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[車輪が、滑って。
車椅子がぐらりと傾く。
踊り場が途切れた先の階段に向かい。
私の身体も、一緒に。
瞬く間も無く。]
…、
[声を上げる間もなく。
私は、階下へと投げ出された。*]
[車輪が空回る音を聞きながら
私は天井を見上げている。
壊れた車椅子の部品と
私の身体から流れ出す生温い血が、
清潔に保たれていた廊下を汚す。
派手な音を聞きつけた看護師が
慌てて誰かを呼んでいるようだけれど、
私の意識は春先の雪のようなもので。
溶けて、流れて、失われつつある。]
…部屋 とどいて、る かも
おてだま と、
わ たし、の、嬉しい もの…
[絶え絶えの声は、誰かの耳に届いたかな。]
…あの ね、
…ユウキ 先生 。 、 呼んで、て
…、
[看護師が傍に居るのかどうか、
確かめないまま、呟いて。
私は目を閉じる。
そしてそのまま、深い所へ、
沈んでいく。*]
/*
こういう村で、
叶わない約束というもののために
約束など交わしていくというのは
やっぱりとても楽しいのであります。
一生懸命考えてくれたユウキ先生には
とても感謝しているのであります。
最期の意識
[誰かが、私の名前を呼ぶ、声。
沈んだ闇の縁から。
とても遠くから。
暗闇は深く重く
混濁した意識の浮上を阻む。]
………、 、 。
[それでも応えるように、
瞼が微かに震え、
唇の隙間から、声にならない言葉が、
細く微かに零れた。]
[触覚は既に失われている。
体中が、役立たずな両足の仲間になって、
何の感覚も得ずに屍のように横たわる。
瞼を伏せているせいというより、
視覚そのものも、失せていて。
血の匂いを感じ取る嗅覚も死に。
それでも鼓膜が震えれば
言葉は脳の奥に染み入る。
桜並木、砂浜、紅葉、雪景色、未来。
見たいな…と、思った。]
[空想の世界が私を手招く。
四季折々の美しい光景の中を、
健全に機能する両足で歩く空想。
けれど、私はそこへ飛び込むのを拒む。
車椅子での不自由なままでも、
明日は来ると、未来があると、
語りかけてくれる声が在るから。]
…、 ぁ 、
り が、 と ぅ 。 、
[最期に、未来を見せてくれて。]
[手術室へと辿り着く前に。
私の身体からは
生命が抜け落ちてしまう。
手紙のお返事や、お手玉の約束、
写真もこの目で見たかった。
叶わなかった事は幾つかあるけれど。
そういった生への未練が在ることが、
この上なく嬉しかった。
未来は、あったのね。近くに。
私にも。
それを教えてくれた、
とても素敵で嬉しい言葉を贈ってくれた
先生への感謝の言葉が最期の言葉。
脱力して緩んだ口元は
ほんの微かに笑った時と同じ形に成り。]
/*
お手玉ーーーお手玉ーーー!!!
おばあちゃーーーーーーん!!!
あの世で一緒に遊んでもらうねん。
お手玉するねん˚‧º·(˚ ˃̣̣̥⌓˂̣̣̥ )‧º·˚
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