ、僅かに笑みを浮かべた。
常の嘲笑とは、異なる笑みを。]
──… きみだって、充分にやさしいじゃないか。
[自覚のなさそうな、世話焼きの”獣”へと笑う。]
うん。
… きみの、しあわせ。
[かくりと首を傾ぐ男へ視線を向けて、漸く瞳を覗き込む。
そうして、小さく頷いた。]
── コーネリアスを殺すことが、”しあわせ”なのかい?
[厨房の床にへたり込んだ男の上に
猫背の男は腰をかがめ]
どうも…
[ぼそり。と陰気な声が、]
…おれは、あんたを、
── 埋葬したかったみたいです。
[ぼっちゃん。と、温度の感じられない、死人じみた声が、コーネリアスの耳に囁いた**]
[表の名前を呼ばれてから少し、
考えるような間が、返事をするまでに空いて]
むかしは、あんたが、
… おちびさんでしたからね。
[ぽつり。と、幼かった少年の事を思い出しでもしたか。
男はふと、そんなことを呟いた。]
[男は教会の使用人の様なものだったから。
──あるいは、本人がそうだ、と認識しているように、
ほとんど遊びの輪にも説法の輪にも加わらず、
穴ばかり掘って、いつも泥の匂いをさせているような男だったから、相手にどういう印象で残っているのかはわからない。]
… …陽さんが来たときのことは、
まだ、思い出せますね。
[──同族の勘か。もしかすれば、相手に自覚がないうちから。ひとりで人の群れにまぎれてきた獣は、子どもの血を嗅ぎつけて]
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