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わからないけれどわかる。
わかるけれどわからない。
そんなものは、この世に幾らでもあるからね。
仕方がない事だ。
[悩むレンに、半ば独り言のように。
減った蝋燭を見たまま、しばらく何か考えていたようだったが、ふと黒板の方に向かい]
カリスマ家政婦のおじさん……。
どうしたんだろう。
もしかして、捕まっちゃったんだろうか。
[不安げにぼそり。
フユキの様子に気付くゆとりも無く]
[男が指先で掴んだ白墨が、桃色に染まり、そのまま沈むように赤色になる。一瞬の事で、最初から赤いものだったようにも思えるかもしれない]
……
[それを無言で黒板に走らせていき]
リ 消え し た
帽 屋に ても
見 な よ、 ア
[小さめの、下手ではないがやや右斜めに傾いた文字で、黒板の左下辺りに何行かの文を連ねる。しかし一部を覗いては読もうとするとぼやけて読めないだろう]
リウは「消えて」しまったから。
帽子屋に聞いても
見つからないよ、 アリス。
見つからないのかな。会えない。
私はアリスではないけれど。
[血の色で書いた黒板の文字を、遠目に見]
それでも、不確定だ。
赤い……字だ。
リウ、消えてしまった……?
帽子屋に会っても
……ア?
──犬のお巡りさんなら、迷子のフユキさんを家まで送ってくれるかもしれないのにね。
[窓の外をぼんやりと見つめる。
落雷した樹から煙が上がっている]
/*
2日目。
ネ ヤ
ても
見つから
3日目。
リ 消え し た
帽 屋に ても
見 な よ、 ア
先頭は普通に空欄一文字かな?
リ――消え、し――
帽――
――な、――
[赤く染まった白墨を置き、書いた文字を読み上げるが、そのほとんどは葉擦れのようなざわめきとして聞こえるだろうか。ソラとレンの言葉には、それぞれ頷いて]
家まで。送ってくれるかな。
迎えにきてくれるだろうか。
[犬のおまわりさん、というのに、ぽつりと。つられて窓外を、煙を上げる木を見やった]
/*
2日目
ネ■ヤ
■■■■■■■■■ても
■見つから
3日目。
リ■■■消え■し■■た
■帽■屋に■■ても
■見■■な■よ、■■ア
……こんな感じか? 文末は不明だけどさ。
[夕暮れ時の森の中、学校帰りの少女が一人。
あたりにカラスの鳴く声がいくつも聞こえる]
カラスさん、たくさん鳴いてる……。
静かにして。
[鞄からガラスを取り出し、爪で引っ掻く。
キーという嫌な音が響くと
カラスが一斉に飛び立つ羽音に上書きされていく]
いなくなった。
[飛び去る黒い影を無表情で見つめた後
再び歩き始める。
やがて一軒の日本家屋へと入っていく]
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