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[頭巾を剥ぎ取ってみると、それは果たして食堂車で乾杯し合った少女その人。
怯える瞳に画商が映る。
顔立ちも、髪の色も、丸で違うが。
同じ年頃に、追憶の中の少女が重なり、ところどころ煤けたその顔に、ふと眼差しが柔らかくなる。]
まてまてまて![逃げ出そうと、もがく体を更に力を込めて抱きすくめる。]
乱暴はせんよ!ふむ、先ほど占いのマドモアゼルには振られてしまったようだからな。
どうかな、君はわしと協力せんかね?**
これは…。
[二段ベッドの上にあれやこれやとぶちまけられた荷物をみて、思わず溜息。]
本人が散らかしたのか、
賊が侵入して荒らしたのか、わからないじゃない。
[大げさに肩を竦めながら、
ベッドの上を覗き込んでガサゴソと。]
あら…?
[彼の左腕にあった青い兎とお揃いの桃色兎が、
手荷物の中からこんにちは。]
こんなところで、かくれんぼ?
[ちょんと兎をつついて、]
お友達は行ってしまったわよ。…寂しいわね?
[そう声をかけながら、兎と共に部屋を後にした。]
―三等客車―
[何かの影が車窓に過った様な気がした――。
窓を開けると肩に掛けていた黒い薄いショールが、女の肩からフワリと浮き上がり、後方へと飛び去っていく。
それは何かを暗示する様に――。]
あら、残念。
[もう見えなくなったショールの行き先に目をやり、小さく呟く。
そして席に座ると、返して貰ったカードを元に戻そうとすると、一番上にあるカードは、
――『LA PENDU-吊られた男-』
その表情は無念そうに見える。]
さて、星の道筋はこれをどう読めと言うのかしら。
[協力者から得た貨車の話と共に様々な道筋に思いを巡らせる。]
それにしても私もそろそろ動かないと―…‥
[そう呟くと、廊下の粗末な更衣室代わりの一角で、身支度を整える。
一見変わらないが、何かがあった時は身軽に動ける様に、脱ぎ去り易い上着に着替えて、スカート下のガーターには香と薬をを入れているピルケースを忍ばせる。
最後に右手の薬指に意匠の凝らした金の指輪。]
これで服装はいいわね。
さて仕上げは―…‥
[化粧道具を取りあげて、ゆっくりと白粉を塗り、頬紅をつける。
少し迷った様に指先を動かして、仕上げとばかりに深い緑色のシャドウと紅を、そして最後に媚薬の入った甘い薔薇の香水を少し腕に垂らす。
―そこに居るのは神秘的な占い師では無く、一人の女。
そうして、占いの道具を携えて、優雅に一等客車の方へと向かう。]
秘宝を手に入れるまでは、この私は夢の私。
夢の中で兎の夢を見ていた坊やは、本当の自分を見つけたのかしら?
夢か、現か、幻か――。
貴方の運命の糸を手繰る為に、夢を渡りましょう。
そう言った事もあった―…‥。
でもそれは偽り事。
私はいつも偽わるわ。
私が知りえる事は、いつも人づて―…‥
だから今回は、私の手で掴みたいの。
―何かを。
[連結部分に立っている女の独り言は、屋外の風の音にかき消される。]
[サロンを抜け、そのままゆっくりと不自然にならないように歩みを続ける。]
何も使わずに、秘宝を見つければ―…‥
――いいのに。
[元来、香も薬も、そしてカードも使いたくはない。
本来の目的以外で使えば自分が不愉快になるだけだから――。]
[なんだか騒がしい。耳を澄ませば衛兵の声が聞こえる]
「閣下がつかまった!」
「ロマネス家の財宝と交換だ!財宝をさがせ……」
……ふぅん?探せってことは……此処にはないのか?
[とりあえず、今廊下から戻るのは難しそうだ。けれどここにいたら探しに来ることは確実である。とりあえずつかまるのは避けたい]
うーん。列車でやるのは初めてだなあ……
[窓を開けて列車の外側を見る。]
お。あれなら……
[屋根に近い部分に少し出っ張った箇所を見つけた。]
よっ……と
[コートの袖口から何かが延びて飾りにくるりと引っかかった。]
一人くらいならワイヤーとフックの方は大丈夫だけど。
飾りの方が心配だな。壊れるなよ……
[何度か引っ張って確認すると、壁を歩いて連結部にとす、と下りる。と、バキリと背後で嫌な音がして、飾りが折れて落下していった]
うわちゃー……あぶないあぶない。
[するするとワイヤーを回収すると伸びをする。一度道具を取りに戻ろうと2等車に急ぐ]
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