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――うるさいわね。
[吐き捨てるように答えたが、声には余り力はない。
相手から手出しのないことに、内心安堵もする]
面倒な相手に絡まれたのよ。
地上にあんな化け物がいるなんて。
[気を付けるべきはせいぜい銃器くらいだろうと思っていたのだが]
それも、同時に二匹も……。
ここまで化け物の坩堝だとは思わなかったわ。
[男の忠告に耳を貸さずこの有り様なのは、恥ずべきことであった。
ぎり、と奥歯を噛む音で答え、顔を俯ける。
翼のことに触れられれば、思わず痛みの元を指で触れながら]
こいつは……異能者にやられた。
物に手を触れず飛ばしてきたのよ。
[そいつの顔を思い出せば、再び怒りと屈辱が沸いた。
それを素直に口にしたは、眼前の男が満足に動けぬと見て取ったから]
あの目隠し野郎……。
あいつだけは絶対に殺す。
[浄化、とは言わずに吐き捨てた]
――いいわ。やりなさい。
既に一度傷を受けた身――
奴に報いを受けさせるためなら、汚れくらい。
[そうして、男の元へ歩を進め――]
[その足音が聞こえた時、既に翼は力を取り戻していたか]
――来たわね、化け物。
[その声に揶揄いの響きは無く、調子は低く昏い。
半目の視線が鋭く少年を見据え]
あんたの相手してやる暇はないんだけど――。
[包丁を持つ側の腕を狙い、弓を引く。
そうしている内、足場は崩落を始めた。
この程度の脆い煉瓦なら、容易く砕き穴穿つ程度の威力はある]
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