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……ナオさん。
いえ、ナオさんだけじゃなくて、ここで会えた皆さんのことも、そうなんですけど。
相手が人でも、機械でも、自分の気持ちに変わりはない……ってことと、だから知らなくてもいい、ってことは、別……ですよね。
もし、互いにもっと親しくなりたいのなら、互いのことを、もっと知りたいと思うでしょう。知った上で尚、変わらずにありたいと願うでしょう。
いつか……こんな風に誰もが共に安らげる場所がもっと増えて……ありのままの姿で、触れ合えるようになればいいと、思います。
[嫌に決まってる―と言いながら「イヴの時間」の前で足が止まる]
―あのアンドロイド・・・
ナオは今日も来ているんだろうか?
もう1度会ったら聞きたい事があったのだ
[いつもの看板を見つめた]
私の祈りは、そのために。
幸せな時間が、長く、確かに続きますように。
ごめんなさい、変なお話をしてしまいましたね。
また……前みたいに、皆さんのお話も聞きたいものです。
あら、誰か……いらしたのでしょうか?
[カウンターの空席へちらりと視線を向け、
それから入り口を見遣った**]
(しかし俺はどのツラ下げて店に入ればいいのだろう。どうせ客にもマスターにも倫理委員会の人間だという事は、解っているだろうし)
[1度通りすぎて、止まり、戻ってくる]
(だけど、ナオとは店内で話さなければ意味がない、というのも事実)
・・・これで最後だ。
[小さく呟くと、思い切ってドアを開けた。見慣れた顔がこちらを見ている。]
良いよ?
[モミジの目をじっと見て]
アンドロイドができたのは、傷つきたくなかったからだ。
アンドロイドに心が欲しがったのは、
傷ついても良いと思ったからだ。
傷ついていいなら、アンドロイドはいらない。
人を好きになって、ぼろぼろになって、
でも君が好きだって、僕は言うよ。
[喋り疲れたのか、長々と、息を吐く]
だから僕は、友達とは、
ちゃんと人間とアンドロイドとして会うよ。
僕は誰がアンドロイドでも、付き合い方を変えたり絶対にしない。でもアンドロイドだから優しくしたりもしない。
人間のふりを上手にできるだけのロボットなら、僕はいらない。
−イヴの時間・閉店後−
[これで最後。
店内の掃除をする。
店内を見回して、微笑む。
実験的な店だったけど、ここには沢山の思い出が残った。
店まで思い出になってしまうけど、ここに店を開いて良かった]
あっ・・・・・・
[突然、足に力が入らなくなりソファに座り込む。
何だろう、急に意識が薄らいでいく。
プログラムの不正エラーが何度も鳴り響く]
そうなのね、やっと。
[予感は的中したのだ。
あの時止まった時計。最後の最後に動き始める。
CODE:EVEを自分にインストールした博士。
そして、彼に恋をしてしまった。
いつも傍にいたから。ただそれだけの事だったけど、幸せだった。
知ってる。博士には奥さんもいたしお嬢様という子供もいた。
それだけじゃなくて、CODE:EVEの1号機も悲しい結末を辿った。
停止するのに泣いてすがるアンドロイドなんて、ただの重荷だって判ってる]
[だから、仕方ないと思った。
だってアンドロイドだもの。
割り切れば、ずっと傍にいれるもの。
きっとこの切ない気持ちも、プログラムのせいなの。
・・・・・・博士の時間が止まるまでは]
[でもね、博士の時間が止まった後は何も残らなかった。
ただ、オーナー登録がお嬢様に変更されて、お嬢様の命令どおりに研究のお手伝いをして。
そこに博士の残り香はあったけど、それだけ。
だったら、一緒に・・・・・・]
願いは、叶うのね。
[アンドロイドがいう事じゃないけれど、きっとこれは神様が用意してくれた私の役目。
だから、その役目を全うしたから終わるの]
博士・・・・・・貴方は、私のことを、愛してくれていました、か?
[流れるはずの無い涙が床に落ちる。
そして、ポルテは二度と動かなくなった**]
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