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一人は、寒いもの
永劫の夜空に、束の間の黄昏を
[ゆっくりと、体を寄せて
温もりの宿らぬ、この身であるけれど
何かを与える事が、出来るのならば]
少しの間、体が触れ合える、束の間の時
その間は、好きにしていいんだよ?
どうして、欲しい?
うん、いいよ?
好きにして、いいからね
[背中に腕がまわる感覚
久しぶり・・・とすら言えぬ程の昔
そんな時の向こう側で、感じた事のある感覚]
あたたかい、ね
[ゆっくりと、抱き返して
仁に、体を預けた]
[感覚がなくなるまで、抱きしめていた]
…ありがとう。
[ちゃんと目を見て、礼を言った]
もっと早く出会っていたら、いろいろ教えてもらえたであろうに。
[笑みがこぼれる]
今からでも、遅くはないよ
私達の時は、永劫に続くのだから
魂が、常世に至るまで
[感覚が、無くなってきた
もうすぐ、時間がなくなってしまうのだろう]
抱きしめるだけで、よかった?
[首をかしげてみた]
[傾げられた顔を見ていてつい言葉が出てしまった。]
…口づけを…
[してみたかった…と、
…俯いて呟く。そこまで望んではいけないだろうと思いつつ。]
もう・・・――――
ちゃんと、言えばいいのに
言葉にしないと、駄目なんだからね
今回は、特別
[感覚が、消えてしまうまえに
腕を仁の首に絡めたまま
そっと、瞳を閉じてみた]
こういう時、人間は謝るものなの?
[よく、わからない
記憶の海の中には、答えはない
だから、不思議には思ったけれど
不快には、思わないのだからよいとしよう]
ん・・・――――
[唇で、そっと触れた時に
なんとなく、懐かしい暖かさを感じた]
・・・――――
[暖かい、ね]
[そうか、と思い当たる]
俺に、この光景を見せないためだったのか…
[目の前で苦しむセイジを見て]
ありがとう
[素直に礼を言った]
さて、そろそろ奴も連れて行く時間であろうか
紅、お前の器が動かないなら、ここ、抑えていてくれぬか?
[準備室の扉を抑えてくれるように頼む。もし断られるなら、他の仲間を呼んだだろう。]
[一緒に行こうという声とは別の声が聞こえる]
「痛いのが辛いなら
連れていってくれと頼むが良い
楽になるぞ」
楽に…なる…?
楽に…なる…のか…?
[声をかけたのは仁に残った人としての思いやりゆえか。
それとも、自分が体験したことを思い出したゆえの優しさか…―――]
意地を張ってもいいことはない。
もう…お前は…逃げられない…。
[早く連れて行けと言ってくれと
どこかで願っていた]
[なおも語り続ける]
お前にできるのは
連れていってくれと言うことだ。
魂の契約を…結ぶのだ。
[悶え苦しむセイジに淡々と語る姿は
紅の目にどう映っただろうか]
魂にとって言葉は契約…
これは人間どもには分からぬこと。
お前の器に伝えるのは容易かろうが、
他の二人には…どう伝えるつもりだ?
それとも…伝える必要も…ないものかの?
[紅の方を見て、首をかしげる]
[やがて理科室の前に到着して。ナオが準備室の扉に手を掛けるのを見ると、すぐに後から入れるようにと歩み寄っていき――]
!? ……
[瞬間、ナオを押し退けてセイジがその扉を開けた。そして、中へと入っていった。素早く、何処か不自然に。見えない何かに引きずり込まれるかのように]
セイジ!
何してん、いきなり……
[よろけ下がったナオを一瞥してから、扉に手を掛ける。そのまま開こうとした、が、鍵のかけられていない筈の扉は、しかし先の教室の窓のように、びくともせず。
ガチャガチャという空転する音ばかりが、あちら側から扉を開く音と共に響き]
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