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エビコさん…?
[困ったような、縋るような目で見上げて]
アンさんは?ねえ。
[もう薬屋の声はなんとなく届く場所にある。もう一度振り返ればアンの姿も確認することが出来るだろう。脇をヌイが通り過ぎる。きゅっと唇をかむと顔を伏せた]
[男達の断片的な会話と、ライデンの表情、そしてアン自身の様子が、すでに彼女が息絶えていることを物語る。
申し訳なさげに息を吐いた]
いらないですか。
[手中の毛布に視線を落とした]
『ヌイ、あなた知らなかったの?』
[聞こえてくる落ち着いた声に対して、何がですか?と問う]
『何がって、目の前のソレはあたし達がやったってことを、よ』
[部屋を一人出かけだし、わたしは居間の囲炉裏に当たりながら一冊の本を貪るように読み続けていた。
その本は【――村の記録 伝統と伝承】]
何か…さくらが狂い咲いた手掛かりが…無いの?
[ページを捲る手がもどかしい。それは震えている所為。寒さではなく、熱の所為でもなく――]
[ロッカの縋るような視線に、逃げるように奥へ来てしまった。確かに隠しておけるような事ではないのだ。だけれど]
……。
[一番怖いのは自分ではないのだろうか。何て情けないのだろう。そう思いながら部屋を*片付けている*]
はっ・・・
どうも僕は誰かに命を狙われているようだ・・・
毎日どうしてベッドに自分の血が付いているんだろう
[不気味な雰囲気を漂わせた室内を見て、たるんだ気が一瞬にして引き締まった]
何があったんだい?
[息を弾ませるヌイを複雑な表情で出迎え、毛布を受け取るとアンの身体にかけようとする。感じたノギの視線に、心中を察し小さく感謝の会釈。ホズミの姿を見れば、アンに視線を送り]
管理人さんが、亡くなりました
[ただ事実のみを告げる]
[薬屋とすれ違いそこに抱かれた少女を確認し状況を悟った]
そう...見つかったんだ......
[....にはそれ以上言葉が出なかった]
[後を追って管理棟へと戻る。
いつの間にか人の数が増えていたが、ろくに挨拶も出来ぬまま]
[冬樹の“管理人さんが、亡くなりました”という声が、頭の中で繰り返される]
いつ、なぜ――。
一つめのたましい?
[ライデンの呟きが聞こえ、アンの元へと一歩近づいた]
[部屋を片付けにいくと言って、繋いだ手がするりと抜ける。立ち尽くしたまま乃木とエビコが奥へといくのを見送った。アンの亡骸が薬屋と共に脇を通った]
ひとつめのたましい。
[夢で聞いた言葉をぽつりと吐き出す。それが、アンの体に刻まれているとは*知らずに*]
『知らないはずがない』
[分析するような、老人の声がする]
[すれ違いざま、ヌイは少女へと視線を向けた。
ほんの少し目を細めることで、挨拶の意を表した]
[騒がしさに出て行くヨシアキくんに、わたしも遅れながら後を付いていく。
と、そこで見かけたもの。それは薬屋さんに担がれるように運ばれる白い肢体。
そして聞こえて来たフユキさんの声に、わたしは思わずヨシアキくんの制服の裾を握ったかも知れない。]
――うそ…でしょ…。
[その一言を唇は紡いで]
どうか、安らかに眠って欲しい
[管理棟の北の部屋、少女の亡骸に手を合わせ、しばし自分の無力さを呪う]
一つめのたましい?
[薬屋のつぶやきが聞こえて目を瞬く。何か聞き覚えのあるような言葉。居間で読んだ本に載っていたのかもしれないと思った]
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