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―― 二階 ――
[割れた瓶の口の部分を、ごん、と扉にぶつける。
軽く二度。間をあけて、もう一度。]
この中に一匹、人狼がいます。
ドリーを食べちゃった人狼です。
[絵本を読むような口調で言って、扉から一歩距離を置いた。]
[確証。誰が出せるのかもわからない、それ。
女はひとつ、息を吐くと、二階へ目を向ける]
……取りあえず、もうしばらくはここで大人しくしてるさ。
んじゃ、アタシは今の話をあの子らに伝えてくるよ。
[じゃあね、と言いつつ、ひらり、手を振って歩き出す。
リボンと耳飾が、ゆれた]
[わからない、と繰り返すペッカに、へら、と情けない笑みを浮かべる。]
それじゃあ……俺にもわからないなあ……
[凝と見てくる幼馴染の視線に、僅かに瞳をそらし。
――ごとり、と言う音のあとに響いた声に、小さく息を呑んだ。]
――ペッカ……
[一人、といわれて僅かにためらう。
幼馴染の名を呼んでも、続く言葉は何も浮かばず。
扉のところで止まる足音。
そして続く音と言葉に、ぴたり、と動きを止めた]
アイノ……
[アイノの声に、昨日からのやり取りが意味していたことを察して、低く唸る。
逃げ場はない。
目の前には傷つけたくない幼馴染。
扉の向こうに居るのは傷つけるつもりはなかった少女――けれど、厄介なことになるのなら、食べようとも思っていた、少女。
どうすればいいのかと、ひたすらに思考を回転させた。]
[扉の向こうで聞こえる会話にわずかに眉を寄せる。
はぁ、と小さく息をついて。]
扉はあいてる、入りたいなら入ってくれば。
[冷たくも響く声で告げながら、目の前の幼馴染に僅かに苦笑を向けた。]
悪いな……
[幼馴染ではなくアイノがそうだったのかと独り言ちながら扉と幼馴染の間に立つ。]
わかンねェと言や、――コイツもわかンねェ。
[扉の外から聞こえた音と声。
ペッカは、アイノの妙に抑揚のついた語調に言ち。
少し声を常より大きなものにして返答をする。]
… 此処に居ンのァ、俺とビーだぜ。
[絵本の中の人狼じゃない。そう念を押す響き。]
ウルスラ姐も居ンのか?
[扉をけり開けられて、瞳を瞬かせる。]
乱暴だなあ、アイノ。
そんなんじゃ嫁の貰い手がなくなるぞ。
[物騒なもんまでもって、と軽口のように告げながら、少女を凝と見やる。]
最初に訊きましょうか。
どうしてベルンは夜のうちに逃げなかったの?
[武器代わりの瓶を隠しもせずに、廊下から声を張った。]
……過激だねぇ。
[扉を蹴り開けるアイノの様子に、小さく呟いて。
ベルンハードへ向ける問いに目を細める。
すぐに何か事を起こす気はないが。
何かあれば動くつもりで、やり取りを見つめた]
どーしてって……此処が俺の生きる場所だし。
逃げ出してどーなんの?
[それをいうならアイノだって逃げなかったじゃないか、と指摘しながら、顔を赤らめた少女の怒鳴り声にう、と胸を押さえる。]
人の気持ちなんか口に出されなきゃわかるはずないだろ!
[逆切れた。]
…できねーな。のんびり。
[素っ気無い物言いは、含む万感を潜ませる。
苦笑と共にベルンハードから告げられる詫びに、
ペッカは幾分遣る瀬なげにも、ひひとわらう。]
おう。聴いとく…
[ぐしゃり――陽に灼けて縮れた髪といっしょに
掴んだタオルが、ペッカの頭からはらと解けた。]
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