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ルリ。
[何かに潰れてしまいそうに見える少女の名を、ただ呼ぶだけに留まる。
羊を模した布地を抱きしめる手に力が入った]
カナメは言っていたよ。
それでも生きるしかないんだって。
「それ」って何だろうね。
[問い掛けるわけではない口ぶり。
“カナメ”のことは、とうに*見失っていた*]
掬う…
[聞こえた言葉をかみしめるように。]
どうやら僕の柄杓は、底が抜けてしまっていたらしい。
…無理に繋ぎ留めず逝かせていたら、彼は壊れずに済んだ?
[愚かな行為への戒めのように、
自ら命を絶とうとして果たせなかったものへの処置も、それでも避けられぬ後遺症も、死よりも辛い責め苦。]
[こつ こつ …こつ 絶えず苛む眠気に、足を取られる。
ルリのちいさな手へ、白く軽い骨片が馴染む。呼び声。
亡霊は、彼女が既に「求める」ことを憶えたのを聴く。]
…「これ以上死ぬこと」が出来ないのは…難ですね。
尤も、何方が如何様に生き、如何様に死んでも…
私は痛みを感じ――そして、
[例え、親しみを感じたライデンが狂気に身を委ねても。]
[例え、全てを喰らい尽くすペケレが孤独に苛まれても。]
[例え、ちいさなルリが無残に喰われてしまっても――。]
ひたすらに見蕩れていますよ。
[墨色の亡霊は穏やかに待ち居る。生者の*意志の所在を*]
…そう、君は欠けているから。
足りなくて、本物にはなれないから。
…だから、奪い、
…だから、喰らう。
けれど、奪い取って手に入れたものは、
君のものにはならないから…
../sys/caname.exe
楽園行きの箱船の管理者。
時至るまでのまどろみを司る天使。
…全てはただの作りもの。
…そうか、カナメ。
[目を閉じ、静かに笑う。]
僕も、つくりものだね?
君の管理データの中の、無数の白衣の人々の記録。
医師、技術者、看護士に研究者。
それらから複製転写し、組み上げたのが…僕だね?
…そう、僕は失敗と後悔で出来ている。
[羽織った上着の下で、もそもそとワンピースのリボンを一本抜き取る。
何本か使われている為、服から赤のラインが消えることはなかった]
『それならば何故、墓碑で記憶を留めようとするの?』
[思い出さなくともよいと語るライデンの声が、いつかのカナメの言葉を思い出させる。
鳴き声をあげて、消えたカナメ]
[ぬいぐるみの首に、リボンをきゅっと結びつけた]
[ペケレの口からこぼれる自分の名>>37]
聞きたい?
[悪戯を思いついた子どものような笑みを浮かべる。
続く言葉>>38に、表情をすぐに落とした]
ペケレは、“それでも生きる”んだ。
[閉じていた目を開いて。静かに笑うユウキを見て。]
冷凍睡眠後の記憶障害、混乱、欠如―――それは当時の技術では避けられなかったこと。
あの治療を経てプログラムの基礎が完成した後。冷凍睡眠解除時における、『いざと言う時の』バックアッププログラムとしてカナメは採用された。
今此処にいるのは本当の君?それとも、バックアップであるカナメ?君は、目覚めた後。君は自分の力で、思い出そうと、した?もしそれをしているのならば……有希。
……自らをデータと錯覚するか、本当にデータなのか。それを知る術はない、か…。それでもね。そのどちらだとしても、いまここに君が"居る"ことに。変わりはないんだよ。有希…。
―――データは、死の夢を見るのかね?
俺の心には、君は有希にしか見えないんだけどね。
覚えてる?俺と有希とルリと雷電で、写真を撮ったんだ。
写真…。
[ぽつりと呟き、彼を見る。]
あぁ、アレも僕だ。
…無数の僕のうちの一人。僕の器。
僕は僕であり、同時に無数の記憶でもある。
世界の歌。
[耳をすませば、世界は依然として様々な音を奏でている。
風のざわめき。水の揺れ。生き物の鳴き声]
世界の歌が本当はどんなものかは知らないけど。
泣き声も、喧騒も、あたしは懐かしいと思ったよ。
>>+56
……有希が助けようと必死だった顔。俺は覚えているよ。
[先ほどの有希とプレーチェの心の向き合う姿を思い返して]
プレーチェには……言うまでもない、かな。
雷電は―――有希の顔、見てたのかな。とても必死だったあの顔。見てたのかな。自分が倒れそうになろうとも人を救おうとしていたあの姿を。顔を。
ねぇ。雷電?君は、ちゃんと見ていたのかな。見えていたならば…君も掬われていたのかな?
君の想い人以外にも。君の事、見ている人がたくさんいたんだよ。知っていた?
写真を撮る事ができた時。
俺は、嬉しかったんだけれどね…。君は、どうだい?
ねえ。……雷電。
[声の届かないことはわかっている。それでも構わず、その言葉は雷電へ向けて―――]
[レンの声>>+70に振り向いて、小首を傾げた]
写真も、記憶を留める為に撮るのかな。
[独りごちる様に言いながら、近寄るのはユウキの元。
背伸びをして、右手をそっと彼の頬へ伸ばす]
せんせい。
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