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[わからないけれど、その噂を信じる者がいるのならば、自分のとる行動は変わらない]
何を今更、ですよね。すみません、忘れてください。
[書き付けた楽譜を折りたたんで、散乱した荷物の、もう一匹いる兎のぬいぐるみの中に押し込む。
これに一番最初に気づくのは、そして読めるのは、会話の相手だと思うから、の行為]
―三等客車―
[妨げられた眠りを取り戻す為に、鞄の中からショールを取り出し、再び規則だ正しい汽車の揺れに身を任せる。
――カタリ
鞄の中のタローカードの箱が開く音で、目を覚ます。]
しっかり閉めて無かったのね。
[そう言いながら、最初に拾ったカードは、予備の白紙のカード。]
白紙のカードが何故?
[思い立った様に、タローカードの枚数を確認すると1枚足りず。
少し戸惑った様な表情を浮かべる。]
『LA ROUE DE FORTUNE -運命の輪-』が足りない―…‥
[書いたのは、「アナスターシェ」に連絡をとるための方法。仲間内で特定の相手を呼び出すための、コード。
解読して、相手が驚くかは、知らない。し、そもそも、この「合図」が本当かどうかもわからないけれど。
もし、自分に何かあったときは。一番に見つけてくれるのが、この話し相手であればよい、そう思っての、行為]
え?私は…。
[不意に、この仕事を請けおった理由を聞かれて、 少し戸惑った。]
そうね、興味、なくはないわね。
[言いよどんでいる内に、忘れてと言われて、首を傾げた。]
食堂車できいた感じだと、噂は流れているみたいね。
どれだけの輩が動いているかは分からないけれど。
[昨日話した中にも、混ざっていたのだろうか?]
[書き付けた楽譜、仲間であればわかる場所へとしまい込み。代わりに、投げっぱなしだった細身の剣をベルトに吊す]
一番に排除すべきは、あの人、ですか。
[マトリョーシカを上着のポケットへ入れて]
さて、行きましょう、ヤナーチェク。
[青い兎の背を撫でて、中身の感触を確かめると客室をでる]
[一等4号車両の開きっぱなしの扉から、隣室の記者もこちらへとやって来る気配がする。
4号コンパートメントの扉の下に覗くのは、一枚のカード。]
『LA ROUE DE FORTUNE』…。
[母国語であるがため、何の苦もなくその文字は読める。
のみならず、それは読まれるためそうされたかのように、カードの下をこちらに向けて扉に挟まっている。
手を伸ばし、カードを取るとはずみで扉がギイと開いた。
中は―無人。手荷物すら見当たらない。]
また食堂車にでも行こうかしら。
[そう呟きつつ、廊下へと出ようとした。
すると、向こうからラウリが歩いてくるのがみえ、
そのまま待つ形になったか。]
ねぇ、あなた…。
[近づいてきたラウリの肩にそっと手を伸ばした。]
うむ―…、確かここは「G・B」が乗り込んだ車両のはず。出立時の、花形役者らしい騒動は遠目にもよくよく見えたからな。
そしてこのカードは。
[しばし眉根を寄せて考え込む顔付きになるが、突如ぱっと、いつもの暢気な表情に戻る。]
そうか。G・Bがあの女性に占ってもらったと見えますな。
むむ、そしてG・Bはペルミで下車してしまったのか。
いささか勿体無い気がするが、オペラとバレエの魔力に抗えなかったとみえる。
―三等客車→サロン―
[無くなったカードは街中であれば、手に入れる事は容易いが――、
――ここは生憎列車の中。
少し顔を曇らせるとゆっくりとサロンの方へと踵を返し。]
全く、星回りが良くないわ。
香の次は、カードまでも無くすなんて―…‥、
まだ秘宝についてロクな情報を手に入れていないのに。
[後続の貨物列車の協力者から、まだ連絡は来ていない事と同時に起こる思いもよらない事に少し爪を齧る。]
ふむ、以外にも早く、あのマドモアゼルに占ってもらう機会が来たようですて。
確か三等の乗客だと言っておりましたな?[と、記者に確認し]
これを返しがてら行ってきますよ。いやいや、大した手間じゃない。
[記者が何事か言いかければ、笑って手をあげて制し、または受諾の合図とし、ぶらぶらと来た道を引き返す。
途中向こうから走ってきた衛兵に突き飛ばされて、「ほら、無粋でしょう」と顔をしかめて、記者にいつぞやの返答をする。]
―三等車両―
[ぶらぶらと、謎めいた未亡人の、自身の、指揮者の客室の脇を通り過ぎ、これまで足を踏み入れた事のなかった列車の後半部分へと抜ける。
6人部屋の三等車両は、どっと乗客の数も増え、また地元の労働者と見られる層もそこここに見られるようになり、あちらこちらで火を使わぬ簡素な食事を拵えていたり、バラライカに合わせて歌う姿が見られ、活気がある。]
[人波を掻き分け進みつつ、一つ一つのコンパートメントを覗き込む。
その独特の雰囲気ゆえか、周囲に漂うエキゾチックな香りのせいか、意外とあっさり目指す相手は見つかった。]
ボン・ソワール、マドモアゼル。
いつぞやのお言葉に甘えて、訪ねて参りましたぞ。
一つ聞きたい事があるのだが―、これ、このカード。
こうして、文字が読める向きに扉に挟まり落ちておったのだが、これは正位置と取るのが良いのか、それとも逆位置なのだろうかね?
[と、拾ったタローをかざして見せる。]
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