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今日最終日にさせても大丈夫かな。
実は両親はあの電話の後、やっぱり双季に会いたいと思って仕事を急いで片付けて村に向かっていた。その途中、事故にあってなくなった。
双季も勿論聞いてる。だけどその時にはもう何かに憑かれていたので、気にしなくなってしまった。異様に寂しいという感情だけで動いている。
みたいな。そんなの。
だから落ちる前には思い出して、正気になるロル落としたいな。でも長く憑かれた身体はもたない、みたいな。
…毎度あり。
[そう言って、神社の跡取り息子を見送る。
彼の執り行う占いの儀式の場には店番を理由に行かなかった。
今晩は虫の音が煩くて眠れなさそうだ、なんて事を考えながら出店の裏でラムネの瓶を傾けて。
しんと、辺りが静まり返っていた事に気付いて――]
[――気付けば、此処にいた。
良く知っている神社のようでそうでない、不思議な場所に。
祭りの喧騒は何処か遠く、現実感はない。]
…はは、
モラトリアムの終わりが来るどころか、呼ばれてしまったのか。
[乾いた笑い声が口の端から洩れた。
店を継ぐか否か。
選択するどころか、異界に渡ってしまったのかと。*]
[彼方側は時が過ぎるに従って変化してゆくが、此方側にはあまり変化が生じない。
それ故に時の流れの感覚はひどく希薄で、彼方側の景色の変化でそれと知る。
彼方側の神社の境内で始まっているのは秋祭りの準備。
青年がいなくなって一年が経とうとしていた。
同じ夜に神隠しに遭ってしまった少年とは会う事はあっただろうか。
一昨年に話した時のようにぼんやりとした事しか話せなかったかもしれないけれど。]
…こんな心算じゃ、なかったんだけどな。
[――青年は何処に行くでもなく、何をするでもなく此処にいる。
家族の事は気にかかったが、触れる事も話す事も出来ないのだから仕方ない。
境内で拾った近野物語はやはり開かぬまま。**]
おい。何やってたんだよお前。
餅肌のアニキ、心配してたぞ。
[静まり返った空間の先に、杏奈の姿を見つけて問いかける。
少女が口を開いた瞬間に、虫たちの声が邪魔をした]
[知っている。
そう確信できる場所と人とを見つけた]
これ、古くね?
今週号くれよ。
[別段急ぐでもなく近づき、フユキの目前へと掲げたのは、いつぞやに買った1976年の週刊漫画誌]
牛飼い スグルは、ここまで読んだつもりになった。[栞]
園長 ヘイケは、ここまで読んだつもりになった。[栞]
−鳥居前−
[神社から離れ、腕に括られた鈴を鳴らしながら境内を歩く。
去年、また2人の男性が行方不明となった。
次は自分ではないか?と考え怯える者も少なくないだろう。その不安を隠すように、忘れるように今年も祭りの準備は忙しく行われている。
鳥居を潜れば、先まで感じなかった視線>>1。そういえば彼は、杏奈の親族だったか。
そう考えながら何もないかのように、首を傾げてみせた。
……霊力のある彼ならば、双季を纏うように飛んでいる黒い蝶にも、気付くかもしれない。それは普通の人には、見えないものだ。見える可能性があるのは、霊力のある者かそれに関わる者だけ。]
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