[ふと、私は誰かに呼び起されたような感覚に、両目を開けた。
目覚めた、という表現が正しいような気がしたのはなぜだろう。
不思議に思いながら辺りを見渡すと、私は「私」の内側から周りを見渡しているような違和感に襲われていた。]
チ…カノ? それにワカバ…。
あれ? サヨは? ナオは? それに――アンは?
[確かにさっきまで傍にいたはずの姿が見えず。
私は不安げに声を上げた。
しくしくと、パンプスの中で足先が痛む。]
困る…? 捕まえた? 鬼の…部類?
チカノ、何を言ってるだ?
[理由が見えず、戸惑い声を上げるもどうやらチカノ達には聞こえないらしい。]
やだ…、こわい… 怖いよ、チカノ…
[迫りくる無限の恐怖に私は震えながら、肩を掴むチカノに縋るような視線を、声を投げかける。]
アン、ナオ、サヨ…、
[名前を呼ぶ]
ワカバ…、チカノ…
助けて…!!
「私」を捕まえているなら、ここから助けて!!
[恐怖に震える私は、皆の名前を力の限り*叫んだ*]
行ってくるねっ。
[そう言ったつもりだったのだけれど、まともに声がでていたかどうか定かではない。]
[一つ上の階に走り出そうとして]
あ痛。
[何かに蹴つまづいた。
振り返ると]
───っ!!
…………サヨちゃん?
[蹴飛ばしてしまった少女の自分を見返す目が、少し恨みがましく見える。]
ごっ、ごめんね、……その、いたかった?
[撫でてさすりたいのと怖いのと。]
チ、チカノちゃんの落とし物とってくるから。
アンちゃんも──連れてくる。
[危うく、アンを「持ってくる」と言いそうになってしまった。]
待っててね!
[一つ上の階への階段に向けて走り出す。]
[転がって見上げる無機質な天井。
手も足もない。立ち上がれない。
ワカバは立ってくれただろうか。
混乱のなか、そんなことを想い。]
ナオ …ううん。
[首から下がないから被りを振れない。]