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[揺り椅子に座ったまま。
虚ろな表情のクレストがソファで苦悩する様を眺める。
口のきけぬ彼は、票を集めていた。
それがどういう意味か――]
……お前さんも、疑われておるなぁ。
[その名を記しておいて、しれっとそんな声を、かけた。
筆記用具をもたぬ彼の返事は期待せぬままに]
…処刑、も。
何ならわたくしがしましたのに。
ヴァルテリ様、お疲れじゃありませんか?
[洗われた果物ナイフから薄い血の匂いを感じて目を細める]
[誰も投票しなければ面白いというレイヨの言葉には、なにも返さなかった。
たった一票とはいえ、入っていたことが不思議ではある。
イェンニから届く声に、ゆるりと瞬き]
なに……たまたま、アイノがきたからの……
疲れは、せぬが。
折角の娘であれば、食べたかったがいたしかたあるまいて。
[ちらりと舐めた血の味を思い返し、吐息を零す]
[どれほどの時が過ぎたあとだろう。
頭を撫でる誰かの手の感触>>65に、ぼんやりと顔を上げる。
靄がかかったような頭には、切れ切れに周囲の言葉が残っていた]
かわいそう……、 …?
[誰が。マティアスが?
聞こえた言葉>>55を鸚鵡返しに繰り返して、立ち上がる。
涙に崩れた顔をそのままに、
夢遊病者の如くにゆらりと調理場へと歩き始めた]
[調理場に居たのは、ニルスとイェンニか。
女はそれに構う素振りを見せず、杖をつき黙って歩く。
目指すものは、見渡すまでもなくすぐに見つかった。
流し台にある果物ナイフ>>65
少女の命奪った凶器へと真っ直ぐに歩み、それを手にする]
[湯を落としてから、棚へと手を伸ばしていると
掛けられた声に、顔を、向けた。
困った風に眉尻を下ろして、頷いた]
ひとを、殺すのですもの。
例えその相手が誰であれ―――、
ここを、無事に出たって。
引き摺ってしまいそうですから…
大義のある殺人、が、
わたくしは…おそろしいのです。
[俯く様子は殊更悲しげな音色を落とす]
娘、が。
ヴァルテリ様のお口には…
実は、わたくしが合ったり
するのでしょうか。
[聞こえた言葉に冗談めいた声を返す]
[ナイフを手にする女に、表情はない。
ただ泣き腫らした顔のまま、沈んだ顔でナイフを手に、
杖をついて居間へと向かう。
ゆっくりとした足取りで、歩む速さは常のまま]
[ヴァルテリから向けられる言葉(>>69)も、今の彼の耳には届かない。ぼんやりとした頭の中にあるのは、呪いにも似た、あの言葉(>>39)だけ]
[自分が、死なせてしまった]
[もしかしたらマティアスが死んだのだって、自分の甘い考えが招いた事なのかもしれない]
――ごめんなさい。
僕が、殺したようなものです。
[それは、声にならない唇が形作る、深い深い――謝罪の言葉]
[果たしてそれに、気づいた人はいただろうか]
でしたら、次はヴァルテリ様が。
タベタイ方を食べて下さいませ。
わたくしは、横からつまみ食いますわ。
[血の匂いににはまだ酔いそうだけれど
ふたり喰らって力が満ちてきたのか
我慢もきくようになってきた気がするから]
―回想―
[アイノの話も聞こえてはいたけれど。
その時に、何かを問い質すことはなく]
僕は居間に行きます。
[人が集まってきているなか、そんな風に居間へといく。
ヴァルテリに、通りざま、どの部屋にアイノがいるのかと尋ねはした]
[悲しげな表情は、間違いなく自らが知るイェンニのものだ。
しかし、一度疑いを抱いてしまえば簡単には拭えない。]
そうか……私は、それが君の本心であることを願ってやまないよ。
……さっき、マティアスの部屋の扉で、何をしていたか……教えてもらえるかい?
[問い掛けを発すると共に、>>73 杖をつく音が響き、ウルスラが現れる。
てっきりイェンニを手伝いにきたのかと思えば、その手が握るのは流し台の中にあった凶器で。]
ウルスラ、何を……。
[泣き腫らした顔に、手の中のナイフ。
嫌な予感がじわりと這い上がるのに咄嗟に身が動かず、居間へと向かうウルスラを制することは叶わない。]
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