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こういう村で、
叶わない約束というもののために
約束など交わしていくというのは
やっぱりとても楽しいのであります。
一生懸命考えてくれたユウキ先生には
とても感謝しているのであります。
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ダイイングメッセージ何かいたか覚えてない怖くてよみかえせないというかねむくて
ほんともうしわけない
外からみてるかけんぶつにすればよかったーーーーー
すてきなかたばっかりでさ・・うれしい うれしい
おやすみなさい
[それからわたしは、もう一本、ハイライトを取り出しました
もらったマフラーを汚さないように気をつけながら、そうっと吸います
綺麗な淡い朱色のマフラー、触るとふわふわしていてとても気持ちがいいのです
きっと、クルミさんが優しい人だから、このマフラーも優しい手触りなのでしょう]
‥‥くしゅっ
[どれほどそうしていたのでしょうか
くしゃみが出る頃には、手に持ったたばこはすっかり灰になっていました
わたしは部屋に戻ろうと思いました
なんだか人が慌ただしく動いていて、誰かが落ちたとか、何だとか、言っていましたが、
わたしには、何の事だかわかりませんでした]
[どこかで、大きな音がした気がした。
病院内で珍しい、そう思った気がする。
若者はロビーを覗いた後、自分の机の前に戻ろうと歩いている最中だった。
突然慌ただしくなるのは、いつもの事で。
急患かな、程度に思っていた。
ナースが早足でやってきて、若者に声をかけた。
曰く、患者が階段から落ちたのだと言う。]
患者はどこです?
[早足、半分走りながら状況を聞く。
車椅子の患者が、踊り場から落下。
出血、意識無し。]
輸血と、オペの準備はできてますね
[大丈夫、ここは病院だ。
処置さえ早ければ、大抵の事では大丈夫。
出血死なんてさせない。
打ちどころさえ悪くなければ。
車椅子で、大事な部分が巻き込まれていなければ。]
ご家族に連絡も
[切ったり縫ったりは、専門家だ。
それが仕事なのだから。
そう言い聞かせながら、血だまりの側に立つ。
そこに転がっていたのが、探し人の姿であった時。
少しだけ、動転したけれど。]
え…―――
[一瞬だけ、固まった。
頭の中で、いろんな単語が回る。
誰が、何故、何が、どうして、いつ、どうすれば。
いろんな言葉が巡った後、たどり着くのは結局。
助けなければ、と言う言葉であったけれど。]
止血、急いで
移動させますよ
[いつもと変わらないつもりでも。
少し声に怒気が混じるのは、焦りからか。
それとも、サンドイッチなんて食べずに部屋を訪ねていればなんていう、的外れな罪悪感からなのか。]
クルミさん、クルミさん、目をあけて
なんでもいい、意識を
[それとも、やはり。
患者に少し、情が移ってしまったからなのか。
冷静とは言い難い事は、自分でも理解できた。]
―休憩室―
[少女は本を読むのが好きだ。
特に星の本はいい。
暗い世界に輝くいくつもの点は、とてもキラキラして見えた。
だから今日もベッドで星の本を見ていたのだけれど、病室の外が何故か騒がしくて、そちらが気になって集中できなかった。
本を読む気にはなれず廊下に出ると、医師や看護師、患者まで何か慌しく焦ってる様子だった。
彼らの様子から何かがあったことは察せられても、何が起こったのか確認するのは怖くて。
人を避けるように歩いていると、休憩室まで歩いてきてしまった。
ここには漫画の本がいくつか置いてあって、内容は正直よくわからないけど暇つぶしには丁度いい。
今日は先客が居るようで、そうした時はいつもぺこりと頭を下げて挨拶をするのが自分なりの決まりだった。
だから頭を下げて、先客の前を通り過ぎて本棚の前へと行こうとした所でふと足が止まる]
…ねむってるの?
[首をかしげて、しげしげと様子を見つめる。
少女の両親よりは年上だろう。
祖父母と同じくらいだろうか、よく分からない。
起こしてあげた方がいいのだろうか、あるいは音を立ててはいけないのだろうか。
判断がつかず、おろおろと休憩室を首を振って見渡す]
[部屋で日記を書いていると、扉があきました
傷のにいさまと、さわださんが来てくれたのでした
傷のにいさまは、わたしの首にあるマフラーを見て訊ねます
そいつはどうしたんだ、って
わたしは答えます
クルミさんがくれました、って
そうして、こう続けます
にいさまは、アネモネってお花、ご存知ですか、って]
[傷のにいさまは、知っているような、知らないような、煮えきらない様子でした
きっと、お花のことは詳しくないのでしょう
さわださんが笑いながら、アネモネがどうしたのかと訊いてきます
わたしは答えました
クルミさんが好きだと言っていました、
マフラーのお礼をしたいんです。]
[傷のにいさまはわかったと言って、明日までに必ず用意してくれると約束してくれました
わたしは傷のにいさまにお礼を言って、ぎゅっと抱きしめました
傷のにいさまは大きくて、温かくて、わたしはすきです
かみさまと、ひろくんの、次に好きです
さわださんが、小さく笑いました
わたしも、つられてふふっと笑いました**]
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いちにち、ひとり
ひとりずつです、お喋りできるのは
わたしと時間が合わないから、仕方ありません
わたしがわたしの世界に引きこもっているのも、その一因でしょうけれど
最期の意識
[誰かが、私の名前を呼ぶ、声。
沈んだ闇の縁から。
とても遠くから。
暗闇は深く重く
混濁した意識の浮上を阻む。]
………、 、 。
[それでも応えるように、
瞼が微かに震え、
唇の隙間から、声にならない言葉が、
細く微かに零れた。]
[彼女の表情に、反応が見られた。
大丈夫、まだ大丈夫。
唇が、微かに動いている。
何かを言っているのかもしれないけれど、聞こえない。
だが、まだ生きている。]
クルミさん
聞いているかい
君を喜ばせる事、探してきた
喜んでくれるかは、わからないけれど
外の写真、持ってきた
[彼女の意識を、保たなければならない。
意識を失うと、体温が下がる。]
外の写真って言ってもさ
ただの、風景写真なんだ
桜並木、夏の砂浜、秋の紅葉、冬の雪景色
私が君を治すから
そしたら、その目で見に行こう
君の先も、君の足も、ちゃんと治す
だから頑張れ、階段程度に負けちゃいけない
[足は、正直絶望的だけれど。
それでも、口から出たのはそんなでまかせ。
できない事を、できないと言うだけなら。
きっと、誰にでもできるから。]
君にはちゃんと、未来が待っている
それが今は見えなくても、明日はやってくる
証明してみせるから、気を強くもって
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