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[どれ程の時間、そうしていたか。
時の経過と共に、少しづつ落ち着いてきたのか瞳をカーディガンの袖で拭ってふらふらと立ち上がった。]
しっかりしなきゃ…
大丈夫、だって、お父さんが迎えに来ないんだもの…
[大丈夫、大丈夫と自分に言い聞かせるように何度も反芻しながらとぼとぼと、歩き始めた。**]
─ 駅前公園 ─
[この場を後にする随原と六花には頭を下げて見送って。]
あたしも。
いかなくちゃ。
[小さく呟くと立ち上がり、和馬とヂグが公園に残っているなら行ってきますと頭を下げ。
思い浮かぶ場所へと足を向けた。]
─ 駅前公園→ ─
[駅前公園から海岸通りをゆき、刻へと向かう。道中歩調を合わせてくれることに気付けば礼を言いながら。
目的の場所に着くまでの間、きっと言葉は少なかった。
やがて、涼やかな音色響かせ、「刻」の扉が開く。]
― ギャラリー「刻」 ―
お邪魔しまー…す。
[外装をしげしげと見上げてから、どこか他人行儀な挨拶と共に、省吾の後に付いてそろり、足を踏み入れた。]
…、うん。
そうですね。少し、狭いかな。
[内装をぐるりと見回して、素直に頷く。
言う通り狭く感じるのは、衝立のためもあるのだろうか。]
[道すがら、周囲の景色は不思議な速さで流れていく。
そうだ、忘れていた。
この街にきていたのは、夏だけじゃない。
あたしは、私は、この街に住んでいた。
10年前の、あの日まで。]
“現在”と似ているのに、何処か違う……空気だとか、後は、香りも。
でも わたしの記憶にある何処かと、此処は似てます。
……何か気になる感じ。
[不思議な感覚に囚われる。
確かにここは、自分の知る「刻」ではないのだけれど。
記憶の隅を刺激する何かが、此処にある。]
あ、っ…… はい。
行ってらっしゃい。
[断りを入れて店の奥に入ってゆく省吾へと声を掛けたところで、ふと、視線が窓辺のテーブルへと吸い寄せられ。
上に置かれたものに気付くや否や、息を呑んで其処に駆け寄った。]
[そっと、指先が茶封筒をなぞる。
見慣れた形、見慣れた色、指慣れた厚み―――そして]
………父さん。
[楠見時哉。
見慣れた文字と名とが、其処に記されていた。]
[煙草一本綺麗に吸い終わるまで、その場でぼんやりとしていたのだが]
……そーいや、こっち、あいつらいるんだよな。
[先に飛ばされた者たちの事を思い出し、ぽそり、と呟く]
一人でうだうだしてても仕方ねぇし……ちょっと、探してみる、か。
[吸殻は、携帯灰皿にぽい、と放り込む。
ここがどんな空間で、自分がどうなっているかは良く理解できていないが。
ポイ捨てだけは絶対しない、が信条だった]
[父親の写真は、両親の死後殆どを引き取った。狭いアパートの収納の関係で処分せざるを得なかったものも、データ化して残してある。しかし、封筒に収められていた写真はそこには無いもの。
……否、手元には残っていないが、確かに昔、何処かで見たことのある作品たち。]
来てた、みたい。
何処か、じゃなくて、此処に。
[省吾のワスレモノ探しの邪魔にならないように、と、囁くように呟いて。
写真を一枚一枚胸元に掲げ持ち、展示場所の壁にあてがってみた。
空の写真は此処。異国の街並みと少年達の写真は此処。田舎街の風景は……そう、こちらの向きに展示されていたはず。]
[全てを配置し終え、床に座り込んで息を吐く。
封筒の中には一枚だけ展示場所の分からない写真があったのだが、それはその筈。作品でも何でもない、小さなスナップ写真だったから。
“海の写真コンクール 【中学生の部】”と書かれた垂れ幕を背に、表彰状を持ってピースを作る制服の自分と、母親と―――]
……… 馬鹿ねえ。
こんなの間違って「作品です」なんて見せたりしたら、
ただの、親馬鹿 だよ。
[くす、くすと忍び笑いを漏らす。
同時に、ぱたりと、室内に降るはずの無い雨が落ちた。]
[この写真を撮った時、自分は何と言っただろうか。
両親は何と返してくれただろうか。
多分きっとそれこそが、自分の心の忘れ物なのだろう。]
間違って紛れ込んだんだろうけど… もう。
…わたしのうっかりはどうみたって父さん譲りじゃない。
[じと目で封筒を睨む時には、目元はもう乾いていて。
立ち上がって、壁に立てかけた写真を集め直すと、
元在ったように、丁寧に茶封筒に戻した。]
[商店街の入口。
小さな子供が、騒いでる。]
『わたしね、きょうハンバーグたべたい!』
『ずるいぞ、今日のおかずはおれのすきなのってヤクソクだろ!』
『こら、お前らこんなとこでケンカするなよ。』
[頭一つ分背の高い男の子が、小さな男の子と小さな女の子のケンカを諌めている。
それを微笑ましそうに見ている一人の女性に、ケンカに負けた小さな女の子がかけよりしがみつく。]
『おかーさん、たけにぃがたたいた!』
『あ、こら、おかーさんにチクんなよ!』
『チクるも何も、お母さんの目の前だし。』
[女性のスカートをぎゅっと握って、ぽろぽろ泣きながら訴える女の子と、それぞれ対照的な男の子。
女性はそれぞれの顔を見てから、自分にしがみつく小さな子の涙を拭いて笑いかけた。]
『ほら、泣かないの。
いくつになっても泣き虫さんね、菊子は。』
[あの女性が、菊子と呼んだ小さな子を見つめる。
あぁ、そうだ。
あれは小さな、小さな私。
二人の兄、それと。]
おかあ、さん。
[記憶から、抜け落ちていた人。]
[誰かを探し歩いてはいたものの、気分は暗くて足元を眺めながら歩いてしまって。]
は、はいっ!
[自分の名を急に呼ばれ、びくりと身体を身体を震わせて声の主を探した。]
…祐ちゃん?
[駆け寄ってくる見慣れた馴染みの姿に、今度は安堵の涙を浮かべて。]
……よかったぁ。
[またへたんと座り込んでしまった。]
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