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[翌朝。目覚めて身支度を済ませた後、居間で本を読んでいた。ところどころが虫や黴に蝕まれた古い書物。海の様々な生物の絵が収められた、異国のもの。
細かく姿を写し取ったそれはしかし、年月で掠れた黒のみで形作られているせいだろう、命を手放して久しい亡骸を描いたかのようにも感じられた]
……魚も、夢を見るのでしょうか?
[呟き、外に目を向ける。村は今日も暑く眩しい]
―若葉宅―
…ん?若葉ちゃん?
[体を揺さぶられる感覚で目を覚ますと、見えた姿にふと、昔の呼び方で呼ぶ。しかし、呼ばれた方はきょとんとした様子で]
あ、ごめん。双葉ちゃんか。
ははは、昔の夢を見たせいかな。間違えたみたいだ。
おはよう。起こしてくれてありがとう。
[起こしに来てくれた双葉の頭を撫でると、布団を畳んで、双葉と一緒に朝食へ]
アンさんが?
[ホズミにつられて姿を探すが、既にその場を離れてしまったようだ]
逃げられちゃった、か。妙な話だね。
栂村さんを怖がってるとか、そういう訳でもないだろうし。
何かあったのかな……。
[首を傾げるばかりで、答えは出て来ない]
何を怖がる必要があるー、よね。
あれ、私も今逃げられた形?
[思案顔]
こうしていても暑いだけよ、進もう。
カキ氷食べたくない? 氷。
そうですよねぇ。
[アンが向かったと思しき方向を見詰めてから]
氷? そりゃ食べたいですけど、仕事がまだ……
[言いながらも、見えない引力に引き寄せられるかのようにホズミの後を追う]
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やっぱり何処に行って何しようか迷子状態だよ!
[屋根の上]か[白い白馬の背中]辺りに行けるかな!
……なんていうのはともかくとして、アン死亡が発見されるのはまた翌朝でいいんだろうか。それともこのままいってだろうか。悩。
あっついなぁ。
仕事は氷を取ってから行けばいいのよ。
[暗に、運んでくれと意味をこめる。
相変わらず扇子で扇ぎながら、天然氷のありそうな方へ進む]
そうだセイジ君。
今度の生贄って誰だか知ってる?
[円卓を囲んだ食事を終えれば洗い物を済ませ、双葉は先に縦笛を嬉しそうに持ったまま学校へと向かって行った。]
そろそろ儀式のための生贄が決まる時期だね。
決める前に村長さんは必ず私のところに来るからなんとなく解るんだよね。
[これは内緒だけど、とダンケの方を向いたまま人差し指を唇の上にあてて言う。]
そうですね。
ちょっとは涼まないと、体が持ちそうにないし……。
[氷のひんやりした感触を思えば、それを運ぶくらいはお安い御用だった]
あ、生贄ですか?
そういえば、まだ聞いてなかったな。
[集会所に居た年寄り連中なら知っていたかもしれない、と]
え、誰を、って……。
[訊ねられて、困ったような顔をする]
……ネギヤさん、かな。
柔らかそうというか、脂が乗ってそうというか。
[彼の餅肌を思い出しながら答えた]
ホズミさんは、食べたい人とか居るんですか?
[机に置いて読んでいた本を閉じ、元あった場所へとしまう。それから冷たい茶を湯呑みに注ぎ、縁側へと腰掛けた。年寄り臭い。いわゆる悪ガキで有名な少年に、そうからかわれた事を思い出しつつ]
今日も、暑いですね。
……けれど、秋も遠くはないのですね。
[足元に落ちている二匹の蝉の死骸を見て、目を細めた。烏や猫やであれば不吉にも感じるだろう死骸は、夏の終わりの蝉である限りは、珍しくもなく]
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