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[ …… ]
駐在さん 御湯治場にいっちゃった
[ぽつり
呟いた幽霊がふと集会所の方角を見遣る。
更け行く夜空には「教誨の火」が目映い。
幽霊は上がる火の手を見詰め…*掻き消えた*]
―― 道端 ――
[赤い涙を流していることに、女自身は気づいてはいない。
金属バッドに結ばれたネクタイを引っ張り、ずるずると音を立て、地面に線を描き歩いていく]
一緒に来る?
[振り向いてそう尋ね、返事が聞こえないままに校庭を*目指す*]
御湯治場?
[その前に聞こえたやけに不穏な言葉に顔を引きつらせつつ]
あ、待て! ギンスイ!
[少年の様子を思い出し、視線の先を追う。赤い炎が白々と、黒い空を照らしていた]
……イケニエか、冗談じゃない。
[ようやく立ち上がって、尻の泥をはたく**]
[キチ...チキチキチキ......]
[手を、伸ばす。眩い光のようで居て。
遥か彼方明るい色。ひさかたの。]
[気付けば、胸の痛みは消えていた。]
[帽子のつばに手をかけ、空を見上げる。
ノギの身体は半ばまで御湯治場に浸かっていた。]
[手を、伸ばす。眩い光のようで居て。
遥か彼方明るい色。ひさかたの。]
*[帽子のつばに手をかけ、空を見上げる。]*
―回想―
”屍人ははじめ
『きょうかい』を守護する為に生まれたんだよ。もぎゅ。”
[何故か、急に思いだせた。
赤い川のほとりで。いつの日だったか、ネギヤがそう語った。
半ば屍と化した女の、おぼろげな記憶]
―廃集落―
[来伝と違い、こちらは空手である。
その分、優位性は向こうにある。
叩きのめされようとも死にはしないが。
深刻なダメージを受けたら、暫く動けない状態に陥るかもしれない。
オトハをかばう来伝の、手中の警棒から、距離をとり。
赤い涙に濡れた眼差しを、二人へ注いで]
… きょうかい に何の用があるのかな。
[オトハに問うも、答えに期待する気色は少ない様。
白い人さし指をゆるくあげ、一方を指すと]
ついでに、あたし親切だから教えてあげちゃうけど。
教誨所なら? あっちだぞ。*
[幽霊は「教誨の火」に燃やされる自分を――
否、燃やす人を―ヘイケ女史の横顔を見ている]
…
イケニエを燃やす火で
俺を焼いてるこのヒトは、
どうして、イケニエにするための子を産んだ
俺のかあさんに 似てるんだろう
[何者かに切り離された魂が呟く。
捧げられしは不完全な*イケニエ*]
[きょうかい。背後の彼女が口にした言葉に、対峙する相手が反応し、動きを止める様を見た。相手はそのまま距離を取り、教誨所の場所を示し教えた]
きょうかい、……教誨所。
其処に信仰の要があるのか? ……っく。
[独り言のように零して――眉を寄せる。また、視界が流れ込んできた。――己の、後姿が見えた。その向こうには、通常の視界と変わらない光景があった。背後の彼女の視界。幾つかの単語が頭を過ぎる]
……きょうかい……
屍人、……ソラ、……
[譫言のようにそれらを声に出す。はたと視界が戻り]
[間髪を入れず、別の視界が流れてきた。一面の赤。赤い水。何処までも広がる――赤い海――]
赤い 海
送 還って、……う、……
うう、……く、そ。ふざけ、るな……!
[再び零し、呻き――手で押さえた頭を強く横に振った。警棒を握る手に力を込める。あげた大声は些か掠れていた。――蝕まれている。そんな思いが湧く。少しずつ、何かによって、何かに、何かが、]
……は、……
[荒い息を一つ吐く。
どうにか気を取り直し、背後の姿を*窺って*]
[キチ...チキチキチキ......]
[気付けば、胸の痛みは消えていた。]
[ノギの身体は膝半ばまで御湯治場に浸かっている。]
[――…一度だけ…手を振る姿…格子窓から…――]
[――…その時自分はどんな表情を浮かべて、どんな行動をとっただろう…――]
[因習に囚われぬ部外者だった乃木は]
―― 学び舎 ――
[小高い位置にある校庭から、村を見下ろす。
どこからか細い煙が立ち上っていた]
たーまやー?
[言ってから、ふと警官の『視界』を探したがそれらしきものは見つからない。
ん、と首を傾げて、それから歩き出した]
―― 地下の屍人の視界 ――
[蝋燭の明かりに揺れる人影は、ひとつ、ふたつ、みっつ。
祀られた一角には、ひとりの眠り姫。
唇に引かれる紅は、透き通るような白い肌を際立たせる]
[金属バッドでてこの原理 + 半屍人のバカ力 = 金次郎像は鈍い音を立てて動く]
か弱い乙女にこれは重労働だわ。
[縦穴にはさび付いて今にも崩れ落ちそうな梯子が見える。
しばしその縁に腰掛けて、暗闇の先の世界を*探った*]
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