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[そして、思案に俯くライデンの面持ちを横合いから覗く。]
……ええ。私は死人です、ライデン。
あの時こそが、君。
…「ひとりの時間」だったかもしれませんよ?
[螺旋階段でルリが垣間見た、性質のよくない笑みが過ぎる。]
…祭りにお連れ出来なくて、…申し訳ありません。
[『もう――テンマは、眠ってるですか。』
ルリの語尾の上がらない問いに、浅く頷いてみせる。]
もうずっと――長いこと眠っていなかったもので。
良ければ、プレーチェさんに有難うと――
否… 死者が多くを望んではいけませんね。
[彼女の「カナメ」が嫌がっている――からともなく。
楽園の最後の欠片が埋まるのを、ただ見ていたくて…
かつて「さいごのひとり」だった男は、少女に明確な忠告を囁くのをよした。]
認めましたか?
彼がもう生きていない、という事を。
[歌が終わった後、カナメはそう聞いてきた。少しの間の後、いいや、と返す]
「そういうわけではない。
彼についてはまだ信じ切っていないが、……あの場所が墓だというのならば。
眠っている者に対する祈りは必要だろう」
[信じ切っていない。そうだ。信じられるはずもない。だが、それならあの少女、ルリは、何故あんな事を言うのだろう。そしてあのプレートは]
そうですか。
テンマさんに会えるといいですね。
まあ、会えたらその時は――
[カナメの声が掠れる。ノイズのように。耳が、*痛い*]
ルリはすでに繋がっている。
ルリとテンマ。
結びついている。
世界とは、繋がらない。
…世界に、還りはしない。
そこに意識があるのだから。
体があるかないか。それだけの違い。
[ゆらり 亡霊は墓碑へ寄りかかって、ライデンの歌を聴く。
Requiem――
生者が死者のたましいを慰める。
生者が死者を思い自らを慰める。
聴く者は、然し其処へ違いを見出さない。探さない。
…ただ、繋いだ縁のかたちに感謝を。]
――…。またお会いしましょう。
[己の言は叶うといい。彼の言は叶わぬといい。
これはレンの言う「望み」だろうかと思いつつ、
墓碑を離れゆくライデンの背を長く見送った。]
[ こつ こつ …ふわり ルリにしか聴こえない音。
足りない眠りにか、頑なに地へ降ろしていた靴先が浮く。
揺らぎは青い花弁に伝わってミナツの意識を引いたようか。
『そういえば……その、テンマさんって
死ぬ前のこととか、覚えてるのかな?』
亡霊は、そう尋ねていた彼女の胸に蒼褪めた手を伸べて]
忘れたくは、なかったですからね…
[音もなく 差し伸べた腕はミナツの背へとすり抜ける。
ああ、おいしそうなのにとそんなことを思い少し笑った。]
箱入り娘 プレーチェは、ここまで読んだつもりになった。[栞]
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